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第5話:コストという名の枷と、裏技の代償

魔獣の討伐から数日後。

 レイは街の外れにある古い廃墟のダンジョンで、新しく手に入れたカードの検証を行っていた。

 手元の端末に表示されているのは、新しく追加された高コストカードのスペックだ。

【暴食の炎獄陣(ブラッド・インフェルノ)】

 ――説明:広範囲を焼き尽くす高位の魔法カード。

 ――コスト:【MP 50】または【自身のHP 30%の犠牲】

「……おいおい」

 レイは思わず苦笑いを浮かべた。

 現在のレイの最大MPは「5」しかない。仮にこのカードを発動させようとすれば、一瞬でMPが枯渇するか、自分のHPの大部分を生け贄にして瀕死になるかの二択を迫られる。

 この世界の一般的なカード使いにとって、高レア・高コストのカードとは「自分のレベルや魔力上限が追いつくまで、絶対に使えない宝の持ち腐れ」を意味していた。

 周囲のカード使いたちは、この厳しいコスト制限に縛られ、コツコツとレベルを上げてMPを増やすしか道がない。

 だが――レイの頭脳と【白紙のエラーカード】は、その常識をあざ笑うかのように別の答えを導き出していた。

(なるほど。システムは『MP』か『HP』を代償に支払えと言っている。だが、それはあくまで正規ルートの話だ)

 レイはニヤリと唇を持ち上げ、スロットにセットした【白紙のエラーカード】にそっと指を触れた。

 ――バチバチッ! と、エラーカードの表面が青白いノイズを帯びて明滅する。

(俺の初期デッキにあるこのエラーカードは、あらゆるシステムの例外処理を引き起こす。例えば……この『膨大な発動コスト』そのものを、さっき手に入れた【劣化された魔獣の牙】の耐久値に肩代わりさせたらどうなる?)

 ガキンッ、と音が聞こえたような気がした。

 システムが一時的にフリーズし、不正な例外エラーを吐き出す。

《警告……コストの代用ルートを検知》

《【劣化された魔獣の牙】の残耐久値全損を条件に、【暴食の炎獄陣】の強制発動を許可します》

「よし、通った」

 レイが指を鳴らした瞬間、手元にあったはずの【劣化された魔獣の牙】のカードがパリパリと音を立てて砕け散り――その代わりとして、目の前の空間を焼き尽くすほどの凄まじい業火が、一切のMP消費なしで爆誕した。

 轟音と共に周囲の岩壁が溶け落ち、圧倒的な熱量がダンジョンを揺らす。

「ふう……。コストの概念すら、俺の頭脳とエラーカードの前では『別のリソースへのすり替え』に使えるってわけか」

 一般人であれば絶対に使いこなせない高コストカードを、ゴミクズのような不要カードを身代わりにしてノーコストで連発する――。

 これこそが、最弱の初期デッキを持った頭脳派主人公・レイが、格上のエリートたちを絶望の淵に叩き落とす最大の武器だった。

 その頃。

 遥か離れた王都の監視ルームで、この異常なエラー反応を察知したシステム管理官たちが、青ざめた顔でモニターにしがみついていた。

「な、なんだ今の魔力変動は……!? 誰だ、制限コストを完全に無視して高位魔法をノーコストでぶ放ったイレギュラーは……!」

 世界を裏から管理する者たちが、まだ名もなき「バグの特異点」の存在に怯え始める中、レイは次の野望に向けて静かに笑みを浮かべるのだった。


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【名前】 レイ

【職業】 無職 / 【Lv】 3(UP!)

【HP】 50 / 50

【MP】 5 / 5 (※コスト消費ゼロで維持)

【筋力】13 【敏捷】16 【魔力】1


《装備スロット(4/4)》

・【ただの木の棒(※微発光・進化進行中)】

・【微風(そよかぜ)】

・【白紙のエラーカード(※例外処理の触媒)】

・【暴食の炎獄陣】(※高コストだがエラーで踏み倒し中)


《生身スキル(※システム外)》

・【確率演算】【古武術:極】【コスト偽装(NEW!)】

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