↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/112

第29話:オフラインの障壁

「――マテリアライズ」

 レイの低い呟きとともに、左手首のリストホルダーから【 ????? 】のカードが光の粒子を伴って実体化した。

 青白い異質な輝きを放つそのカードを、レイはエアロック式の区画扉の脇にあるメイン・インターフェースへと迷いなく突き立てる。

 ――ジリリリリッ!

 上層のネットワークから完全に切り離されたオフラインの回路に対し、異常なエラーパケットが強制的に流し込まれる。

 通常のカード使いであれば、ネットワークの認可外の領域に直接干渉しようとすれば、生体回路が焼き切れるほどの激しいフィードバック(逆流ダメージ)を受けるはずだった。しかし、レイの神経はすでにシステム規格の外側に接続されている。彼自身がひとつの「例外処理」として、強引に扉の制御権を奪い取っていく。

「……相変わらず、無茶苦茶なやり方ね」

 エリスは痛む腕をかばいながら一歩下がり、眩しそうに目を細めた。

 カードから発せられる青白い光が暗い通路を照らし出し、やがてコントロールパネルの赤いランプが激しく明滅したあと、ガチリ、と重い機械音が響く。

 ――プシューッ!

 高圧のガスが噴き出すような音とともに、何重にもロックされていた分厚いエアロック扉が、ギギギと重々しい悲鳴を上げながら左右へとスライドしていった。

 扉の向こう側に広がっていたのは、人工の照明すらない、完全な闇だった。

 だが、その闇の底からは、先ほどまでの淀んだ空気とは全く異なる、強烈で生々しい「外の世界の風」が吹き込んでくる。砂埃や草木の匂い、そして無限に広がる大気の重みが、二人の肌を直接撫でた。

「開いたぞ」

 レイは「――ストアード」と短く告げ、手の中のカードを素早くホルダーへと収納する。

 生体回路にかかっていた負荷を逃すように深く息を吐き出すと、彼は振り返ることなく、未踏の闇へと一歩を踏み出した。

「待ってよっ!レイっ!!」

 エリスもまた、痛む足を必死に引きずりながらその後に続く。

 管理者の目が届かない、ルールも保証もない本当の荒野。

 崩壊した箱庭を背にした二人の新たな旅路が、音もなく始まろうとしていた――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。