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第104話:伝播する反逆の炎

『……この星のシステムは、俺たちバグが全部上書き(リブート)してやる』

 レイの宣言が第三都市の巨大アンテナ群から放たれ、星中のネットワークを駆け巡った直後。

 絶対的な安全圏であるはずの王都の中央司令部は、かつてない大混乱に陥っていた。

「通信を切れ! なぜ下層のゴミの声が、この神聖なる無菌室にまで響いているのだ!」

「不可能です! 第三都市のマスター権限を完全に奪取されており、王都の受信プロトコルが強制的に書き換えられています! 物理的に端末を破壊するしか……ッ!」

 白銀の制服を着たエリートたちが血相を変えてコンソールを叩くが、赤黒いノイズと共にレイの嘲笑うような声が何度でもループ再生される。彼らが信じて疑わなかった『完璧な論理』が、泥臭いバグによって完膚なきまでに蹂躙されている絶対的な証拠だった。

 一方、灰色の荒野に点在するスラムや、レイたちの拠点である『鉄屑の谷』では、廃墟のモニターから流れるその声に数多の無法者たちが熱狂していた。

「聞いたかよ……! あのレイの旦那が、王都の要塞を半分もブチ抜いたぞ!」

「俺たちみたいな『バグ』が、あの引きこもりの連中を引きずり降ろせるんだ……!」

 これまでシステムに怯え、泥を啜って生きるしかなかった者たちの目に、明確な反逆の炎が灯り始める。レイの放送は単なる宣戦布告ではなく、星全土の『不要なリソース(ゴミ)』たちを同時に蜂起させる強烈な起爆剤となったのだ。

「……ふふっ。王都の連中、あんたの声をシャットアウトするために、自分たちで都市の通信回路を物理的に焼き切ってるわ。完全なパニック状態ね」

 第三都市の中枢コアで、エリスがホログラム・モニターを見ながら腹を抱えて笑う。

「勝手に耳を塞いでろ。その間に、残りの首輪も全部外してやる」

 レイは窓の外、遠く荒野のさらに奥に霞む次なる巨大な影を見据えた。

「次は第四拡張都市――『環境と気象』の制御要塞よ」

 エリスが立体マップを切り替える。

「王都が綺麗な空気を独占し、外の荒野に致死の瘴気や酸の雨を押し付けている元凶。あそこのメインフレームを奪えば、ニアの浄化コードとレイの空間支配を掛け合わせて、この星を覆う分厚い雲と汚染を根本から吹き飛ばせるわ」

「……外の世界の人たちも、あの綺麗な星空を毎日見られるようになるんですね」

 ニアが胸の前で両手をギュッと握りしめ、シエナも期待に満ちた笑みを浮かべる。

「ああ。王都の連中が独占してきた『青空』を、俺たちの手で全人類(バグ)の頭上に引きずり出してやる」

 レイは【黒樹の邏卒(デッド・エンド・ブランチ)】を肩に担ぎ、獰猛に笑った。

 星の理を奪い返す戦いはいよいよ後半戦。残る三つの要塞を喰らい尽くすため、反逆者たちは次なる戦場へと歩みを進める

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