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第7話 クライマックス(7)

 目の前に魔王の姿があった。


 この体勢、この角度、この状況。


 全て裏のボクが得意としている勝利の条件が揃っていた。


 でも、なぜか大剣に注いだ魔力は薄くなっていき、体が重く感じる。


 どうして?


 そう思った時には、既に答えは出ていた。


『表』のボクに戻っていたんだ。


「あッ……」


 振り抜こうとした大剣は、急に意識が変わったことで力と速度を失い、魔王のすぐ足元に落ちて弱々しく衝突音を鳴らす。


 跳びかかっていたボクも意識の変化に追いつけずに魔王の前で転ぶように膝をついた。


 やばい……。


 裏のボクが勝利を確信していたのに、ボク自身が仕留め損ねてしまった。


 しかも、魔王の目の前で跪くような体勢。


 どうしようどうしようどうしよう。


 魔王がうっすらと目を開け、ボクを見下ろした。


「ひぃ……!」


 あまりの威圧感に気圧され、その場からすぐに離れようとしたが、足がもつれて尻もちをつく。


 あ、腰抜けた……。


 契約を破って魔王を倒そうとしたボクが、情けなくも腰を抜かしている。


 こんなの魔族からしたら、やりたい放題じゃないか!


 さっき薙ぎ払った魔族から一発ずつ殴られ、火あぶりの刑に処されてこんがり焼き色を付けられた後、獰猛な魔獣のエサにされてしまうかもしれない。


 あわわわわわわ…………。


 もうどうしてよいか分からず、ボクはなけなしの力を振り絞って重い大剣をブンブン振り回す……が。


「捕らえなさい!」


 執事の叫ぶ声が聞こえた次の瞬間には、ボクの両腕は言うことを聞かなくなってしまった。倒し切れていなかった二体の下っ端魔族がボクの両腕をがっしりと掴んでいたのだ。


 え、待って待って待って! これって絶体絶命っていう状況じゃないかな?


 体を拘束されて目の前には魔王。


 とてつもない威圧感を放つ魔王。


 幾人もの勇者を葬ってきた魔王。


 ……終わった。


「危ないところでしたね、ベルシュート様。さあ、最後は貴方様が止めを刺して下さい」


「……うむ」


 あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!


 今、止めを刺すって言った!


 嫌だ、死にたくないよぉ!


 お母さぁああああん!


「うわあああ!」


 人って死を前にすると、思わぬ力が入るらしい。


「うおっ、こいつ!」

「なんて力だ!」


 さっきまで腰が抜けていたというのに、ボクは容易く魔族の拘束から外れた。


 そして、ボクは真っすぐに魔王を捉える。


 今しかない。


 やるんだ。やってみせるんだ!


 ボクが助かるには、もうこうするしかない。


 全力で踏み込み、躓きそうになりながらも、目にも止まらぬ速さでボクは魔王の懐へと跳び込む。


 そして、こう言った。


「すみませんでしたぁぁあああああ!」



ご来城ありがとうございました。

またのお越しをお待ちしております。

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