第64話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
テレサ姫の研究チームを残しバルドリックの部隊は脱出ポッドに乗船した。
艦内には脱出ポッドが10機存在し3機を残して惑星に戻ることになるのだ。
「この脱出ポッドでの帰還が我々の最後の役目となる。宇宙から我々の国に帰還できることを知らしめようぞ!!」とバルドリックが号令し、ポッドは次々と離脱し大気圏に向けて下降していったのだった。
ブリンデンブルク王国では、宇宙海賊の襲撃から王都を守り、宇宙に初めて送った新開発宇宙船が海賊の母艦を蹴散らしたと言うことで盛大な祝賀祭が行われることになった。
これは魔法の国の新たな時代の幕開けである。
城門から王宮までの目抜通りは煌びやかな飾り付けが施され、祖国を守った勇者達を讃えるパレードが行われるのだ。王都だけでなく、ブリンデンブルク王国の国中の人々が勇者を一目見ようと押し寄せていた。
そして今年度よりこの戦勝を記念した新時代の元号ヴィクトリーメモリアル元年『V Mー0』とし年号を変えることとなった。また国民もそれを誇りに思い、通貨も一新されVM金貨なるものや限定記念グッズなどが商店街や露店で売られている状況である。
戦闘に貢献した軍人及び魔導師全員を労うため盛大なパレードが行われ、次期国王であるフリードリッヒ第一王子を先頭にアルベルトらその関連スタッフが続き、その次はバルドリック第二王子そしてフリーダなどが続くという長いパレードとなっている。もちろん、その隊列のトリにはアデリナ王女の美しい乗馬姿があった。
王族及び騎馬隊以外は徒歩となるため、アデリナの後ろには大きな笑顔で手を振りながら行進しているダミアンとスタンの姿も見えた。彼らが目の前を通ると拍手とエールは盛大になったのだが・・・
その2人の後ろには黄金に輝く馬車が続いていたのだった。
そして、民衆のお目当ては・・・
噂が噂を呼び民衆の好奇心を煽っていた。
この戦勝に多大な貢献をし、最後の激戦でも救世主となった異国からの勇者を称えた馬車であった。
なんと、ソフィアとジュリアが馬車の中から笑顔で手を振っているではないか!?
民衆はソフィアとジュリアを一目見ようとパレードの両側は人だかりとなっていたのだった。
「あの人がジュリア様か??」
「いや、ソフィア様だろう!?」
「ジュリア様はボブヘアーだよ!」
瓜二つの双子の姉妹のため、どっちがどっちなんだ?
しまいにはどっちでもいいんじゃないか!?と言うノリにて、まるでご利益を頂こうとするが如く
民衆は熱心に手を振っているのであった。
2人は、牢獄に繋がれている宇宙海賊のハーラル王女に面会を求めたのだったが、このパレードへの参加を条件に認められたのであった。
2人はそもそもこういったパレードは好きではないのだが、まあ、お祭り事として渋々参加を承認したのであった。
「ねえ、ジュリア!まあ、こういうイベントもたまにはいいんじゃない!? 人々もなぜか私たちに会えて嬉しそうじゃない!?」
「まあね〜、ちょっと小っ恥ずかしいけどね」
「ハーラルに会ったら、あの海賊達の出生と年号を確認しましょう。それといいやつそうだったら仲間にするとか?」
「いやいや、そこまではいかないでしょう!? 相手は一応海賊よ!!」
「まあ、会ってみないとわからないから、理由もあるだろうし、とにかく楽しみね!」
と言う、いつもながらの呑気な会話である。
そして、このパレードの後には式典のメインイベントとして競技場を会場とした祝賀式が控えているのだ。
選ばれた功労者に対してハインリッヒ国王より勇者としての称号と褒賞が贈られることになっている。
盛大な拍手と大歓迎の熱気の中、パレード一行は王宮に隣接している競技場に到着した。
競技場に設定された雛壇の最上段にはハインリッヒ国王と王妃が鎮座しており側近にて守られている。
そしてパレードに参加した者は順次用意されている席に着席していった。
観客席には王族関係及び貴族階級の紳士淑女達が着席し盛大な拍手で迎えているところだ。
最後のジュリアとソフィアが着席すると、宰相の挨拶の言葉がありハインリッヒ王が立ち上がった。
「諸君、この度はご苦労であった。宇宙海賊の度重なる侵入そして魔族らの王都侵略をも封じ、我が国に勝利をもたらしてくれた君達! ここで礼を言いたい! 大義であった! こうして功労者の諸君を国を挙げて労うことができるこの奇跡を神に感謝したい。そして、この式典の後には細やかではあるが感謝の印として晩餐会を催すことにしておる。是非ともさらなる絆を深めて頂きたい。我々はこれを機に1つにまとまったのだ! そしてこの年を記念してVM元年としたい。遂に新たな時代の幕開けである! ブリンデンブルク王国バンザーイ!!」と熱い開会の挨拶があった。
会場は王の挨拶を聞いて、全員が「バンザーイ!! ウォー!!!」と盛り上がっている。
そして、その余韻の中で勇者の表彰となった。
宰相が壇上に上がった。
「さて、ここにいる諸君は皆VM元年を迎えるにあたっての功労者ではあるが、国のために尽くす貴族階級の軍人はもとより、その階級外であってもそれを上回る武勲を挙げて王国に多大なる貢献をしてくれたものがおる。
今回はその者達を我々の仲間に迎えることにした。 では、新しい仲間を紹介するとしよう。」と言うと、闘技場が静まり返った。
「まずは、スタンリー・ケンプ 立ってここに登壇せよ。 君には男爵の爵位と勇者の称号を与えよう!」
「ウウォー!!」
「えっ 俺なのか??」
「そうよ、スタンよ!おめでとう!! これであなたも貴族よ!」とフリーダが満面の笑みを浮かべ抱き付いたのだった。
「えっ そう言うことなのか??」 やっと意味がわかったようだ。
スタンは、照れながら立ち上がり、並んだ椅子の間を通りながら壇上に向かっていった。
「そして、もう2人 この場を借りて表彰したい。」
「異国の方々でありながら、我が国の危機に彗星の如く現れて救ってくださったまるで救世主のような存在の方々、ソフィア・ブラン そしてジュリア・ブランの御姉妹、立ち上がっていただきたい!」と声高々に紹介した。
「皆の者 盛大な拍手をお願いする!!」
すると会場からは盛大な拍手が巻き起こった。
「本当に有難うございます!おふた方には感謝しても仕切れない気持ちでございます。臣民を代表して感謝の意を表したい。お二人にも我が国の勇者の称号を与えさせて頂き、この国を支えて頂く貴族としてお迎え致したい!」
さらに拍手は大きくなっていった。
そして「ジュリア!ソフィア! ジュリア!ソフィア! ジュリア!ソフィア!」コールが自然に湧き起こってきたのだった。
「えー 私らなの??」
次回は最終回です! お楽しみに!!




