第55話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
ハインリッヒ国王と第一王子のフリードリヒは当然訪問してきたアルメリア諸国連盟の使者と緊急謁見を持った。
「恐れながら申し上げます。我が国は現在あの宇宙海賊の襲撃を受けています。前回までは上空を素通りしていただけだったのですが今回はレオン王国の城塞が攻撃を受けました。敵はそのまま北の砂漠方面に消えていったので調査隊を送ったところ前回砦を建てた付近にさらに大規模な砦を建造中なのです。敵ロボットは有人用と判明しそれが50機は確認できたております。これは緊急事態でございます!よって同盟国の貴国に危険が迫り来るあることを報告及び可能であれば援軍をお願いしたいと思い馳せ参じました。」
とその使者が言うと過労のためその場に倒れてしまったのだった。
一刻も早く直接王に会ってお願いしたいとの思いで1人乗りのスピーダーで昼夜問わず飛ばしてきたようである。
スタンの左腕は完治していなかったのであるが、特殊部隊としては対宇宙海賊の案件は本命となるためアデリナを中心にスタン、ダミアン、フリーダ機のBS4機がフルアームドで王都を出発した。
試作機であったアデリナ・スタン・ダミアン機は調整を終えてフライングデバイスも背中に装備され飛行が可能になったのである。また、フリーダ用に魔法機体も開発され武器としては大きめのシールドとソードのみであるが、ソードが所謂魔法の杖代わりになっているため、ソードからフリーダが意図した魔法を発することができるのである。ボディーカラーは他機体と同じくブラックに彼女の場合はイエローのトリミングが入っている。
「スタン、久々だな!もう大丈夫か?」
「ああ、心配かけたな。まだ完治はしていないんだけど取り敢えず戦えるようにはなったからな。」
「スタン、左手はちゃんと動くの?」とフリーダも心配しているようだ。
「ああ、一応動くんだが力がまだ完璧には入らないんだ」
「その分俺がやってやるよ!心配すんな!お前がいてくれるだけで十分だよ!」
とフライングデバイスで飛行中の会話である。
アデリナ姫が、
「BS師団は国の防御に回ってもらったので今回は私達4機でできることをやりましょう!」
「で、どこまでやるのですか?」
「アルメリア諸国連盟のWAS10機はレオン城の守りに徹しているから援軍は望めないわ。私達はまず敵地を偵察といきましょう! この前襲ってきた有人の3機と同様なロボット機が50は確認されているらしいわ。」
「奴ら、やっぱりこれまでの期間に色々と準備してたんですね!!」
「しかし、50機もいるのか?? 4機で50機は流石に無理だろ〜」
「1人、少なくとも10機以上は撃破しなくてはならないことになるな・・・」
「そうそう、あなた達にはまだ機密事項だったから話していないんだけど、錬金術師に開発をお願いしていた魔導砲が完成したのよ。とりあえず10機が後からこっちに向かってくるわ。黒魔導師が2名づつ乗車して攻撃魔法を増幅して発射するの。ただ本体重量があるせいで魔動機には搭載できず、ソフィアさんから教えてもらったキャタピラーとかいう鉄のベルトが車輪になったようなもので動くようにしたから到着までに日にちがかかるよの。」
「なるほど、それまで俺たちは目立たずに敵の動きを観察ってことですね、姫?」とスタンがまとめた。
「そう言うことね!」
「その魔導砲の射程はどのくらいなのですか?」
「探知魔法で探知した場所にマップと連動して誘導するから約3kmってとこかしら。」
「でしたら、まず1発づつ狙い撃って10体撃破、俺達が8体撃破し、また、魔導砲を発射!すると28機撃破となる・・・再度俺達が8体崩し、その間に準備し、さらに10体撃破。それで46機撃破になります。これがうまく行けばあと4機が残ることになります。とスタンが単純に計算してみせた。
すると、アデリナ姫が、「この前の3人の海賊は精鋭だと思ってるの。だから、最後に残るのはきっとまたそいつらになるわね! 次は一体どんな進化があるんでしょうね?」
「そろそろ見えてくるわよ! 少し小高い砂丘に降りましょう!」
と敵索敵に引っかからない程度の距離を取り敵要塞が見える場所に陣取った。
まずフリーダが索敵機能で遠方の状況を分析しその動画を共有した。
「なるほど・・・報告通りに50機はあるわね。」とアデリナの表情が凍りついているように見えた。
「それにこの前と同じようにレーザーキャノンも要塞に乗ってるな。」
「この場所はちょうど3kmぐらいの距離があるから魔導砲を配置するのにもいいと思いますよ。」
「わかったわ!この場所の座標に来るように伝えるわ。」
「おい、見てくれよ! 奴らの機体のウイングが前回のと違ってるぞ!」とダミアンが気がついた。
「本当だ! 前回は空中での飛行が素早くなかったからな。大型に改善されたのかも。」
「てことは…今回はかなりの空中戦が予想されるわね・・・」
「でも、俺たちも訓練してきたからこのパーティーであれば大丈夫だよ!」とスタンも祈るように言った。
「まあな、俺も空中で回転しながら斧で攻撃できるようになったしな、あのアクロバット飛行は役立つよな!!」とダミアンの勢いに、敵のあまりの多さにビビり気味であったチームに笑顔が戻ってきた。
「後続部隊が到着するまでは、少なくともあと3時間はかかるわね。」
「じゃ、とりあえずBSから出て寛いでようぜ! 戦う前に疲れちゃまずいしな。」
「そうね!じゃ、みんなそうしましょう!」
4人はBSから出て、スコープでの警戒は怠らないようにしながら食事にした。




