第49話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
彼の表情をじっと眺めていたアデリナには男女の関係ではなくとは言っているものの、その欲求も伝わってくるのが感じとれたのだった。
「わかったわ。スタン!あなたの気持ちを正直に打ち明けてくれてありがとう!私もあなたが好きよ!じゃなければ側近として護衛をお願いしたりはしないわ。私、男女って色々な関係があると思っているの。だから、これから私たちはいい関係を築いていきましょう!」
アデリナの言葉を聞いて、なぜかスタンは涙が溢れてきてしまった。一国の姫君にそんなことを言われてしまったのだ。すると、なんと発作的にまるで子供のようにアデリナに抱きついてしまったのだった。スタンとしては今までに見たことがない行いである。それを受けたアデリナはスタンの今までの孤児としての苦労を感じたのだろうか?まるで弟を介抱するように固く抱きしめてあげたのだった。
『姫って、こんなに温かいんだな。とろけてしまうようだ。それにいい匂い。この人しかいない!』と思ったのだった。
周辺には幸い人気はなかった。姫は暫く介抱してあげていたのだが、少し離すとまるで弟にするかのごとくに彼の頬に軽くキスをしてあげたのだった。
スタンはその瞬間ドキッと動きが止まったかと思うとそのまま凍ってしまった。まるで爆弾を落とされたかのように。そして、立ち尽くしたままになっている状態で、姫は「では、スタン!私行くわね!」と言ってニコッと微笑むと去って行ったのだった。
残されたスタンは、暫くその幸せな余韻を感じていたかったためかその場にとどまっていた。
スタンとしてはフリーダの使い魔でありながらアデリナに好意を寄せている自分に後ろめたい気持ちを抱いていた。『フリーダも好きだし俺のファミリーみたいなものだ。姉妹みたいな感覚もあるけど彼女ような存在でもあるんだと思う。少なくとも俺には・・・しかし、やっぱりアデリナは手の届かない憧れの存在だったのだが・・・
なんとこともあろうにキスをされてしまったのだ!!これは俺にとっては大事件だ!! 自慢したい気分でもあるけど絶対誰にも言えない秘密であることはわかっている。俺とアデリナ姫だけの2人の秘密にしないといけないんだ!』と自分に言い聞かせるように気持ちを押し殺し胸の中にしまうことにしたのだった。
そして検査室からフリーダが戻ってきた。
スタンは浮ついた気持ちを隠しフリーダに動揺がバレないように気持ちを押し殺していた。
「どうだった?大丈夫かい?」
「ええ、まあ、なんとか私レベルの空間転移魔法でも魔道具を使えば巨大な建造物を動かせるようにできるみたいね。安心したわ!だって、国を代表してせっかくエルフ王から伝授してもらったのに使えないとなると私の存在意義が問われるじゃない!? じゃ、戻りましょう!」
どうやら、バレなかったらしい。
寮の部屋に戻ると、
フリーダが、「もうすぐ私たちも3年生になるわね。なんかこの前入学したと思ったばかりなのに時間が経つのって早いわね!」と嬉しそうでもあり残念そうでもある表情である。
「まあね。学生生活というよりは戦争や冒険に明け暮れた日々だったような気がするな。それはそれで楽しかったけどね!」
「でも、私たちって入学前と比べると色々と精進できたわね!今ではそうとう実力が備わったと思うわ!」
「そうだね、人生って不思議なものだね。」
「ところでスタン!」
「何?」
「私たち、来年が終わると使い魔契約の見直しになるわ。どうする?」
「そうか・・・僕は君には色々とお世話になったから・・・君はどうしたいんだい?」
「そうね、私はかれこれ2年もあなたと一緒に暮らしているから、できればこれからもこの関係は続けたいと思ってるわ。でも、あなたも卒業するわけだし、一旦使い魔契約は精算して、それでも契約無しでこの関係が続くのであればそれはそれで歓迎するというかすごく嬉しいわ。」と正直に自分の気持ちを伝えてくれたのだった。
「わかった。ありがとう!俺は君にとても感謝してるよ!俺をどん底の人生から救ってくれたんだから。それに、俺も君とのこの関係がずっと続いてくれるといいなと思ってるよ。」
と、フリーダからも好意的な話をもらったのであった。
すると、「トントントン」とドアを叩く音が聞こえた。
「だれ?」
「俺だよ!俺!」
ダミアンだった。
ドアを開けると、
「アルベルトも珍しく戻ってきたんだ。久々に全員揃ったから今日の夕食は学食でみんなで食べないか?」
「おー いいな!! ねえ、フリーダ、行こうよ!!」
久々にパーティーメンバー揃っての夕食となった。
「じゃ、みんな、今までの無事を祝おう! かんぱーい!!」
「君たち元気だったか? 私はそれなりに忙しかったよ。それはそうと、噂に聞いた話なんだけど、
来年、アデリナ姫が卒業になるじゃないか!そしてそのタイミングで姫が独自の部隊を持つことになるらしいんだ。それも特殊部隊という噂なんだ。その部隊には私たち学生もノミネートされるらしい・・・」
「へえー 学生なのに? 授業や単位はどうなるんだ?」
「それは、兵役に参加すれば単位にカウントされることになるみたいだよ。」
「そっか!それならいいけどな! アルベルトは間違いなく選ばれるんじゃねえか!」
「いや、それはないな!私は騎馬隊候補生だから王立騎馬隊に卒業後に所属することになると思う。」
「なるほど、じゃ、その特殊部隊ってどんな部隊なんだ??」
「騎馬隊のような正規軍がカバーできていない隙間をカバーする姫が指揮権を持った部隊という話だったね。」
「じゃ、俺たち姫とパーティーを組んでいるから、ノミネートされるかもしれねえな!」
「そうだな、その線は強いな!」
「なるほど!なんか匂うわ!私、空間転移魔法なんかもらっちゃったから確定かもね〜」
「スタンはどう思う??」
「俺は構わないよ・・・」
「それはそうと、ヘンドリックがいないけどどうした??」
「あっ なんか今日はお姉さんの婚約が決まったとかで家でお祝いがあるとか言ってたぜ!」
「ヘンドリックは王都の商人の家系だよね?」
「そう、彼は金持ちのボンボンで王都の高級住宅街に邸宅があるんだよ。」
「へえー 凄いな! 羨ましい〜!!」




