第48話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
「えっ、私ですか??・・・」
「姫は無理なのですか? そんな一国の安全に関わるようなことを私が・・・」と驚いていた。
「私はそもそも魔導師ではないのだから…フリーダに託すしか…」
「しかし、その古代魔法の空間転移魔法なんか私に扱えるようになるのでしょうか??」と不安な表情に変わった。
「ただ、古代魔法は特殊なため発動にあたり少々時間がかかると思われます。習得頂くのに数日 神樹の森のご加護があるこの里に留まっていただく必要もあります。」
「わかりました。ありがとうございます! では、フリーダにご指導宜しくお願い致します。
私達はあなた方の里に留まりながら何かお手伝いができればと思っております。」とアデリア姫が丁寧に受諾した。
かくしてフリーダは長老であるエルフ王に従って空間転移魔法の習得の修行に入り、他のメンバーは森の里でしばしゆったりとした時間を過ごすことになったのだった。居心地の良い森の中で自然食を頂き戦いで疲れていた身体が癒されていった。
アリエルはエルフ達の営みの中に戻っていったために、そこにはアデリナとスタン、ダミアン、ヘンドリックが残された。
「アデリナ姫!俺たちいつも忙しいから、たまにはこんな風にのんびりくつろぐのもいいんじゃないか??」とダミアンは野原の落ち葉の上に寝そべりながら言った。
「そうね!あなた方には学生なのにいつも戦闘に参加してもらって負担をかけてきてしまったからね。申し訳ないと思ってるわ。」
「いえ、僕らは国の防衛のために魔法科学院に入ったわけですから学生の勤めだと思っていますよ。」とヘンドリックは真面目にもっともらしいことを言っている。
「しかし、フリーダってエルフの古代魔法を習得できるんだろうか??」とスタンは空を眺めながらそっちが気になっているようだ。
「古代魔法は確かに習得は難しいとされているけど、それなりの神官がそれなりの場所で儀式を行って伝承すればエルフでなくても習得可能だとは聞いているわ。フリーダだったら大丈夫だと思うわ。」とアデリナは自分の選択に自信を持っているようである。
「フリーダが空間転移の魔法を習得できれば、俺たちの国が造る宇宙船を宇宙に転移できるんですかね?」
「巨体を転移させるには増幅させる支援魔法の装置も必要になると思うけど理論的には可能になると思うわ。」
「それができれば、宇宙海賊達をやっつけることができるんだろ??」
「そういうことになるわね。」
すると神樹の森の方角からフリーダとアリエルがこっちに向かって近づいて来る姿が見えてきた。
「あっ、フリーダとアリエルだ!」スタンが気がついた。
2人は上機嫌でこちらに走ってきている。
「みんなー やったわよー!!」
フリーダとアリエルも空間転移魔法を習得できたのだった。
「やったね!! 本当に良かったよ!!」
「そうね!スタンったらずっとフリーダの心配をしてたのよ!」とアデリナがバラしてしまったため、本人は黙って赤くなってしまった。
「スタン、ありがとう!! みなさん、お待たせしました。習得出来ましたよ!!感激です!じゃあ国に戻りましょうか!?」
この時間が止まったかのような癒しの空間であるエルフの森を後にして一行はブリンデンベルクに戻ることにした。ただ、自力で森を抜ける自信がないため、途中までアリエルが道案内をすることになった。
「この白い森を抜けると、ブリンデンブルク領になります。ウェアウルフを撃退して頂きまして本当にありがとうございました!また、遊びに伺いますね!では、道中お気をつけて!」と、アリエルとは暫しのお別れとなったのだった。
「俺、エルフの里で時間が余ったから鍛錬していたんだけど、不思議なことが起こったんだ。なかなか使えなかった双剣の風魔法が使えるようになったんだよ!!」とスタンが言った。
すると、フリーダが、「スゴイ!遂にやったじゃないの!だって念願の魔法でしょ!! エルフの里は風魔法の里でもあるから、その地に長く滞在したことが良かったのかもね!」
「俺は何故か疲労や身体の痛みが全くなくなってチョー絶好調だぜ!」
と、ダミアンも森を歩きながら話していると、「そうね!確かに!身体が軽くなった気がするわ! なんか、あの里には癒しの効果があるようね!帰ったらケレブリン教授にその効能を聞いてみましょう!」とアデリナも何か不思議な力を感じたようである。
フリーダの探知魔法で魔動機に辿り着くことができた。
「じゃ、真っ直ぐに帰りましょう!」
かくしてお役目を終えた一行は王都に向かったのだった。
その頃、王都では宇宙海賊対策の魔導兵器の開発が進んでいた。
スペースシップの完成も数日後に迫っていたため、フリーダが習得した空間転移魔法の強さに合わせた増幅魔導兵器の開発もスタートした。
「この開発が終わると、やっとひと段落するわね!」とそれを眺めていたアデリナがほっと胸を撫で下ろしている。
フリーダが検査機に入っているため、この場にいるのはアデリナとスタンだけであった。
「ねえ、スタン、以前お願いしたことなんだけど、私そろそろ卒業になるから王立の特集部隊を率いることになったの。すでにその部隊の編成が始まっているんだけどあなたにも入って欲しいの。私の護衛兼務で。だからあなたを卒業後の副官に抜擢したいのだけど、いかが?」
「えっ、俺が副官デスカ? 本当ですか? すっごく感激です!でも、俺はまだ学生が1年残っているんですが・・・」と、全く予想だにしていなかった王女からのオファーに全身驚いているようである。
「それは大丈夫よ、軍務がない時には大学の授業に出て差し支えないし、公務は大学の授業の履修にカウントされるようにしたから。」
「でしたら、俺が姫を守ることができて、おまけに国のお役に立てることができるんでしたら是非お願いしたいです! でもフリーダはどうしましょうか?」
「彼女も魔導兵器関連で必要な人材になっているから一緒に誘うつもりよ!ダミアンとヘンドリックもそうするわ。ただ、対応案件に合わせて招集することになるから常時招集されるのは護衛のあなただけよ。信頼しているから宜しくお願いしますね!」
「は、はい、わかりました! 俺、ずっと恥ずかしくて言えなかったのですが・・・
この機会に・・・実は俺、姫に憧れているんです!それは男女ということではなく人間的に尊敬しているんです。
品格があって凛としてかっこいいし、それに王家の姫が孤児の俺になんの隔てもなく接してくれて・・・だからこの人ならって思ったんです。だから、絶対に姫を守りますよ!命に替えても!」と初めて心の中を正直に打ち明けてしまったのだった。そして言いながら顔が赤らんできて恥ずかしくてどこかに隠れたい気持ちになったのだった。




