第33話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
「カンカン、キン、カンカンカン!!」
50人いた賊達もどんどん成敗されていった。そもそも剣技だけでも秀でている2人に支援と防御魔法が掛けられれば隙は全く無くなってしまうのだ。
「おい、姫!あとはこの親方だけだぜ!やっちまおうぜ!!」
ブルーノの巨体はギリギリ2人を封じているように見える。
すると、スタンが、「ダミアン、こいつは俺がヤルから、あのバイヤー達を追いかけてくれ!!」と叫んだ。
姫もスタンと同じようにバイヤー達を逃すわけにはいかないと思ったのだろう「わかったわ!じゃダミアン、あのバイヤー達を捕まえて!!」と、ダミアンは「アイヨー!」と言うと逃げようとしているバイヤー達の後を追っていった。
スタンはブルーノと1対1で対峙している。
ブルーノは体の大きさに合わせた巨大なシールドに極太のサーベルを構えている。
そしてシールドから赤い光が漏れてきたかと思うと、それが防護シールドを張っているようだ。
『あのシールドは魔道具か!?』
そして、その防御されている間に呪文を唱えて両腕を広げたのだった。するとブルーノの後方から左右2つづつの空間の穴が現れその漆黒の穴から次々と死霊と化した腐乱死体が現れたのだった。
「あっ、こいつはネクロマンサーだ!!」とスタンが叫んだ。
今までブルーノが殺した数々の亡骸にブルーノが操る霊が取り憑くことにより物理攻撃が可能となるのだ。
そしてその死霊に噛まれるとそれが伝染するのである。
それを見たフリーダも浄化魔法を発している。それによって霊を媒介として操るブルーノの支配力が弱まっており動きが緩慢になってきているのがわかった。しかしながら夥しい数のアンデッドが襲いかかってくる中、スタンは口のバイト攻撃を避けながら双剣で切り裂いていっている。魔剣だからであろうか?切り裂かれた死霊は黒い鱗粉を残し消えていっていた。
しかしながら、この夥しいい数のアンデッドを相手にすると剣での到達範囲は距離がないため極めて危険である。
スタンは左手の魔剣をしまい腰の鞭の魔道具に手を伸ばした。『これなら距離が取れて魔獣対応できるから効果があるかも!?』
スタンは左手に持ったミスリル製の長鞭でアンデッドを翻弄していた。先がナイフにような形状になっているため、その鞭先でアンデッド達を破壊できているのだ。
『やったぜ!! やっぱりこの魔道具を身につけておいてよかったぜ! こんな使い方があったのか!?』
と我ながら感激していた。
一方外で待ち伏せしていたヘンドリックはダミアンに追われて逃げ出てきたカリフのバイヤー達を正確に射って撃退していた。一掃した後、スタンが戦っている場にダミアンと一緒に戻ってきたのであるが、ただならぬ戦場の様相に驚き立ち尽くした。
「俺が死霊をやっているから、ダミアン、ヘンドリック、あのブルーノを倒してくれ!!」と号令をかけた。
我に返ったダミアンは、「おっ おう!! ブルーノだな!! 任せておけ!!」と言ってブルーノに挑みかかっていった。
ヘンドリックはその間合いを見ながら弓を構えており、ブルーノがダミアンの長斧の猛攻に押されて下がった瞬間に狙いを付けるとポイズンアローを素早く射ったのだった。
その矢はブルーノのシールドの防御を抜けて右脇腹に刺さった。
するとブルーノは脇腹を抱え一瞬怯んだのだった、そこにダミアンの長斧が捉え右肩から斜めに左腰に向けて豪快に振り下ろした。するとアンデッドの動きが休止したのだった。
ブルーノはダミアンの強力な一撃を受けて、その場に立ち尽くしていた。
アックスの一撃の激痛で厳しい表情に変わったブルーノであったが、まだ抵抗を続けようとサーベルを振り上げた。
その瞬間にヘンドリックが射る矢とダミアンの斧を続けて喰らい正面からバッタリと倒れたのだった。
その時スタンの方も最後のアンデッドを切り払っていた。
フリーダに襲いかかるアンデッドを振り払っていたアデリナも解放さて「やったわねー!!みんな凄いわ!!」と歓声が上がった。
スタンも、「やったな!!相棒!!本当は俺がこいつをやりたかったんだが、ネクロマンサーだったとは思わなかったよ!油断した。ダミアン、ヘンドリックありがとう!!」とダミアンとヘンドリックに向かって挨拶代わりの拳を軽くぶつけた。
「黒魔術ってことは、こいつは魔族だったのか??」とダミアンが驚いているようだ。
「だな。噂通りに本当に魔族がいるってことがわかったよ。」
「さあ、では、奴隷を解放しましょう!」とアデリナが言い、一行は牢がありそうな地下に下りていった。
そこは暗闇にランタンの光のみが届く牢獄であった。
「誰かいる??」フリーダが叫んだ。
「はい、おります!!助けてください!!」と叫ぶ女性の声が多数聞こえてきた。
牢は左右6つあり、鍵を破壊し全員を救助し館の外に出した。
囚われていた女性は子供も合わせると若い女性のみで14人もいたのだった。
皆、美貌の女性達ではあるが衰弱しており衣服も不衛生で健康体とは言えないあり様であった。
その中には先ほど競りに出されていた若い美貌のエルフの姿も確認できた。
「かわいそうね・・・すぐに馬車に乗せて王都に向かいましょう!」
「えっ、姫!レオン王国に向かわなくてよいのですか?」とフリーダが聞くと、
「レオン王国の表敬訪問が今回の最終地点だったけど、兼ねてから噂があった奴隷売買の大元を断ち切れたのは凄い功績よ、それに可哀想な女の子達も労ってあげないといけないから今は一旦帰りましょう!」
「しかし、姫、ブルーノが言っていた、俺たちが奴の刺客を殺したってことなんだけど・・・ということは、奴が王家の誰かから情報を得ていたか?殺しの依頼を受けていたってことになるよな!?」とダミアンが、
「そうなのよね!私もそれを聞いた時はショックだったわ!だから、王都に私達の敵が存在するってことよね・・・これからは用心していきましょう!」
スタンとダミアンが馬車で少女達を運び、その上空をフライングソーサーが警戒しながら飛んでいった。
王都に着くと少女達はとりあえず保護施設に預けられ健康体に戻るまで養うことになった。
この件を、アデリナは秘密裏に王に報告し『宮廷内に奴隷商人と通じていた者がいる、しかもアデリナを抹殺する依頼を出していた』という事実を共有したのだった。それにより密かに宮内庁の調査が入ることになった。
そして、奴隷の中でセリに出されていたエルフが姫に話があるということで、アデリナはなぜかスタンも同席で会うことになったようだ。




