第31話
魔法世界に冒険者として生きる孤児であり主人公スタンリー・ケンプ。
そこに生きる人々の様々な些細な行動がまるでバタフライ・イフェクトのように世界を変えていく。
この物語のテーマとなる『ストレンジアトラクター』とは、難しくいうと・・・
カオス理論の研究の中で発見された奇妙な挙動を示す微分方程式の状態の総称のこと。
つまり動的システムが時間とともに発展する際に、予測不可能 で複雑なパターンを形成する現象を指すのです。
そんな泡沫の世界で生きるスタンリー・ケンプ
彼の目を通してその冒険譚を進めていきたいと思います。
また本編である『光と陰ー織りなす夢の形』のスピン・オフとして、本編シーズン4の最後と繋がる物語となりますのでお楽しみに!
つまりアデリアの出国を知っていたのは、国王、王妃、第一王子、第二王子、第一王女そして第三王女の王族だけなのである。
「可能性があるのは、権力を握りたがっている反王政派の貴族連中ね・・・で、誰かから聞いたとか・・・」
「しかし、半王政派はここまでやるんですか??」とフリーダも驚いている。
「とにかく油断しないで進みましょう!みんなにも迷惑かけてすまないわね!」
「いえ、俺たちは姫の護衛に徹しますよ!気にしないでください!」とスタンもこれからの姫に降りかかる火の粉を心配しているようである。
翌日は砂漠を走り国境線上ににあるオアシスの村ミスファについた。
ここは旧時代から存続する交易の村で、家屋も石を積み上げただけの四角い簡素で伝統的な建物である。雨が降れば雨漏りがしそうな簡単な作りであるが年間を通して乾燥しているためさほど問題にならないのだろう。
オアシスの中心には綺麗な小さな和泉がありこの村の命の源となっている。その周りには樹齢が100年になりそうな立派な椰子やフェニックスが茂っており広場には数々の露天商がひしめいている。
そしてその市場は巨大なマーケットを構成しており、無数の路地で繋がっているため危険な臭いはするがある意味路地裏のファンタジーを感じる不思議な村であった。
「やっとついたわね!宿を探しましょう!」と姫はいつになく解放された気分でご機嫌である。
そしてグレードが高いホテルに泊まると身分を隠し難いと言う理由にて、通常の行商人が泊まるような簡素な旅籠屋に2部屋とっていた。2階のバルコニーに出てみると手前の椰子の木に手が届きそうなまさに風光明媚なリゾート風景が広がっている。
一行は出店を周りながら旨そうな匂いがそそる羊肉の串焼きやフルーツ、ピザのようなピデを頬張りながら無国籍な交易品を覗いていた。
「へえー なんか不思議なものが多くて楽しいな!!」と予想外にダミアンも興味津々のようだ。
そんな中、アデリナは夢中で何かを探しているようだ。
「姫、何をお探しなのですか?」とフリーダが聞いてみると、「うん、ちょっとねー」としか返ってこない。
そして急に何かを見つけたように走っていった。
アデリナが走り寄ったブースはシルクのスカーフの店であった。
色鮮やかな異国情緒あふれるテナセンのシルクスカーフが所狭しと並んでいる。
姫は夢中でそれを手に取り気に入った柄を頭に巻いてみたりしているのだ。
まるで仲間のことは忘れたかのようにそこで20分過ごし、スカーフを10枚そしてこのあたりの民族衣装である黒いフード付きのガウンコートを買ったのだった。
それを護衛の如く見守りながら見ていたスタンとダミアンであったが、
「あのガウンコート国籍を隠せていいんじゃねえか!?」というダミアンのお言葉でなんとユニフォーム的に全員購入したのであった。
そして5人全員がパーティーのユニホームのように黒いフッドコートに身を包んでいるところだ。
姫が、「やっと見つけたわ!! このコート前々から欲しかったのよね〜 スカーフとこのガウンコートは身分も国籍も隠せるから重宝するわよ!!」とまるで子供がおもちゃを買ってもらったかのようにはしゃいでいるのだ。
『姫って、やっぱり子供ぽいところがあるんだな! でも、それがカワイイ!』とスタンはこっそり思った。
暗く興味を煽る路地裏をさらに進んでいくと、「やめてください!それだけは!!」と叫ぶ声が聞こえてきた。
「なんだ??」と5人は奥の路地裏に走っていったのだった。
すると、そこには盗賊風の男3人に痛ぶられている商人の姿があった、その男は小さな女の子をその身で守っているように見える。
「そこのもの!暴力はいけないな!!」と姫が大きな声を発した。
3人の男はそれを聞いてこちらを見た。
「なんだ、お前ら?お前らに関係ねえことだろ!!」と言い威嚇していいる。
すると、その商人は「助けてください!!この子を奴隷に取ろうとしているのです!!」と叫んだ。
「ヨシ!わかりました。助けてあげましょう!」と姫が言って剣を抜いた。
するとスタンとダミアンも一緒に剣を抜き、ヘンドリックも弓を構えた。
「なんだ、おめえら、泣く子も黙るブラックダイアモンドクランに剣を向けるのか!? 身の程知らずの若造達だな!後悔するなよ!!」と言って男3人は頑丈なサーベルを抜いて襲いかかってきたのだ。
「おっ そこのねえちゃん、上玉じゃねえか!! 高く売れそうだな!!」と姫を見て言っている。
「お前ら奴隷商だな!!」と姫が言うと、
「いや、恵まれねえ女の子達を解放して気持ちよくなれるところに連れて行ってやってるんだよ!!ねえちゃんもどうだい??」
最初は剣で小競り合いをしていたのだが、3人の賊は一歩下がると呪文を唱え、この路地裏でファイアーボールをぶつけてきたのであった。それをフリーダが水魔法で受けて被害が放りがらないように沈静化させた。
3人の悪行を見届けたアデリナが、「スタン、ダミアン、ヤってください!!」とまるで何処かのご隠居のように命令すると、
「ヤったー!待ってました!」と2人が前に出て3人に斬り掛かって行った。
2人の圧倒的な剣技に押されて3人の賊は体を切り刻まれ始めている。不利だと悟った3人は「ヨシ、引くぞ!!」と言うと、爆炎を起こし、その間に姿をくらましてしまったのであった。
「大丈夫か?行商人の方??」と姫が女の子を案じて駆け寄った。
「いや〜ありがとうございます! あなた様の助けがなければこの子は攫われて私は殺されていたでしょう・・・
本当に有難うございます。我々の命の恩人です。」と涙ぐんでいた。
スタンが、「あいつらは?」と行商人に聞くと、
「最近この周辺を牛耳っている盗賊なのです。人身売買、麻薬売買、襲撃なんでもありの悪党たちなんです。」
「なるほど!あいつらだったのね!!? 実は噂を聞いたことがあって、今回はその調査も兼ねているの。」
「そうだったんですか?」とフリーダも今更の如く驚いている。
「通商大臣から通商行路を脅かしている賊が最近頻繁に出没しているとの報告を受けて、国境を侵犯する危険があるから騎士団派遣では目立ちすぎるからどうしたもんかと思っていたところだったの。」と姫が説明した。
すると「では、騎士団に代わって我々が対処するって言うのはアリですか?」とスタンが自分の幼少時代の不幸な経験を思い出したのか率先して提案したのだった。 姫は頷き、
「そう言うことだったら俺も参加するぜ!!」とダミアンも乗ってくれた。
ダミアンが残りのフリーダとヘンドリックを見ると、2人は一瞬躊躇している風に見えたのだが、
「いいわよ!そう言うことだったら協力するわよ!」と一応全員一致で方向性が決まったのだった。




