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21話 黒の景色
「では、飛びましょうか」
いちごはそう言うとーー目の前に黒い翼がひらひらと落ちていた。カラス……? 最初に空を見上げたが、カラスはどこにもいない。いちごの方へ視線を戻すとーー驚いた。彼女の背中には、小さな翼が生えていたのだ。まるでこの姿は……「悪魔……?」
そう聞かれたいちごはどこか嬉しそうに笑って
「はい! 私、実は悪魔なんです! 正確には夢魔らしいです」
「ーーあははっ」
僕はそんな彼女が少し可笑しくて、笑った。
「そうだったのか。てっきり僕は、天使の方だと思ったのだけどね」今の僕はどんなに非科学的な事でも、信じる事が出来た。それに、彼女は僕にとってやっぱり、天使なのだから。
「いちごちゃん。連れて行ってくれ。たとえ幻であっても、僕は夕梨花に生きていて欲しいんだ」
いちごはまるで自分の事の様に、嬉しそうに頷いた。
「では8月31日に、最後の夏休みに向けーー飛びます」
瞬間、彼女の翼がはためき、黒い羽が無数に舞い、僕の視界に入り込む。
悪魔は人を陥れる。そんな迷信を、今の僕には信じられなかった。
だってこの黒の景色は、とても暖かかったのだから。




