19話 死神クジャク
次に目を覚ました頃は隣にルシルさんはいなくて、代わりに珈琲の香りがしました。ルシルさんはいつもの様にリビングのソファーに腰掛け、アメリカンコーヒーを飲んでいます。
「おはよういちごちゃん。朝食は出来てるよ。最も、俺はアンズほど料理上手じゃないけどね」
食卓には目玉焼きとトーストが並んでいました。私はご飯も好きですが、パンも大好きです。
パンを口に含んだ瞬間、インターフォンが鳴りました。
「いちごちゃん、悪いけど出てくれるかい?」
「ふぁい」食べてる途中なので変な声が出てしまいました。
以前ならお行儀が悪いと怒られるところです。ルシルさんは、王様なのに。作法を気にしません。
ドアを開けると――金色の短髪をした男性が立っていました。
男性はピアス、イヤリング、ネックレス……身体の至るところにアクセサリー着けていて、直視すると目がクラクラします。
「グッモーニング!」
凄く大きな声が鳴り響きました。私はビックリします。
「ん……? おー!なんやこの美少女は!? これからワイと朝のティータイムにいこうや! 」
「おはようございます。私はいちごと申します。せっかくのお誘いですが、今日は用事がありますのでご遠慮させてもらいますね」
「おい、クジャク。昨日説明しただろう。その子は俺の眷属だ。いちごちゃん。一応紹介すると、彼が僕の一応友人のクジャクだ」
「一応ってなんやねん! ワイらマブダチやろ!」
少し呆れ声のルシルさんを気にせず、クジャクさんはニコニコと笑い、ルシルさんの胸を軽く叩きます。ルシルさんは触られた事に顔をしかめます。
「話には聞いてはったけど、どえらいなぁ。ワイ好みの年になるのが楽しみやわ! あ、これ名刺や」
彼から渡された名刺を受けとるとそこは【ホストクラブGRIM No.1クジャク】と書かれていました。
ホストとは、女性の為の男性達とは知っています。
ルシルさんによるとこの街ではポプュラーなお仕事だそうです。
クジャク。沢山のアクセサリーで輝く彼にピッタリの名前だなぁと私は感心してしまいます。少し変わった話し方も印象的です。
「……いちごちゃん、この男だけは止めておきなさい。王様の命令だよ」
ルシルさんは珍しく本気で嫌そうな顔をしました。そんな王様が、なんだか可笑しくて、私は笑いました。
「では、私は先生の夢に向かいますね」
私がそう言い、【夢飛行】をしようと翼を広げます。飛び方は、身体が知っています。
「いちごはん」
急に、真面目な声でクジャクさんはいいます。彼の手には銃が握られていて、眠る先生に銃口が向けられています。
「もう話には聞いてると思うけど、ワイは死神や。ルシルに言われた通り、今日わいは、葛城誠をこの【鎌】で連れてくで。つまり、この話はルシルとあんさんの賭けや」
「……それは鎌では無く、銃なのではないのでしょうか」
クジャクさんは爽やかに笑います。
「良いツッコミや! ますます気に行ったわ! 今死神界では銃型鎌がブームなんやで!」
クジャクさんの言葉に私は頬が緩みます。今回私とクジャクさんは賭け事の競争相手なのに、そんな事が気にならなくなるくらいの、爽やかさを持った人だと思いました。
「GOOD LACK! ――頑張りや」
クジャクさんの言葉に私は頷き、飛び立ちます。
最後に見たルシルさんの顔は、どこか嬉しそうでした。




