表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/30

12話 告白

 マンションに来た僕は、緊張した指でインターホンを鳴らす。

 少ししてからドアを開けた夕梨花と目が合った。

「いらっしゃい、せんせい」

「うん、お邪魔します」

 彼女は微笑んだ。

「どうぞどうぞ~。私飲み物持ってくるから先部屋入ってて」

 

 彼女の部屋に入ると、目柱が熱くなった。

 花の様な香水の香り、白いレースカーテン。本棚に綺麗に並べられた少女漫画。勉強机に沢山貼られた、友人とのプリクラの写真。間違いなくここは、僕がかつて彼女に教えていた部屋だった。

「うっ……く……」

涙が溢れる。僕は慌てて目を拭う。

彼女との再会なんだ。楽しい夢なんだ。涙なんて、流してる時じゃないのに……。



「先生はいつものブラックコーヒーでいいよね……って、どうしたのせんせい!?」

コップを持ってきた彼女は驚きの表情を見せる。

 僕は必死に取り繕う。

「な、なんでもないんだ。昨日見た映画が凄く感動して……それで今、急に思い出して……」

そう言いかけて急に暖かさを感じた。

夕梨花が僕を抱きしめたという事に、数秒遅れて気が付いた。

「せんせい、何か、辛い事があったんだね」その言葉を彼女の声で聞いた時、僕はもう限界だった。僕は泣き喚く様に吐き出す。


「うん、うん……とても辛くて、怖かったんだ、ずっと一人で心細くて、それなのに周りのスピードは恐ろしく速くて、僕は置いてけぼりにされて……それからーー」

「いいよ。思いっきり泣いていいよ。せんせいはいつも大人っぽいけど、我慢してたんだね」

 夕梨花は僕の頭を優しく撫でる。人の手が温かいと思ったのは、いつ以来だろうか。

 僕は泣き続けた。まるで20年間の涙を一度に放出する様に。

どれくらい時間が経っただろうか。夕梨花はずっと、僕を抱きしめてくれていた。


「あはは、今日は、もう勉強出来ないね」

 夕梨花は暗くなった窓の景色を眺めた。

「――夕梨花、君に言いたい事がある」

「――えっ?」

「君が好きだ」

 遂に言えた。長い間言えなかった、言いそびれた言葉を。

「……ありがとう、凄く嬉しい」

「本当!?」

 嬉しくて少し声が浮ついた。

「でもごめんね。せんせい」

 時間が、凍り付いた様な気がした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ