女神アルテミス
それから。
幾つかの自動扉を開いて、アジトの奥に進んでいくと目的の場所に到着したみたいである。
【邪神対策本部 中央制御室】
部屋の上に立てられたプレートには、そんな意味深な言葉が躍っていた。
(邪神対策本部? なんじゃそりゃ?)
聞きなれない言葉を目にした悠斗は、頭に特大のクエッションマークを浮かべることになった。
実のところ悠斗は、これまでに幾度となく『邪神』に関連する戦いに巻き込まれていたのだが、本人には全くその自覚はなかったのだ。
七つの大罪を名乗る上級魔族たちが暗躍していたのは、邪神の復活を目的としていたものであった。
世界の各所にブレイクモンスターと呼ばれる難敵が出現したのは、邪神の復活が近づいているからに他ならない。
だがしかし。
戦いの中心に立たされていたはずの悠斗は、その詳細を誰からも知らされていなかったのである。
「ついてこい。彼女はこの中にいる」
アークに導かれるままに部屋の奥に足を踏み入れる。
そこで悠斗を待ち受けていたのは、この世のものとは思えない神秘的な光景であった。
「おいおい。なんだ……これ!?」
悠斗の視線の先にあったのは、巨大なフラスコの中で眠りを続ける1人の少女の姿であった。
少女の名前はアルテミス。
邪神と対を成す神族の少女にして、人類にとっての最後の希望とも呼べる存在であった。
(……珍しいな。髪の色が青いなんて)
最初に悠斗の眼を引いたのは、アルテミスの持つ、冬の海のようにキレイな青色の髪の毛である。
胸は大きい。
おそらくFカップ以上はあるだろう。
その少女は、胸が大きい割には、ウェストのくびれもあって、なおかつ尻も大きいという、まさに神が悪戯で作ったかのような造形美をしていた。
(むふふ。これは眼福ですなぁ……)
予想外にも巨乳の全裸美少女を目にすることになった悠斗は、思わず頬の筋肉を緩ませることになっていた。
「――――ッ!?」
もしかしたら性的な視線を向けられていることに気付いたのかもしれない。
長い睫毛によって彩られたアルテミスの両眼が開く。
意識を取り戻したアルテミスは、両手で胸と股を隠して、露骨に嫌そうな表情を浮かべていた。
「おおっと。これは失礼。キレイなお嬢さん。俺は決して怪しいものではありませんよ!」
「…………」
どうやら悠斗の必死の弁解は完全に逆効果だったらしい。
アルテミスの眼差しは、完全に不審者を見る時のそれであった。
おそらく生命維持装置の中に入っている彼女は、他人と口を利くことができない状態なのだろう。
フラスコの中でブクブクと空気が循環する音だけがその場に響いていた。
(バ、バカな――!? アルテミスが反応しただと!?)
一方、この状況を受けて、強い衝撃を受けたのはアークである。
未だに目の前で起きていることを信じることができない。
それというのもアークが最後に起きている彼女の姿を見たのは、実に10年以上も過去のことだったからである。
アルテミスは『とある事情』によって年々、力が弱まっていく定めを背負った少女であった。
力を失ったアルテミスは、生命維持装置の中で休息期間に入っており、長らく眼を覚ますことはないと考えていたのである。
「えーっと。こちらのキレイなお姉さんは何処のどちら様で?」
「…………」
分からない。
果たして休息期間に入っていたアルテミスを『強制的に起こす』目の前の男は、何者なのだろか。
今回の一件を通じてアークは、益々と警戒心を強めることになっていた。
「……そうだな。こうなった以上、オレの口から説明するよりも、彼女から直接聞く方が早いだろう」
意味深な言葉を残したアークは、フラスコの方を向いてアルテミスに何か合図を送っているようであった。
「アルテミス。この男に例のものを見せておこうと思うのだが、構わないな?」
「…………」
アルテミスが小さく頷いた次の瞬間。
悠斗の視界が黒く塗り潰されて、瞬く間のうちに不思議な空間に転送される
「な、なんじゃこりゃー!?」
そこはこの世のものとは思えない奇妙な空間だった。
全面が黒塗りになった場所に、ところどころピカピカと光る小さな粒が浮いている。
強いて言うなら、宇宙、と表現するのが最も的を射た表現になるだろうか。
突如として宇宙空間に立たされることになった悠斗は、今までの人生の中でもトップクラスの衝撃を受けていた。




