決着
今回は茜 信也視点です
あ、あぶねぇぇ!!!
もうちょっと裕也が死ぬところだった!!
「おい、みーちゃん! 裕也をさっさと保健室に連れて行ってくれ。多分、大丈夫だと思うけど傷が結構深い」
「わ、わかりました!!!」
目元に涙を浮かべながら必死に裕也を運んでくれた
俺はそれを見届けるとその事態を作った奴に睨み付ける
「よくもやってくれたな。ジャッシュ」
『計算だと、もうちょっと爆風が強いはずなのだがな』
悪びれもせずに自分の研究結果に納得しないようだ
ジャッシュ
こいつとの戦いは朝からだった
俺を狙っての台所に爆弾を投げつけてきたり、力を欲するために陰陽師を襲った
簡単な話
あの依頼を達成するためにはこいつを動けなくすればいいだけのことだ
だが、それが難しい
どうやって作ったかわからない実験具を使い、俺を遊ぶ
しかも相手は悪霊だからずっと空中に浮いている
俺の空中滞在時間は約5秒
それ以上浮いていられない
「ちっ……ちゃんと怨むこともできないぐらいに殺しておくべきだった」
自分の弱さを痛感する
武者修行の旅に出て殺した1人がここにきて面倒なことになっている
さっきから本気を出しているがこれと言ったダメージを与えきれていないにも関わらず犠牲者を出した
どうにかして早く決着をつけないといけないのだが……
これと言って思いつかない
そもそもずっと空中に浮いている奴とはなかなか相手しないので行き当たりばったりで戦っていた
ここにきてツケが回った
とにかくどうにかして引きずり落とさないといけない
地上戦になれば負けることはないだろう
そして、俺は両足に力をこめて地面を蹴る
『ふん。何度やっても同じだ!!』
およそ3秒でジャッシュの元へとたどり着く
だが、ジャッシュも対策をとっている
白い研究員が着る服の袖から爆弾を取り出す
そして、飲み込む
「くっ!」
ちょうどジャッシュとの距離がほとんどなくなった頃に……爆弾は爆発する
「ぐあっ!!」
爆風で俺は飛ばされる
痛みはどうでもいいのだが、飛んでいく場所がわからない
さっきはこの爆風のせいで裕也は死にかけた
どうも、俺が思っているより強い爆風みたいだ
飛ばされながら俺は考える
どうすればいい
今のところ殴れていない
一発ぐらい殴れば何か思いつくかもしれないんだが……あの爆風のせいでな
どちらとも飛ばされてばかりだ
……あ、わかった
ちょうど着地してわかった
あいつ常に飛んでいる訳じゃないんだ
悪霊としての体重がやけに軽いから爆風で浮いているように見刺しているだけじゃないのか?
なら……いい方法があるじゃないか
『さあ、どうする? 茜 信也!!!』
「………」
深く深呼吸する
目を閉じて精神を統一する
自然と構え……全力で拳を突いた!!
ブォォォ!!!!
『なっ!!??』
よし!
案の定、相手は飛んでいく
これなら……行ける!!
自分で起こした風に乗り、ジャッシュの真横に行く
『ば、爆弾が怖くないのか!?』
「ん? ああ、お前何か変な勘違いしてるぞ。俺が本気にならないのは……依頼者から依頼だからだ」
何気にこいつは朝、俺の本気を知っているから爆弾を怖がっていると思っているのだろう
勘違いする種は十分にあった
家での爆弾に対しての処理
相手が爆弾を持っている時は手加減しての跳躍
この二つがあれば爆弾を怖がっていると思われても仕方ないな
さて………終わりにしよう
空中でかかと落しを構える
『お、おい!! 俺を殺せば力は……』
「ああ、大丈夫。悪霊はこの程度で死なないことは知っている」
そう言って、かかと落しを決めた