第91話 この裏ダンジョンのボスと話してみた
ふぅ~と息を吐き、俺は先に食事をしようと椅子に座る。
考えて見れば、昼飯食ってなかった。
その上、あれだけ魔力を解放しまくったから、さすがに疲れた。
何を食べようか。
もうスーパーの弁当でいいかな。それと、ミニカップうどん。それがいいよ。
じゃあ、ウナギ弁当を取りだし、カップうどんを準備した。湯沸かしポットには少しの水。
すぐに沸いたので、カップうどんに湯を注ぐ。これで待つだけだ。
冷えたペットボトルからゴクゴク水を飲む。水すら飲んでなかったんだ俺。これがダメなんだろうな。
ゴクゴクと五百ミリのボトルを飲み干した。
追加でもう一本取りだし、蓋を開ける。
弁当の蓋を開けて、カップうどんもいい具合だ。
ガツガツ食べる。
鰻が旨いなぁ。なぜか、数日は肉を食いたいと思わない。でもクリームパスタが食いたいなぁ。
なんだかんだと、一気に食事を終えた俺は、あとでおはぎを食おうと心に決めて寝室に向かう。
風呂に入ろうか。
魔道具で湯を張る間に洋服を脱ぎ、浄化してハンガーに掛ける。
まだ完全に湯を張れてないけど、そのままバスタブに身体を沈めて、ため息をはく。明日は戻れるだろうか。ボス部屋にいるくらいだからかなりの大物だろう。期待が膨らむが正直な所、体調が万全ではない。それが気がかりだ。
こんな裏ダンジョンの話しは聞いたことがなかった。異空間に送られたということなんだろうけど、どうにも納得いかないダンジョンではあった。
人為的に作られたものか? と思ったこともあるが、答えは出ない。あとで調べることもできそうにない。
なにも明らかにならないまま、終わるんだろうか。でも、俺以外のメンバーじゃなくてよかった。こんなところに放り込まれて、普通の人間は戻ってこられないし、眷属たちも魔法が使えないなら、身体で戦うしかない。それじゃあ、おそらくダメだろう。辛いことになっていたはずだ。
そう考えると、俺で良かった。そう思えた。
んー、朝か。
はぁ、夕べ食ったおはぎ、旨かった。でも、胃が重いかな、少し。朝は暖かいお茶を飲んで体調を確認し、メシを食うかどうか、決めよう。
身体がだるい。
まあ、こんな生活を続けてたからな。普通でもおかしくなるよ。
無事戻れたら少し休みたい。
ゆっくり眠りたい、のんびりメシを食いたい、楽しく皆と話したい。
クソッ! なんで涙が出るんだよ。情けないぞ、俺。でも、自然に溢れてくるんだから仕方ないだろ。
皆に会いたい、家に帰りたい……
前世では思いもしなかったことだ。
だけど、今は待っててくれる家族がいる。
そういえば、実家はどうなってるんだろうな。弟がかわいそうなことになってるんじゃないか。俺みたいな人間は増やさない方がいい。母さんと弟を守れず、こっちに呼ばれた。もし、神がいるなら、母と弟だけは守ってほしい。オヤジはどうでもいい。道場もどうでもかまわない。
もし頼むことができるなら、それだけを頼みたい。
温かいお茶を飲み、ホッとひと息ついた。
涙を流す俺を見て、ブルーは隣りに佇んでいるだけ。何も言わずに隣りにいてくれる。
錬金でできたゴーレムだけど、他の眷属たちと同じだ。本当に優しい。今の俺には心地よい。声をかけられるより、隣りにいてくれるだけで幸せだ。
そんなブルーを感じながら、温かいお茶を飲み干した俺は、何か食っておこうと思い立つ。
おにぎりが一個とカップ味噌汁。
これで十分だ。
やはり食欲がないんだろうな。でも、もうすぐだ。皆にブルーを紹介して、外の風呂に入ろう。最近は外の風呂に入ってない。あれなら大きめだからゆっくりできる。
「さて。そろそろ行くか、ブルー」
「ショウチシマシタ。デスガ、ダイジョウブデスカ? カラダハモンダイナイ?」
「大丈夫だよ。お前が側にいてくれたから落ち着けた。ありがとう。戻ったら皆に紹介するね」
「アリガタキシアワセ」と翼をパタつかせた。
外に気配はない。
キューブを出れば、昨日のままだ。結界もしっかりある。
じゃあ、キューブをストレージに入れて、結界を解除した。大きな扉の前に立つ。
デカい扉だな、ここも。
やっぱりボス部屋だな。
「ブルー、お互い気をつけよう。あまり危険そうなら、結界に入ってもらうよ」
大きく頷くブルー。
じゃあ、と扉に触れるとゆっくりと開いて行く。中は真っ暗だ。
何がいるんだろうか。いつもみたいに魔法が使えないから、少し不安がある。でも、古竜に助けてもらって精一杯戦おう。それしか道はない。
中に入れば、灯りが点る。
何がいる? と視線を向ければ、黒いローブが見える。その隣りには杖か?
もしかして、リッチか? ボスなら皇帝クラスだろう。これはヤバいな。魔法と直接対決だよ、これは。
ゴゴゴーと入り口の扉が閉まった。
同時にバン! と灯りが点った。え? リッチの住処にしては明るすぎないか?
『お前がこのダンジョンに招かれたものか』
「ああ、そうらしい。なぜ呼ばれたのかはわからないけどね」
『ふむ。そなた、古竜ではないのか?』
「え? ああ、古竜神の加護はあるけど、俺は人間、だと思うよ」
『ふむ。そういうことか。だが、そなたからは古竜の臭いがするし、力も感じる。面白い。我にはそなたは古竜と写っておるぞ。それなりの力も使っておったであろう?』
「まあ、そうだな。魔法が使えなかったから仕方がないだろ。攻撃系は全て使えなかったんだよ」
『ふむ。それは話しが違うのう』
何言ってんの? どういうことだろう。
『我は、力を貸してくれと頼まれたのだ。ある冒険者を死に至らしめてほしいとな』
「それが俺? 誰だよ、そんなこと頼んだのは」
『国である。我は、別のダンジョンで最下層を守っておった。心地よいダンジョンを用意すると言われてやってきたのだ。だが、我は騙されたようである』
「どこの国? 俺だから? 普通、魔法が使えない状態で攻撃スキルも使えない。そんなところに放り込まれて生きていられると思う? それに、なんだよ、あの魔物の数は。全部で数万頭以上だぞ、もしかしたら十万頭を超えているかもしれない。それを一人でやれるはずない。俺を殺すためにここに呼んだんだろうな」
ふむ、とリッチが考えてるな。そして、驚いた顔をしている。
『なるほど、理解した。やはり我は騙された。我を騙したのは、ダルセニア王国。我は最下層のダンジョンにおったのだ。さて、どうするか。古竜殿の親族に対して、申し訳ない事をした。どう詫びれば良いのか』
「別にお前には関係ないだろ? 騙されただけ。でも、戻れなくなるけどいいか?」
『それは仕方あるまい。だが、このダンジョンは作り物であろう。我の居場所はない』
「それなら、未開のダンジョンを探す。どうだ?」
『それはありがたいのだが。そなたが探してくれるのか?』
「ああ。それは探すよ。少し待ってくれるか」
俺は世界眼でこの近くの未開のダンジョンを探すことにした。
今いるのはアスタリア国。
この国内では無理か。あ、隣の国にあるな。森と岩礁帯にまたがって未開のダンジョンがある。
「なあ、リッチ。ここが今、アスタリア国なんだけど、その隣りにコンストライド国がある。そこの森と岩礁帯にかけて未開のダンジョンがある。今現在の階層は四階層。そろそろ五階層ができるようだ。入り口は森ではなくて、今の所は岩礁帯にある。高さがあるので、誰も気づいていない。だからしばらくは静かだと思うぞ。どう?」
『ふむ。それはありがたい。魔物は多くないのか?』
「まあ、ハッキリ見たわけじゃないけど、魔物が増えつつあるってところだな。そのためにダンジョンの成長も早そうだ。最下層の主はいない。お前なら、問題なく王となるだろう」
『ありがたい。では、お前はどうするのだ?』
「当然戻るよ。仲間の待つ家に。でも、その後は、ダルセニア王国のダンジョンを全て攻略する。ダンジョンの核を全て回収するつもりだ。それも、おおっぴらにな。ギルドにそう宣言して潜る。そうなると、ダンジョンは終わるだろ? しばらくは時間がかかるだろうけど」
『なるほどな。ならば、経済的には立ちゆくまい。ダンジョンを早く終わらせるならば、核を回収した後、祭壇を破壊すれば良い。魔物がスタンピードを起こすかも知れぬが、それは国のこと故、騎士団が対処するであろう。それならば、一週間ほどでダンジョンは終わる。最終的には崩壊して塞がるのだ』
それは面白いな。
じゃあ、俺にケンカを売った責任は取ってもらおうか。当然、魔物も殲滅してドロップアイテムは回収するし、ボスのところでも、全て回収する。ふん、それがいいだろう。
「じゃあ、そうするよ。でも、何で俺を? 理解できないんだが」
『我が聞いたのは、国にとっての脅威となると。まあ、それは否定できぬほどの実力であるが。ならば、我の報酬を受け取るのだ。ここにあるぞ』
なるほどな。見せてもらったけど、けっこうなお宝だな。何もしてないけどいいのか? と問えば、問題ないらしい。自分は新しいダンジョンに行くそうだ。俺の脳内マップで確認したといった。え? 怖いんだけど。
それと、報酬の中にはないものをとリッチが懐から取り出したもの。それはデカい宝珠のようだ。
『これは、いつでもどこでも、我と連絡が取れるもの。ダンジョンから長時間は動けぬが、様々なものを探索したり評価鑑定したりすることができる。問い合わせがあれば、助けよう。逆に、我も助けが必要なとき、そなたに連絡をしてよいか?』
「これ、いいのか? 助けが必要なときは問題なく連絡してくれ。あと、俺も頼ることがある。俺、ストレージに入れておくけど、どうなる?」
『それを持っておれば、念話が通じる。天界であってもな』
「へえ、すごいな。わかった、じゃあもらうよ」
金色の宝珠をストレージに入れた。その後、報酬を一気にストレージへ入れる。ダンジョンコアは本物らしいので、持ち帰ることにした。どうやら、このダンジョンは別空間らしいので、問題ないって。じゃあ、先に行くぞ、とリッチはひと足先に消えた。
俺たちも転移陣の上に乗り、転移した。
ええと、ここ、どこだ?
転移した先は、俺がここに送り込まれた場所だ。でも、トラップはないぞ?
『古竜の息子よ。我は、新しいダンジョンに到着した。なかなか具合がよい。既に最下層を住処にした。そなたは?』
「今、もとのダンジョンに戻ったよ。無事に到着して良かった。じゃあ、俺も家に戻るな」
『うむ。そなたの活躍は見せてもらおう』
ああ、と答えて念話が切れた。
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【あとがき】
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