第88話 バカコウモリが罠のスイッチを踏んだから、穴に落ちちゃっただろ!
ぶわっと光った猫獣人。
身体中の怪我が癒えてゆく。そして、特に光に包まれているのが両足だ。
数分後、なんとかなったようだな。
「ん? え、えと。あなた、は?」
「俺はタケル。お前の仲間は助けられなかった。俺が来たときには絶命してたんだ。だが、お前は弱くはあったが脈もあった。だから助かったんだ。これ、残りを飲んでおけ」
はい、と瓶を見つめたが、何かわからないらしい。それでも、ゴクゴクと飲み干した。
もう大丈夫だろう。
「あ、あの。助けていただいてありがとうございます。ルストは優秀な冒険者でした。残念です。あの、あなたはおひとりですか?」
「いや、仲間がいる。で、お前脚は大丈夫か?」
脚?
それを見てかなり驚いてるんだが。
「脚は、確かあいつに……」
「そう。すっぱり切られてた。でも、何とか治ってるみたいだな」
「ええ? あの、キラキラ光ってたのは……もしや、エリクサーでは!?」
「ああ、そうだぞ。よかったな、脚が治って」
キョトンとしてる猫獣人だが、どうした?
「誠にありがとうございます。私のようなものにエリクサーなど使っていただき、感謝しかございません! で、ですが。お代を払うほどのお金はありませんが、どうすればよろしいでしょか。できるなら、この身体でお支払いを……」
「おいおい、ちょっと待て。ダンジョンで手に入れたものを俺が使った。俺が勝手にしたことだし、お前に何かを要求することはない」
「そ、そんな。それではどうすれば?」
だから対価はいらないと告げた。
『主。どちらですか。フィールド内は全て狩りました』
『ああ、俺の魔力を追ってくれ。で、他のみんなは、階段手前の安全エリアで待つ様に。何か口に入れた方がいいぞ』
『承知しました。では、フィーリアとニジが向かうと言いますので、我らは指定の場所に入ります』
ああ、と答えた時、バサリと翼の音が聞こえる。
『あるじぃ~』
『おう、ニジか。フィーリアもいるか?』
『うん、いっしょらよ~』
『じゃあ、ニジは俺の鞄に、フィーリアには一人乗せてほしい』
『わかっちゃ~』
そう聞こえた時、二人の姿が見えた。
ニジは俺の鞄に飛び込み、俺は猫獣人の腕を引いてゆっくり立たせた。フィーリアが伏せの状態で待ってくれてるから。
「この子の背に乗れ。俺の眷属だ、心配するな」
はい、とゆっくりとフィーリアに乗った。
「お客様。私の毛をしっかりつかんでくださいね。主は?」
「先にいって。亡くなった冒険者のカードを回収してから向かう」
承知、とゆっくりと空に上がったフィーリアはそのまま飛んでいった。
亡くなった冒険者の冒険者カードと小さな魔法袋を手にして俺も空に上がる。ニジは楽しそうだね。
「お帰りなさい、タケル様」
バウとパトリオットがいう。眷属たちも、それぞれお帰りなさいと迎えてくれた。
「少し腹が減った。皆、食ってるか?」
はい、と見れば、テーブルの上に、猫獣人の分があった。
「どうした、食え。血がたくさん流れたんだ、しっかり食わないとな」
「あの。さきほどの続きなのですが……」
「ああ、あれか。まあ、別にいいけど、とりあえず名前は?」
「し、失礼しました。私は猫人族のリカといいます。まだ十六歳の若輩ですが、斥候としてダンジョンに潜っていました」
なるほどな。
でも、珍しいな、この子の種類。顔は人と同じような感じ、長い髪の毛に生えてる耳は外側にカールしてる。確か、アメリカンカールという種類にいたように思うけど。
「リカか。俺はタケル。そっちは冒険者のバウ、そっちはパトリオットだ。俺の眷属は聞いたか?」
「はい。みなさん素晴らしいですね。私は母が人族なのですが、ありがたいことに、父と同じように戦うことができます。なので、冒険者になったのですが……」
「ふうん。で、どうするんだ、このまま戻るか?」
「……で、できましたら、同行させていただけないでしょうか! 大剣を振ることはできませんが、斥候としてお役に立てると思います。罠を見破る能力、解除能力が人より優れているので、パーティーに入れてもらったので」
なるほどな。ちょっと見てみるかな。当然、魔眼を発動する。
ふむ。なかなかレベルは高いな。斥候としてはかなり優秀らしい。あれ? この子、なんで冒険者なんてやってるんだ? 獣人国の貴族の娘だな。三女か。うーん、疑問だけど、何かあって実家を出て来たって事か。まあ、それは別にいいけどな。
人物的には全く問題ないね。
いろんな戦闘スキルがあるけど、それ以外なら料理スキルがあること。ラスほどではないけれど、そこそこ料理できるだろう。それに料理好きってあるからこれはいいな。
心配そうな視線が向けられるんだけど。それはメンバーからも同じだな。
「皆はどう思う? 斥候としての能力はかなり高そうだ。それに短剣術もランクが高い。仕事はできそうだし料理スキルもラスほどじゃないけど、料理が好きだそうだ」
「斥候としての能力は高いんですね。人物像は?」
「それは全く問題ない。まあ、見ての通りだ。嘘はつけないらしい」
それならいい、と全員が大きく頷いた。
「うちの連中の承諾も得た。それなら一緒に行こう。進む間に本格的に仲間になるか、決めればいい」
「ありがとうございます!」とかなり嬉しそうだね。
安堵したのだろう、ムシャムシャと食べ始めた。もう、笑うしかない、おもしろいな。
じゃあ、その先に行こうかと立ち上がる。
十三層に降り立った俺たちは、嫌な雰囲気を身体で感じていた。そう、ここからは大草原ではなく、石を積み上げたような壁と天井の中を進む事になりそうだ。
申し合わせたような成り行きで、一番前をリカが進む。少し離れて待つ俺たちは、リカが周りを調べて罠を見つけている姿に感心する。それをさらりと解除する姿はかっこよくて、素晴らしい腕前だと感心する。
これは、獣人だからというのもあるんだろうか。耳はあちらこちらを確認するかのように動いてる。
あの耳、撫でたい……
前世では、猫も犬も飼えなかった。子供の頃から一人だったし、動物の世話などできるはずない。だって、自分の食べるものだってコンビニやスーパーの惣菜やレトルトだったから。
今考えると、犬や猫はフードがあるから問題なかったかもしれないけれど、居合道の鍛錬と学校で、寂しい思いをさせていただろうし、散歩にも連れて行かれない状態だったろう。
猫でも犬でもいてくれれば、むなしさも減っていたかもしれない。
ただ、途中で魔物が出てきたときが大変だった。罠もある場所での戦いはとってもややこしい。リカがチェックした場所以外でも戦いはある。
その最悪な事態が十五階層で起きてしまった。
全員が魔物相手に戦っている。最前ではバウとパトリオット、そして少し後ろにリカとアレックスが。
それを援護しようとしていた俺たちの所にも、飛んできた魔物がいる。ドラキュラの僕である、デカいコウモリたち。
フィーリアとその背に乗っていたニジはコウモリの前に、俺は後ろになってしまった。
ヤバいな、と心配したのは、フィーリアとニジ。
だが、全く気にしていない二人は、魔法を打ちまくってる。アレックスたちは、少し前に移動していた。
ちぃっ! もう少しでこの階も攻略だと思ったのに!
俺に向かってやってきたコウモリは、翼を広げて立ち塞がる。面倒だと魔法を使って凍らせようと思ったとき、カチッと音が聞こえた。
え? もしかして罠か?
足下を見たら、コウモリが床にある罠のスイッチを踏んでいた。本当にバカコウモリが!
床が開いて俺とコウモリが真っ暗な中に落ちてゆく。
「主ーーー!」
皆の声が聞こえたが、眷属たちに念話する。
『大丈夫だ。魔法でゆっくり降りてるから。灯りもつけたし、心配ない。魔物は先に落ちて串刺しになった。ここをクリアして安全エリアへ向かえ。俺もすぐに行く』
すぐに理解してくれた眷属たちがバウたちに話しを伝えて先へ進んだようだ。床は既に閉じてるからな。
さて。床を平らにしようか。
とげとげを取るのは面倒なので、土魔法で塞ぐか。
<土魔法>
あ、ここ、石造りだったのに使えるんだな。おっけ、なんとか降りられる。
『主、私たちは安全エリアに入ったよ。そっちはどう?』
『うん、やっと床を平らにしたとこ。もし、時間がかかりそうなら、空間に戻っててくれ。すぐに追いつく。どうやら転移が使えないらしいから、出口を探す。数日かかりそうなら、リカにも個室を。あと、俺がいなくてもズルするなよ。ちゃんと訓練するなり、魔物を狩りに出るなり、それぞれに合ったことをやれ』
『わかった。じゃあ、主もまた連絡してね。待ってるから』
『わかった。食事も持ってるから気にせずしっかり食ってしっかり動けよ。あと、ラスにも伝えてくれ。それで……』
『……主? どうしたのだ、声が聞こえない』
『ちょ、なんだ、これ。俺、別のエリアに……とばされ、るかも、じか、ん、かかり、そ、から、ふだん……どおり……ぞ』
『主! 主! どうしたのだ、主!』
どうした、とハクの周りに皆が集まってきた。
主と連絡が取れないといったハクに、皆が不安そうになる。
疑問ばかりが湧き上がる皆は、意気消沈して空間に戻った。
『シツレイシマス、ゴシュジンサマヨリ、テガミガキテイマス』
なんだと?!
セバスの胸にあるタブレットには緊急の時にと設置していたモニターがある。そこに手紙が届いたらしい。
『皆、心配かけてると思う。どうやら俺は裏ダンジョンに引き込まれたようだ。ここは扉の前だから、もしかしたら通じるかもと連絡してみた。
どうやら、ここでは魔法が使えないらしい。だが、スキルは使えそうだ。確認したところ、全てのスキルが使えるとも言い切れない。ストレージは使えるからメシは食える。どんな魔物がいるか、わからないが、中に入れば通信はできないだろう。大扉に書いてあるのは、全ての魔物をクリアしないともとのダンジョンには戻れないと書いてある。だから、少し時間はかかるかもしれない。ただ、必ず戻る。だから、うろたえることなく日々過ごしてくれ。バウとパトリオット、リカは討伐に出てもいいが、ダンジョンはダメだ。討伐に行くならハクとアレックスと一緒にな。ニジとフィーリアは、ラスの買い物の護衛を頼む。それぞれ、俺のことは知らぬ体で動いてくれ。じゃあ、戦いに行ってくる!』
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【あとがき】
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