第82話 バウとナナの違いが明らかになった
やっと駆け込んで来たナナだが、泣きそうな顔してる。
「すみません。本当にごめんなさい」
「もういい。お前、親元で毎日起こしてもらって学校行ってただろ。朝も用意してもらった食事を食べて、夕食も好きなものを作ってもらって。欲しいものはいろいろ買ってもらって、行きたい所には家族で遊びに行く。違うか? 典型的な日本の親子だったんだろ?」
「な、なんで知ってるんですか? ご主人様はちがったんですか?」
「お前見てたら、わかる。甘やかされて、いろいろやってもらって当然の生活。緊迫感がない。奴隷なら、少しでも頑張って認めてもらおうとするはず。俺に危害を加えないから戒めはないが、想像以上の堕落だな。次に行く国で、冒険者として薬草採取からやればいい。いろんな先輩もいるだろうから、教わってもいい。自立できるようにしないとな」
「え? でも、私は二十年奴隷でいなくちゃ、なので……」
「そうだな。逆に、奴隷でいればどこでも同じだ。街で冒険者をしようが、奴隷商にいようがな。忘れるなよ、俺は奴隷のお前が欲しくて買った訳じゃない。同郷だからと哀れに思ったからだ。恩を売るつもりはないが、奴隷に落ちているのなら、温かい食事に感謝して、調理の手伝いや、セバスの手伝いくらいするかと思ってた。パトリオットに訓練つけてもらうのだって、本来なら金がいる。あいつはSSランク冒険者だったからな。それでも俺の頼みを聞いてくれた。だから食事くらいはと思ってたんだ。お前が同じ思いでいるのはおかしい。もう少し常識を知ってるかと思ったが、やっぱり日本のバカガキだったな」
そう言い放った。
「うっ! そ、その通りだと、おもいます。本当にごめんなさい。明日からは、薬草採取を頑張ります!」
「まあ、現実がわかるからやってみろ」
部屋はセバスが案内してくれた。
はぁ、とため息を付けば、ニジが心配してくれる。
「あるじぃ~、らいじょび? げんち、らしちぇ~」
「ありがと、ニジ。大丈夫だよ。ただ、俺の眼鏡違いだったということだ。俺の責任だよ。さて、パトリオットと話すか」
う~ん、と頭の上でフルフルしてる。
そうだ、ニジに本を渡さないとな。
「パトリオット、これからのことだが」
「はい。各国から、いろいろとオファーがあります。ですが、詳しく検討した方がいいかと思う国がおおいですね。ですから、もし、これからも依頼を受けてもいいとお考えでしたら、一緒に該当の国をみに行ってもらいたいんです」
「なるほどな。それで文官を一度返すということか。どこに返すんだ?」
「世界ギルド協会の本部です。ここからは少し距離がありますので、ユーラスト国のダンジョン都市の冒険者ギルドで待つことになりました。そこまで迎えがきますので」
なるほどな。それなら、先に行くか?
「で、パトリオットはどうするんだ?」
「あの。厚かましいのですが、できれば私は共に行かせてもらいたいです」
「なるほどな。まあ、お前ひとりならいいぞ。どのみち、お前が交渉役になるんだから」
「ありがとうございます! では、明日、何時に? ええと、どちらに?」
あははは~
面白いな、こいつも。ガキみたいに喜びが前に出てる。
「じゃあ、明日の朝九時にダンジョン都市に向かう。そこで文官たちを下ろして、ボルック国ヘ向かい、あとはその時だな」
そう伝えた。
では、宿に戻って荷物の準備をして、明日、九時に馬場に来ます、馬車も用意しておきますので、と帰っていった。
はあ、疲れたな。
でも、もうひと仕事だ。
外にでてみれば、それぞれが片付けをしているようだ。
「ハク、アレックス。テントの中を片付ける。ナナも片付けろ、引っ越しだ!」
はい、と声が聞こえた。
俺たちのテントに入れば、アレックスが座布団を引きずっている。テントから出て、そこそこの大きさになって運んでいった。そうか、座布団くらいしかなかったか。本も読まんしなぁ。ハクはマットを持って行きたいらしい。それなら、運んでやるといえば、喜んでいた。
ニジは荷物をアイテムボックスに入れるというので、さきにハクのマットと布団を持って移動する。
入り口は横からになるんだが、小さくなれば、玄関からも出られるから。
マットを置いてみたが、全く足りないので、枚数分コピーした。ベッドは? と問えば、あった方がいいか、と考えてるな。とりあえず、ベッドを出して拡大した。
これがいいな、というので、寝てみろといえば、充分寝返りできるほどのサイズだった。
そりゃそうだ、二倍になったんだし。
高さは低めだから大丈夫だろう。ベッドの下のマットは無しにした。端っこに置いておくか、とならべてみた。これはこれでいいかもと思ったら、やっぱりマットはいらないらしい。逆に起き上がる時に使いにくいって。じゃあ、全てを外して、浄化して洗濯竿に引っかける。綺麗にはなったけど、風を通しておこう。
準備ができたらしいニジを連れて、俺の寝室に向かう。
ニジのテントは、開いたままでベッドの横にある低い棚の上に置いた。床から一メートルくらいなので、ベッドに上がればそのままジャンプして上がれる。ニジは大喜びだね。
棚の反対側には本が並ぶので、そこに大切そうに本をならべてる。魔法の本も冒険譚も絵本も。とても楽しそうだね。
「そうだ、ニジ。本を手に入れたんだよ、魔導書。見てみる?」
「みりゅ~!」
「はいはい。ええとね、これとこれと……火、水、風、氷、土だな。二冊ずつあるけど、一冊ずつ、全部読む?」
「こり、じょ、きゅうらよ~こっち、ちゅうきゅ~」
そういうことか。
初級は大丈夫だろうし、どうするかな。
好きな魔法を選んでいいよといえば、風魔法と土魔法がいいらしい。水は使えるし、火は怖いって。まあ、身体が小さいからね。
「じゃあ、水魔法、風魔法と土魔法の中級上級だね」
「あ~い!」
「ふふふ。これでいろいろできるね。風の弾丸って強そうだし、体も乾かせるし、水もいろいろ使えるよ。土は庭を造ったり壁もできるしね。ニジは最強のスライムになるよ」
「うふふ~がんばり~!」
「じゃあ、俺もコピーを取っておこう。コピー! はい、原本はニジが使っていいからね」
「あいやちょ~」
嬉しそうに本棚に入れた。読んでていいよといえば、嬉しそうに水魔法の中級を取り出した。かなりの重さのはずだけど、ふるふる震えるお手々で魔導書を目の前に置いた。
俺には雷魔法の『奥伝』がある。で、空間魔法を試してみたい。時間がとれればいいけど。
結局、ニジは夕食まで本を読んでた。
おもちゃは棚の上に飾って、ぬいぐるみはベッドの上に。部屋が明るくなったよ。
フィーリアは自分の部屋でくつろいだあと、ニジの邪魔はできないから、と庭のデザインを考えるといって、庭を歩き始めた。
さて、次だけど。
夕食の後、ストレージの中を確認してるんだが。そうだ、バウに剣を持たせようか。あまり良くないものだったし。
「バウ!」
そう呼べば、駆けて来た。
服はそこそこ似合ってるな。
「お前、剣は?」
持って来ます、と部屋に取りに行ったようだ。すぐに戻って来たけど、これはなんとも言えないぞ。
「これじゃいざというとき命を落とす。長剣でいいんだろ? いくつか出すから、見てみろ。使いやすいのを使え」
いいんですかというので、大丈夫だとバウの身体を見て、鑑定しながら出してみた。
その数七本。
バウは淡々とそれぞれを引き抜き、ゆがみを確認して振った感じも確かめているんだが……どんな結果が出るかな。
「え、ええと。これ、すごくいいものばかりですが」
「そうだ、いいものを出した。それぞれ確認しろ。使いやすいやつを二本選べ、メインの剣が一本と予備が一本だ」
「う、うれしいですが。俺はまだメンバーになって時間が短すぎます。それなのに……」
「いい。お前のことは魔眼で確認してる。いいから選べ。それと、この指輪はアイテムボックスで容量制限無。時間停止型だ。ブレスレットの方がいいか?」
「へ? は、あの。いえ、なんでも、いいです。けど……良いのですか、主。裏切るかもしれませんよ?」
「大丈夫だ。お前は裏切らない。正直だし忠実だ。困ったことがあれば助けを求めるだろうし、できることはしっかり助けてくれると思う。俺のパーティーメンバーなんだぞ。そうじゃなければ、メンバーには入れない」
「……ぐすっ。本当に感謝いたします。かならずお役に立って見せます。ご恩返しさせてください」
「あはは、そんなに気負うな。もし、お前が裏切ったら俺の眼鏡違いということだ。だが、ハッキリ申し開きはしてもらう、つまり、どこに逃げても無駄ということだ」
「はい! もちろんです。ですが、主。私はしばらくソロで依頼を受けたいと思っています。よろしいですか?」
「ああ、別にいい。俺がメンバーといったのは、魔物狩りのメンバーじゃない。それほど普段、狩りには行けないんだよ俺は。一人で行くのは問題ないぞ。アイテムボックスがあれば、素材も持ち帰れるだろ? 肉だってなんだってな。朝出発する時間だけ前日早めにな。昼の弁当をと思ってるから、言え。特別扱いはしないが、期待してる。うちは、皆に弁当は渡す主義だ」
「ありがたい!」と大げさなほど感激してるんだが。
ただ、こそっと話をしてきた。ナナのことだ。面倒見なくていいのかと問うので、必要ないと伝える。なまじ情けをかけると、お前が食われるからダメだ、と伝えれば理解できたようだ。
間違いなく、誰かぶら下がる相手を見つけてくる。その相手は、十中八九、俺に奴隷の権利を譲れと言ってくる。その時は、どうぞと渡すつもりだ。ただ、俺の目の前で奴隷商に行き、奴隷の契約を移動してもらう。その費用だけで渡すつもりだと伝えた。
「なぜ無料で?」と問うので、手に入れた経緯を話した。最初はアイテムボックスも持たせたり武器もいいものを持たせてた。でも、どうやら、それが当然だと思ってたらしい。そのあたりから、見ていたが、結局、今日も一日寝てた。昨日のうちに武器やアイテムボックスは取り上げてた。でも、食うに困る生活をしたことがないからだろうな、気にしてなかったと伝えると、かなり驚いてた。
だから、声をかけるなと伝えれば、そんなのにぶら下がられると大変だから「絶対にしない!」といってた。「ギルドで誰が声をかけてても知らぬ顔でいます」とハッキリ言い切った。男ならそう考えるだろう。下手をすれば、一生を棒に振るから。
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【あとがき】
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