第81話 魔道具で家を新築しました!
セバスにいって、キッチンや食器棚、冷蔵庫などを移動するから、と一度全てをストレージに入れる。そして周りを見回して、奥行きの六割が残るくらいで、魔道具を置いてみた。
全員が興味深く見守る中、魔力を通す。どれくらい通せばいいのかな、とゆっくりと魔力を送り込めば、ウィーンと音がして箱が盛り上がったので、後ろに下がった。パタリパタリと展開図をつくるように箱が開いてゆく。それもサイズアップしながら。なんだよ、これ!
すごい、と声が聞こえるが、実際俺もすごいと思う。
ゴオンゴオンと小さく唸りながら、家ができあがってゆく。ニジはポカンと口を開けたまま俺の頭に乗っかってる。わかる気がするよ、ニジ。全員が同じ表情だったのが面白かったけどな。
「おうち、れきちゃ~?」
「ああ、お家だぞ。皆が住む建物がお家っていうんだ」
「ふう~ん、あり、あるじぃ~のおうちぃ?」
「そう、皆のお家だな。俺たちの家だ」
場所はどうだろうか。
裏に回ってみても問題ないな。
じゃあ、この場所でいいか? 結構いい感じだな。新築ならではの木の香りがあるし、キッチンはピカピカだし、これがマジックアイテムで再現できるのはすごいな。
「なあ、この辺りでいいか? 裏も結構広いぞ」
ドタドタと皆が裏に向かった。なんでパトリオットもいってるんだ?
「主、これは素晴らしいね。どう使うかが問題だね」と言ったのはハク。「これ、すごいですね、俺、気に入りました!」嬉しそうなアレックス。「タケル様。本当に素晴らしいです。二階はないのですね?」そんなことを問うバウ。みんなそれぞれの感想を呟いてる。
「平屋にした。上がり降りも大変だし、ニジがまだ小さい。ハクやアレックス、クロノスも上がり降りしにくいしな」
「なるほど。ですが、かなりの大きさですね」
「まあな。あと、誰がどの部屋にするか、だけど。セバス、キッチンを確認して」
中に入れば、リビングがバカでかい。これ、大事だぞ。
ゴシュジンサマ、と聞こえて中央に位置するキッチンに向かえば、魔道具付きのキッチン、冷蔵庫、冷凍庫がある。当然キッチンにはオーブンも二つあり、調理台もデカい。食器棚もあるけど、どうやら、セバスには少し高すぎるな。じゃあ、何か作るか。いや、待て。鑑定して見よう。
ふむ。どうやら最新式らしい。じゃあ、入れ替えるのはもったいない。それなら、キッチンや調理台、冷蔵庫、冷凍庫食器棚なんかを少し高さだけ下げようか。全体的に小さくなると使いにくいからな。
とりあえずやってみるか。
キッチン、調理台、冷蔵庫、冷凍庫、食器棚、作業棚などの高さだけ下げたい。いまより十五センチ下げる。それに伴い、収納が減るのは仕方がない。上下水の設備は高さの変化に伴って調整する。
<伸縮自在>
ぶわっとキッチン全体が光った。
すぐに収まったのだが、驚いているのはセバスだ。
光が落ち着けば、キッチンの前に立ったり、冷蔵庫を開けたりしてるな。どうなんだろうか。
中を確認すれば、冷蔵庫の中棚はちゃんと調整されてる。冷凍庫も同じ。キッチン下も確認したが、問題なさそうだ。排水は魔道具がついてるみたいだけど、これはどこにいくんだろう。
配水管を可視化すれば、裏になにやらあるようだ。裏に回れば、排水処理の魔道具があった。横から出てくるゴミが流れたら堆肥になるのか。なるほどな。あと、給水は?
排水の隣りにデカいタンクがある。上の蓋を開けてみれば、水が湧き出てるけど? あ、これ。ハクが飲んでる水のマジックアイテムと同じ原理か。すごいな、これは。かなりの速さで水が湧き出てる。人数が多いから、このタンク自体がもう少し大きくなればいいのに。
魔道具はそのままでタンクだけ横に倍のサイズにする。
<伸縮自在>
ピカッと一瞬光った後には、タンクの幅が倍になってた。蓋を開ければ、魔道具の位置は同じ、給水管も同じ場所にある。そしてどんどん水が増えてるぞ。すばらしいな、これ。排水するコックは一つだけど、蓋を開けなければ、大丈夫だろう。とりあえず、軽くロックしておこう。
じゃあ、部屋を確認していこうか。
キッチンの隣りには、食器棚の裏側に侍従の部屋だろうか、二つある。
「セバス、ここはお前の部屋だぞ。二つあるから、好きな方を選べ。後々、侍従が増えたら反対の部屋だな」
『アリガトウゴザイマス、ゴシュジンサマ!』
嬉しそうに見えるんだけど、面白いな。
ベッドもあるし、デスクもある。小さな椅子もあるな。なるほど、これはいい。
「ハクは、あっちの厩舎を使うか。かなり広いぞ。内装は後で直すから」
「いいの主。かなり広いよ?」
「問題ない。これをみた時から考えてたことだからな」
ありがとう、と顔を寄せてくれる。
「次は、アレックス、どの部屋がいい? あとクロノスの部屋も必要だな。デカいやつらの部屋だが、二つの部屋を一緒にするか」
「それはありがたいです。では、クロノス様の部屋はどこにしましょうか」
「そうだな、じゃあ、アレックスとハクは近くにするか
?」
いい考えですね、とドンドラスが呟いた。
アレックスは、ハクと一緒に見ていたが、これなら、ハクの部屋より少し狭いくらいか。日本で言えば八畳が二つ分、プラスクローゼットかな。
厩舎に出る引き戸に、近いふた部屋に決める。
「主。これならベッドさえ大きければ、ゆったりと寝られると思います」
「わかった。じゃあ、やってみるよ」
ここのふた部屋を合体してひと部屋にしたい。クローゼットは左側だけでいい。家具は後ほど。部屋だけ狂いのないように。ドアは倍の幅の引き戸で、高さは二メートル五十以上で仕上げる。窓はそのままでいい。
<伸縮自在>
ぶわっと光った部屋。廊下まで明るいな。
このまま置いておこうと、触らないようにいって、次に向かう。ハクたちは風呂をどうする? といえば、今の風呂プールがいいらしい。まあ、そうだろうね。
じゃあ、次にあるのは風呂だから、中を確認すれば、まるっきり洋風のトイレと風呂、洗面がひと部屋にあった。
その隣りには、ひと部屋ある。まあ、普通の八畳くらいだな。その次も同じ部屋。六部屋あるな。その隣が俺の寝室だ。じゃあ、その間にドンドラスとバウの部屋を取ろう。あと、ドンドラスの希望で、ふた部屋を一緒にして、俺の執務室を作ってくれと言われた。
まあ、俺は使わないけど事務処理をする部屋は必要だな。
それなら、一番奥のふた部屋を執務室として合体した。本棚をつけてあとは普通の部屋だな。途中にドアがあったが、そこは勝手口だった。
そこに続く四部屋は普通の部屋のままだ。ドンドラス、バウ、フィーリアの部屋になる。予備がひと部屋。
そこでアレックスの部屋を確認する。
おお、中々いいじゃないか。
大喜びのアレックスだが、ベッドをつくるからと部屋から追い出した。充分出入りできる引き戸になってるようだ。
中にあった二つのベッドを合体する。枕や布団も二つを一つにした。あと、ベッドパッドもデカくなる。これ、デカすぎだろうよ、と独り言つ。
でも、窓が側にあって、景色もいい。これはいい感じだな。
ナナの部屋が必要だ。あとは、アレックスの部屋の前、廊下の部分が狭い。それなら、ひと部屋取るか?
元々、下働きの人間の部屋がふた部屋。広さは六畳半といったところか。ただ、横になってるんだよな、これが。
ふむ、と頭にひらめいた絵を形にすることにした。
リビング側からそれを見る。このふた部屋を、縦横を九十度回転した方向で。広さはで六畳半畳くらいの一部屋でいい。ベッドは廊下の窓に沿っておく。
<伸縮自在>
ベッドをひとつ、ストレージに入れて、机や椅子も片付けてから魔法を行使してみた。一瞬パッと光ったあと、しばらく続きそうだ。
しかし、この家は、つくづくすごいと思う。LDKを中心にぐるりと部屋で囲まれてるんだが、玄関を入れば応接室が大小あり、その奥には客間がならぶ。
キッチン周りには、セバスの部屋ともうひとつ侍従の部屋。これはデスクと椅子付きの七畳半くらいか。あと、ナナの部屋が六畳半。まあ、目安だけどね。実際はそれ以上の広さだと思う。
キッチンの正面にある家族の為のLDKは、広いし大食いが多い我が家には最適だな。
最後にできあがったのはクロノスの部屋とナナの部屋。セバスが外にでて行ったのはナナを呼ぶためだろう。
あいつ、日本では甘やかされてたんだろうな。もしかしたら、もたないかもしれないな、うちでは。
俺は甘やかさない。特に奴隷の立場だし、自立しないとこの世界じゃ生きていけない。もう、甘い世界には戻れないんだということを理解して、頑張らないと死が待ってるだけだ。それを自覚してほしいから厳しくする。
だけど、間違いなく、あいつは誰かに甘える。そういう相手を見つけて来るはずだ。なぜだかハッキリわかる。
みんなもあまり馴染もうとしてないし。本能だろうか。俺はどちらでもいい。今なら、そこそこ戦えるだろうし。ランクは中々上がらないだろうけど、とりあえず、薬草取りで辛抱できるかどうかだな。最初の試練だ、どう乗り越えるんだ、ナナ。
セバスが戻ってきたが、ナナがいない。
「セバス、ナナは?」
『スミマセン、オヤスミチュウデス』
はあ?!
これ、どうすればいいんだよ。
俺の顔を見て、電光石火の動きでバウが外にでた。おそらく察したんだろうな、俺の気持ちを。
「ナナ! 起きてこい! 部屋を用意してもらったんだ、確認しに来い! 自分の立場を考えろ、本当に!!」
慌ててる様子は見えるが、また寝てたんだな。
呆れるよ、本当に。奴隷の自覚も無しか。
「はあ、同郷だからと奴隷商を助けた礼としてもらったが、どういうことだよ、これ」
「これは酷すぎますね。これほどの奴隷は見たことがありません」
あはは、ドンドラスが苦笑してるよ。
「そうだ、お前。その名前は略したりできないのか? いいにくいんだよ、ドンドラス。あだ名はなかったのか」
「子供の頃はラスと呼ばれてました。よろしければ、ラスと呼んでいただければ」
「ラスか。呼びやすくていいな、じゃあ、今からラスと呼ぶ」
よろしくお願いします、と笑顔だ。
じゃあ、バウと相談して部屋を決めると奥に向かった。
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【あとがき】
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