第77話 タケルが見捨てた国は将来どうなるのか……
「それともうひとつ。この国の森にはドラゴンがいる。黒竜だ。そこへ行って話してきた。素晴らしいドラゴンだな、あいつは。その時に情けなさそうに頼まれたんだ。それはもう終わったけどな」
「な、何を頼まれたのだ、タケル!」
起きたのか? 寝てたのかと思ったぞ、陛下よ。
「森だよ。森がかなり大変な事になっているとな。以前は冒険者と樵が入って伐採してた。でも、今は皆、ダンジョンに潜る。当然樵は入れない。だから、中腹の木を間引きしてほしいって。俺もやり方は知らなかったけど、スキルでチェックして、昨日の午後から魔法を使った」
詳しく説明してやろうと、話すことにした。
最初は眷属が。国内で三カ所に木を集めるようにした。その木は眷属のストレージに入れた。夕方からは俺が全ての魔法を発動しなおした。眷属たちも、かなりの魔力持ちだが、もしもの事があるからな。今朝、いけば全て終わってた。全ての木材は当然眷属が回収した。
今朝、木を回収した後、ドラゴンの所にむかい、報告した。その時、ドラゴンからの話を伝える。
その場にいた皆が、ゴクリとつばを飲む。
「今回、俺たちが中腹の木は間引いた。森の入り口なら騎士団が護衛してでも樵が入れるはず。そして、今後の森をしっかり管理することを望む。もし、管理できない場合は、国を出る。以上だ」
おおおーと悲しそうな声が聞こえる。
「そ、それは黒竜様がおっしゃったのか?」
「そうだぞ。信じられないなら、場所は言えないが山頂に近い場所にいる。聞きに行けばいい」
「そ、それは依頼だったのか?」
「まあ、あいつは自分が持っているものを持ち帰れと行ったけど、受け取ってない。だって、俺にはあいつの気持ちがわかるから。今は風も通り日も差し込んで湿った地面が心地よかった。だから、魔物も獣も、キノコや薬草も生きてゆける。腐ってるかと思うほどの森だったしな」
そ、そんな……
「そ。それは、タケル殿が黒竜様と話して成したこと。国からの資金は……」
は? こいつは何を言ってるんだ?
「宰相、侯爵の話の意味がわからん。どういうことだ? 俺の理解で間違いないのか?」
「申し訳ございません。侯爵殿、ハッキリ申されよ」
「うっ。勝手にした約束だから、我が国が資金をだすことはできぬと言ったのだ!」
こいつ。俺を怒らせて楽しいのか?
「だあ~か~ら~。俺が金を出せと言ったか? 俺が言ったのは、黒竜からの伝言だけだ。元々、あいつが何かを渡す必要はない。国の仕事だろうよ。違うか? お前、なんで侯爵なんだよ、バカが。言わないでおこうと思ったが、余りに腹が立つから教えてやるよ。今朝、話に行ったとき、黒竜は俺の眷属になると言った。だが、俺は断った。当然、黒竜の方が高位だしな。だけど、それは通用しなかった。まあ、俺の眷属に古竜がいるが、その父親には世話になったらしい。その古竜が竜神になるために天に昇ったのを見送ったのは俺。そして我が子を預けたのも俺。ならば眷属にってな」
ひっ! と侯爵が後ろに下がる。
縮地で移動して、再び引きずり元の場所に立たせた。
「それで、名前をというから『クロノス』という名を付けた。俺の故郷で、時を司る者という意味だ。その瞬間、あいつは俺の眷属になった。だから、別にこの国にいなくてもいい。人型もとれるし、小さくもなれる。俺が一緒にと言えば一緒に来る。とりあえず、国の出方を見ると、努力をみたいと残ることになった。まあ、呼べばいつでも来るが。確認するか?」
こいつらビビってるな。
『クロノス、今、いいか?』
『おお、我が主、タケル。どうしたのだ?』
『ちょっと待て。今、この場にやつらに聞こえるようにする』
謁見の間に防音結界を張り、拡声魔法を使う。
『待たせた。あまりに腹が立ったから、お前が眷属になったと話したんだ』
『何があったのだ? 間違いなく魔物は討伐された。そして、我の望む木の間引きもしてくれた。それで何を望むのだ、国は』
『俺がお前が何か持って帰れといったが、断ったと話の中でいってたんだ。その後、お前の国に対する望みを伝えた。そうしたら、侯爵が俺とお前の約束だから、国からの金は出せないと言いやがった。信じられるか?』
『なさけないのう。少々の金など、いらぬと申した主の言葉を金の無心と捉えたか。国王はなんと?』
『何も? どうでもいいんじゃないか? だから、俺は、侯爵に対してきちんと始末をつける。領主の舘も塵にしてやる。俺とお前の思いを理解できないならば、いらんだろうよ。なあ、クロノス』
『よいのではないか? なんなら、我がブレスで焼き尽くす。それでもよいぞ、主』
『あはは、それもいいかもな。国王、それでいいな。ここでハッキリ言っておく、クロノスを迎えに来るとき以外、この国に何があろうが、どこに攻められようが、俺は絶対に来ない。パトリオット、それでいいな?』
「はい。当然でございましょう。私も世界ギルド協会にありのまま、報告いたしましょう。ご無理をお願いして申し訳ございませんでした」
「それでいいな、国王。宰相、侯爵の領地はどこだ」
「あ、あの。タケル殿。今しばらく、今しばらくお待ちいただけませんか?」
「なぜ待つ必要がある? ここの討伐を受けたのは、俺たち以外にはなせないと感じたからだ。だが、侯爵にはただ、悪意しか向けられていない。己が金の亡者だから、俺もと思ったんだろう。だがな、俺は金がほしいなら、別のことで稼ぐ。それ以上に金もある。こういうことはやりたくないのが本音だ。ダンジョンだって、嬉しいばかりじゃないぞ。全てのものの怨念が集まってできたものらしいぞ、この国のダンジョンは。だから、そのうち、大変な事になるとクロノスから聞いている。だが、俺には関係ない。さっさといえよ、宰相!」
あ、あの……。
意を決したように国王をみた宰相。そして国王は頷いた。
裏にいったのは、地図を持って来るためだろう。
『わるかったな、クロノス』
『いや、問題ない、タケル。しかし主がかかわらぬとなれば、我も当地に用はない。このような考えでは、金を得ることばかりで、森のことなど気にすることはないであろう。近しい魔物たちには話して、我も当地を離れようか。どうか、主』
『いいのか? しばらくは狭い所になるぞ。俺たちが移動する時に飛ぶくらいだし。まあ、お前は単独で行動できるけど、逆にウロウロしない方がいいんじゃないか?』
『まあ、気晴らしにはなるであろう。我らが移動するのはかなりの高度の場所。人などにどうにかできるものではない。我も各地に見知ったドラゴンがおるゆえ、会いに行っても良いのだ。とにかくしばらくは主に厄介になりたい。どうであるか?』
『問題ないよ、俺は。あとで話をするか? お前、転移は?』
『特殊個体であると申したとおり、転移は問題ない。主がそこを出る前に、呼んでくれれば、王宮の庭にでも参ろう』
『あはは、わかった。じゃあ、後で連絡する』
『では、我も宝を空間に片付けよう。少々時間はほしい。数体、話したいものがおる。天牛もその一体である。故に、後ほどな』
おう、と念話を切った。
「あ、あの。タケル殿。そういうつもりではなかったのだ。申し訳ない、何とか許してほしい。頼む! 何とか!」
無視した俺は戻って来た宰相と国王と話をする。
地図を見れば、さほどの距離はない。丁度王城の反対側の端だな。王都と直接繋がってる。ここならすぐだろうな。
「タケル、誠に申し訳ない。いろいろと面倒をかけてばかりである」
「まあ、これからは大変だぞ。天牛は空も飛ぶ。だから、気をつけろ。まあ、ドラゴンは自分でこの国を出るといった。それは仕方がない。国の繁栄も大変になると思うが、もったいないな。宰相は頭のいい男だ。相談すればいい。民は国が落ちぶれたら移動する。だから心配していない。民は利口だぞ、国と一緒に心中することはない。ただし、他国に気をつけろ。弱れば戦をと考える国もあるだろうしな」
無言のままの国王だ。
「タケル殿。誠に申し訳ございませんでした。ですが、私もこの国の生まれではございません。ですので、国の方針がこの身に会わなければ、職を辞するやもしれません。この先の国王陛下のお考え次第ですので」
はあ? こいつこの国の人間じゃないのか?
どうやら、国王がヘッドハンティングしたらしい。というか、国王の知り合いらしいけど。
それなら、職を辞するときには連絡しろと言っておいた。俺も、どこにいるかわからないけど、と通信用の水晶のデカいやつを渡した。これはお前個人のものだぞ。いいな、と国王に念を押す。
ただ、命の危険を感じたら、すぐに連絡しろといっておいた。国ごと消してやるといえば、宰相が微笑んだ。
とりあえず、残したい人間はいるかと国王と宰相に問えば、別に優秀なものの話は聞かないという。それならいいか。
侯爵は既に拘束されている。
だが、連絡を取るのはやめろと言っておいた。向こうに行ったら、領主の舘の使用人たちは外にでるように言うから。だが、領主の家族は同罪だと伝えておく。
その時、ドドドーン! と音がして建物が揺れた。
外を見れば、クロノスが降り立ったところだった。
『クロノス、少し待ってて』
『承知した』
王城内は大混乱だ。
剣を構えて震えているけどね。
「パトリオット、これ以上、この国に用があるか? 手数料は?」
「既に受け取っておりますので、宿に荷物を取りに戻るだけです」
ふむ、そうか。
『ハク、ちょっと来てくれるか。今、開ける』
空間を開くとハクが出てきた。
「悪いが、パトリオットたちを連れて、宿に転移してくれるか、ギルドの近くだから、馬場でいい。少し待っててくれ。そのあと、皆を空間に。俺は少し移動する。頼むぞ」
「わかった。主メシは?」
「食ってない、腹減ったなぁ」
「じゃあ、セバスに準備させるよ」
頼むね、といえばテラスに移動したパトリオットたちはハクにふれて転移して行った。
「じゃあ、宰相、国王。がんばれよ」
そう言って、俺は飛翔魔法でクロノスに乗る。
「待たせたクロノス。あ、しまった。俺も忘れものだ。冒険者ギルドの近くのドワーフの店に行かなくちゃだったぞ。どうにかなるか?」
『うむ。では、我は空で待っておる。ギルド上空でタケルを待つとしよう』
わかった、頼む。
そういえば、大きく広げた翼を羽ばたかせた。空高く上がり、ギルドへと飛び立った。
ギルド上空の高い所で旋回するクロノスの上から飛翔で降りてゆく。ドワーフの店の前に降り立ち、店に入った。
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【あとがき】
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