第72話 森の間伐とついでに盗賊討伐をやりましょう
会話をプツンと切ってしまった。
本音をいえば、少々腹が立ったからだ。魔物を始末したというのに、今、それよりも大切なことがあるのかよ。本当にバカにしてる。
じゃあ、午後から行くかな。
今日なら人も入ってないようだし。
「メシが終わったら、森に行って木を切るぞ!」
「応!」
それから俺たちは、森の中腹に結界を張り、降り立った。セバスは気持ち良く送り出してくれた。「ニジサマ、オキヲツケテ。オカエリニハ、オヤツヲ、ジュンビシテオキマス」の言葉にニジは嬉しそうに手を振って応えてた。
どれくらいまで木の印がついてるかな、
ええと、とりあえず全部終わってるな。
じゃあ、やってみるか。
とりあえず、木をならべる場所を作ろうか。
<氷刃>
シュンシュンシュン……
かなりの広さでカットできたかな。
木は自動的に俺のストレージに入った。
その後、ニジに魔法を見せてもらう。
「ニジ、頼むぞ」
「あい~」
無言のまま、触手を動かせば、本当に小さな渦が巻き起こり、赤いラインのついた木の根本にまとわりつく。そしてクルクル回った後、ゆっくり持ち上がった。バキバキと絡まってた枝が折れてるけど気にしない。
それは、そのまま俺の作った場所へと浮き上がり、静かに横たわる。
おう、すごい。これはすごいぞ。
「ニジ、すごいな。これほど細かい動きはなかなか難しいぞ」
えへへ、と照れてるので、頭を撫でてやる。
じゃあ、俺もやってみようか。
小さな風の刃で木を切る。木の太さに合わせて刃の大きさが決まる。木の直径の半分の深さまで切れる刃がいい。赤い印のついた木のみ対象。
くるりとまわった風の刃は、本当にトルネードみたいだ。そのままゆっくり持ち上がっているが、トルネードの刃はそのまま回っている。邪魔になるものはそれでカットされてるな。
そして、木を横たえた場所に向かい、ニジが置いた木の隣りに並んだ。
これはすごいぞ。
じゃあ、これを繰り返したいので、一連の動きを一つの魔法としてつくる。ウッドドルネードという名前の魔法を作成する。
<ウッドトルネード!>
シュンと出ていった風刃は、同じ用にクルクルまわり、そのままゆっくり持ち上がる。移動しながらも刃は回り続け、空白の地にゆっくりと横たわる。
すると、そのまま次の木へと移動する。
再び始まるウッドトルネード。
これはすごいな。
このままどれくらいの時間維持できるんだろうか。
これじゃあ、それほどの広さがないな。反対側も切るかな。
<ウッドトルネード>
シュンと風刃が出ていき、同じ用に動き始める。
そして、ギリギリの所を切った木は、そのまま横たわった。次はそこから一番近い場所を切り始める。
あれ? そういえば、あっちもそうだ。一番近いところから切ってるな。そして最短距離を移動してならべてる。これ、すごくないか?
俺の指定した以上の動きをするな。うん、すごい。
じゃあ、エリアは結界で中腹だけにするか。
いや、大丈夫だな。赤いラインの入った木だけだ。問題ないはず。
「これはしばらくこのままにする。もう少し西へ移動するぞ」
ハクの背に乗って、皆が移動する。
今木を切っている場所と辺境の端っこ、その中間辺りを再び切り取った。そこそこの広さに切れたので、そこに魔法を行使する。
「じゃあ、ハク。やってみて」
「挑戦してみるね。『ウッドトルネード!』すごい!ちゃんと主の作った大きさの風刃がでて行ったし、同じ動きだ! 素晴らしいよ!」
あはは、大喜びだね。
一本終われば、すぐ近くにあった別の赤いラインの木に魔法が移動した。ふむ。これはいいな。
「どれくらい魔力を使う? ひと晩でも大丈夫か?」
「多分大丈夫だと思うけど、一晩中魔法を動かすの?」
「そのつもり。だけど、明日が難しそうなら、俺が魔法を使う。それなら大丈夫だし」
「なるほど。今日やってみよう。もし、無理そうなら、夕方にでも交代を」
はいよ、と反対側にも同じ魔法を使うように頼んだ。
とりあえずスムーズに行きそうなので、移動することにした。今度はアレックスに頼む。
東の辺境と最初に手をつけたところの中間地点に降りたつ。ここでもやることは同じ。
最初に木を置く場所を作って、今度はアレックスに魔法を発動してもらう。
スムーズにできてるようで、安堵した。
アレックスに、中央からある程度たまったら木を回収してくれるように頼む。ハクは人目があるので、アレックスを乗せて飛んでもらうことにした。それぞれ、一本は残しておくようにと言っておく。何もないと、ならべる場所がわからなくなるかもしれないしね。
じゃあ、とさっそくハクの背に乗ったアレックスは飛び立った。
俺とニジは、街道の見回りだ。当然、空からね。
魔物の探索をする。木が次々と倒れていくので、Cランク以下の魔物は逃げまくってるな。でも、街に降りて行く様子はない。
そのうちになれてくるだろうけどね。とりあえず、下の方にも結界を張るか。
魔力を伸ばして、結界の壁を作る。辺境から辺境まで。端から端まで結界を張った。これ、盗賊も降りられないんじゃないか? あはは、面白いね。でも、下の方なら行っちゃうかもね。
そのあたりは、それぞれが護衛を雇っているだろうし、大丈夫だろう。
辺境門から空を進む。バッグの中のニジは楽しそうだ。もちろん、落ちると大変なので、バッグの蓋を開けて、前側に半円の結界を張ってある。それなら、半分出てても大丈夫だし。
空から確認すれば、オークの集落なども見えるね。
あと、盗賊のアジトもある。
あ、大きな馬車数台を馬ごと持って帰ったぞ。これ、どこから持って来た?
探索すれば、街道だな。だが、商人も護衛たちも全員命がなかった。
仕方がないので、盗賊団を探索する。
そこそこ大きいな。二十人と少しくらいか。
「あるじぃ~、ゆみ、いるよ~」
「ホントだな。じゃあ、ニジ頼めるか?」
「あい~」
ドシュッドシュッ!
おお、氷の弾丸だな。弓を構えてたやつが二人、木から落ちた。
「はあ? 敵襲、敵襲!」
「みつかっちゃったな。どうするよ、ニジ」
「やっちゃう~?」
「そうだな」
ニジが氷の弾丸を連射する。すごいな、これは。
じゃあ、俺は散弾にするか。
<氷散弾>
ドンドンドン!
あはは、まるでターミネーターだよ、この音は。
「それ、なに~?」
「これは散弾っていうんだ。一発が小さな沢山の弾丸に散らばる。たくさんやっつけるのにはいいぞ。ただ、狙わないと、馬車の荷物も穴だらけになる」
「しゅご~、にもちゅ、あにゃ、らめらね~」
「そうだな、穴があると、美味しいものも食べられないし、いいものも使えなくなるからな。そうだ、ニジの雷、見せてくれるか?」
「う~ん、わかっちゃ~」
短い触手を出したと思ったら、呟いた。『とうじょく、かみなりでこげき~』
あはは、可愛すぎる。
バリバリバリ!
おおお、ビックリした。
盗賊全員に雷が落ちたぞ。それぞれを狙うように雷が盗賊たちを突き刺して行く。
バリバリバリ!
おお、再度攻撃か。
これはすごいな。打たれたくないぞ、これは。
「あるじぃ~、もう、ない?」
待って、と探索すれば、もういないな。洞窟の中にもいない。
すごい、ちゃんと馬は避けてるな。
「馬は雷落ちてないんだな」
「う~ん、うま、かわいしょうらし~」
「そうか、ニジはやさしいね。じゃあ、おりようか」
う~ん、というのでゆっくりと降りてゆく。
とりあえず、馬車の荷物は大丈夫か?
かなりいい馬車だけど、幌がついた馬車だな。
これごと空間に入れるか?
「ニジ、とりあえず、別の空間を作って馬車と馬を入れようか」
「う~ん、そのほが、いいよ~」
「だよな、魔物もいるし。じゃあ、とりあえず空間を作ろう!」
新しい空間を作る。広さは俺の空間の半分くらい。高さは同じで。地面は芝生。空気の循環も温度や湿度も同じ。あかりはオンオフができる方がいい。
空間の番号は二番。
<空間作成>
一瞬だけふわっと光った。
じゃあ、オープン!
ゆっくり開いてゆく空間は、同じ引き戸だな。これなら大丈夫だろう。
ライト、オン! と言えば灯りが点った。
じゃあとまわりに結界を張り、馬を引いて馬車ごと中に入った。
ゆっくりと馬車を入れる。三台あるから、かなりの荷物だな。
それはいいとして、空間を閉めてから馬を馬車から外してやった。
しまった、水の魔道具、コピーしとけばよかったな。
でも、何かないかな。
あ、バスタブがあるぞ。
とりあえず、バスタブを出して浄化する。
「ニジ。これに水を入れてやってくれるか。飼い葉はあるかな。いや、ないなぁ。まあ、しばらくいいか。アジトにあるかもしれないし」
「わかっちゃ~」
結界を解除してやれば、ニジが飛び降りて水を入れてくれている。馬たちは、それをちゃんと待ってるぞ。えらいなぁ。まだ若い馬たちだから、これから働ける。よかったよ、殺されなくて。
終わったというので、しゃがめばぴょんとバッグに入った。
「お前たち、ここで少し待っててくれ。災難だったが、もう大丈夫だぞ水飲んでいいからな。飼い葉は探してくるから」
ぶひひひ~と返事をしているように聞こえるな。
空間二番から出て、辺りを探索する。
まだ、魔物は来てないな。
だが、盗賊の死体に寄ってきそうなので、死体を魔法で集めて、森の中にポイした。
ニジと一緒に洞窟に入って行く。
ふうん、あんまり楽しそうなものはないなぁ。
ニジはピョンピョンと先に行く。そして、小さなドアの前で止まった。
なにかいるのか?
「あるじぃ~、ここ、あけちぇ~」
ん? なんだ、何がある?
ドアを開ければ、檻が数個置いてある。その一番奥にある檻には何かがいる。
ピョンピョンと近づくニジに、大丈夫かと問えば、どうやら大丈夫らしい。
みたことのない魔物だな。
見た感じは狐か。でも翼があるらしい。尻尾は三つ?
これはなんだ?
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【あとがき】
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