第69話 卵30個分の出汁巻きはきついよ
「ナナ、これ、卵が入ってるから、とりあえず三十個、割ってくれ。割ったら混ぜろ」
はい、と楽々卵を割っていく。ゴミ箱は用意してあるので、問題ない。
さて、俺はフライパンを用意しよう。あ、そうだ、出汁を入れないと。
粉末だしを取りだして、サラサラとボウルに入れる。俺が作った旨い割合だ。
ナナは驚いていたけど、無言だ。うん、いいことだ。
フライパン二つに油を取り出す。
スーパーから出した小瓶の油。もちろん、この世界にはない。
フライパンの用意を終えて、ベーコンを取り出す。それをトレイの上で、スキル先生にお願いして、五ミリの厚さにカットしてもらった。
一瞬でできあがるカットベーコン。当然、ナナは驚いたが、無言だ。
オーブンの天板にベーコンを入れて全てにならべる。それも二段。
それを投入して、タイマーセット。途中でひっくり返す必要はある。
卵の撹拌が終わりそうなので、最後に泡立て器で静かにまぜ、レードルで二つのフライパンに入れる。
そこからは戦争だ。
クルクル巻きながら次を入れる。
それを繰り返して、フライパンと同じ高さになったら、トレイに取り出す。
何度も繰り返して、何とか三十個のだし巻きができた。それを切るのはナナの仕事。
「セバス。二人を起こしてくれ。メシがなくなるってな」
『ショウチシマシタ』
静かにでて行ったセバス。
ふっと笑って、ミックスした野菜サラダを取り出してキュッとつかんで山のように盛って行く。隣りにはトマトを置き、ポテトサラダを置いた。
そこに、だし巻きをならべてゆく。
そして長いままのベーコンを半分にカットしたものと三つにカットしたもの。半分のものはハクとアレックス。それぞれにならべて、できあがりだ。
どうやら二人を起こしたセバスが戻って来た。
これを配膳してくれと言えば、ワゴンにならべて静かに押して行く。
何度か繰り返して、出ていった。おそらく、ハクの水と果実水、瓶の水だろう。それに、今日はミルクを頼んだ。これは冷蔵庫には入れない。古くなると飲めなくなるから、俺が回収すると伝えれば、理解してくれた。
俺とナナの分は大瓶だ。
後は籠一杯のロールパン。サンドイッチは大皿にならべた。ハクのだけはボウルに入れたけど。
あとは、ナナに白米を俺とお前の分だけと伝えて、屋台で買ったコロッケやつくねもどきを皿に盛っておしまいだ。
いつものように戦争のような朝食を終えて、ニジは上級魔法の本を読む、セバスは本を読むのかと問えば、知識の元だというので、いろいろ本を渡してみた。日常生活についてだけど。あとは冒険譚、だな。
とても嬉しそうにニジとならんで本を読んでる。
ナナは当然訓練。
アレックスとハクは? と問えば、前に馬を預かった場所にデッキを作ろうかと言ってる。まあ別にいいけど、何かないかなぁ。
それなら、馬車を作ってみるか? と問うてみる。
古道具屋でオマケにもらった本が、馬車の作り方の本だった。二人乗り、四人乗り、箱馬車など、いろいろな馬車があった。
じゃあ、それを作ってみるというので、とりあえず、森で切った木を取り出しておく。この木は、広葉樹で、高級家具になるらしい。結界を張ってから乾燥しろと伝えておく。じゃあ、何かあったら、念話をと伝えて俺とナナは空間を出た。
ナナには夕べ、腰鞄を渡した。小さなものだが、アイテムボックスになっていると言えば驚いていた。時間も止まるが、容量が今の空間くらいしかないものだ。まあ、それでも充分だろうけど。そこにギルドカードを入れておくように言った。当然、出し入れも明細も教えたが、冒険者たちの前では鞄から出すようにギルドカードを出すだけにしておくよういっておく。そうでないと奪われるから。
後で見に行く、と入り口で待っていたパトリオットに任せて、ドワーフの店に向かった。
「おはよう」
「おう、昨日のタケル、だったか。どうだ、槍の具合は」
「ああ、かなりしっくりきてるらしい。それでな、作れるかどうか聞きたいんだが」
なんだ? とワクワクしてるな、オヤジ。
そんなオヤジの目の前に、ホームセンターで見つけた特殊警棒を出した。
「これなんだ?」
「これは、こうやって伸び縮みする棒だよ。本来は、こうやって使うんだ」
シャキッと右腕を振れば伸びた警棒をみて、ロックがかかった状態になっていることを驚いてた。
「これはすごいもんだな。これを作るのか?」
「いや、違う。これは短すぎるから、今みたいに一瞬で伸びなくてもいいから。引き出す方法でも仕方がないと思ってる。振りかぶって出てくるならいいけどな。これをこの長さと太さで作れないか?」
ふむ、とサイズを確認している。
「長さはいい感じでできると思うが、手元はもう少し太くなるかもしれん。降り出してきっちり固まる方がいいんだろ?」
「まあ、そうじゃないと攻撃ができない。だが、空洞だと難しいか。弱くなるか?」
「間違いなく弱くなるな」
それならどうするか。太いものと少し細いもの、それを二分割して半転だけでロックできないか? あとは滑り出すスムーズさが重要になるけど。
そんなふうに説明すれば、ミスリルなら薄く加工できるし強度もできるだろうって。じゃあ、と半分だけ回してロックできるか? と問うてみる。
それは多分大丈夫だと思うと聞いた。
手持ちの特殊警棒をやるから、簡単でロックとロック解除ができる様になるか、考えてくれと伝えて戻ることにした。
もう一本特殊警棒をと思った時、プロ用のコーナーがある事を思い出す。そこをみてみれば、あったよ、いいのが。これは俺が使ってみるか。
少し訓練をみてから空間に戻った。
そこでは、ニジとセバスが読書をしている。ハクとアレックスは、風魔法で木材をカットしてスライス、そして乾燥するために広げてた。アレックスが二メートルくらいになって板を運んでる。面白い構図だ。
その後、俺は料理三昧だ。
今日も、ナナには弁当を持たせている。小さなアイテムボックスを渡したので心配ない。
今夜の分と、明日からの討伐の分。作っておけば、それぞれが戻って食えばいいしね。
それならやはりセバスにアイテムボックスを持たせるか。俺が戻る前でもそれぞれが食事できる。
ああっ! 大きな問題がある。
俺がいないと空間が開かない。これは設定できないのか? もしくは、チャイムを作るとか? いや、チャイムは無理だろうよ。何かと入り口が繋がればいいんだけど。でも、戦闘終わりで小さな入り口に入るのもなぁ。
この空間は俺の空間として認識されてる。設定で何とかならないか?
ステータスを開いて俺の空間をタップする。
あ、出た。これ、それぞれ設定できるんだな。空間の開け閉めは許可制か。じゃあ、ハク、アレックス、ニジを許可しておこう。
それをハクとアレックスに伝えれば、やってみるらしい。外に結界を張って、オープン!
おお、ちゃんと開いた。クローズ!
閉まったな。二人とも問題なかった。
「ただし! ハク、アレックス。お前らは考え方があまりに甘い。ちゃんと結界を張ってから出入りすること。探索して、他のやつを巻き込まないようにな。空で入る時は、下にも結界を張って、身体の大きさを調節する。特に、アレックス。お前が普通の大きさで入ったらどうなるか。わかってるよな? あんまり緩い態度を取るなら、お前たちは別のところで勝手に寝ることになる。もちろん、食事も自分で確保だな」
「ぜ、絶対に気をつけます! 特に討伐の時は気をつけますので。見放さないでください!」
「私も気をつけるから。ここを出されれば、私たちはタダの魔物扱い。それは無理。それに、魔物に成り下がったり貴族などに飼われることになれば、主に瞬殺される。絶対に気をつけるから」
ふふん、少しは考えろ、ガキども!
「ニジは一人で出入りすることはないだろうけど、将来は、大きくなったら使うだろうしな。それに外部に結界が張れないから、今の所は、誰かと一緒だ。いいな」
「あ~い! あるじぃといっちょがいい~」
「あはは。嬉しいこといってくれる。でも、今回の討伐は別になるが、お昼には空間に戻って食事すればいい。それはそうと、セバス。お前、アイテムボックスの使い方はわかるか? 料理を入れておこうと思うんだけど。それ以外なら、アイテムボックス鞄がある。そこに入れておくか」
『デキレバ、カバンガヨイトオモワレマス。キンゾクナラ、ナニカカンショウスルカモシレマセンノデ』
「わかった。じゃあ、アイテムボックスの中を整理しておくよ。で、その日の昼食分を入れるようにする」
小型だが、ここで使うのには支障ないだろう。基本、置いておくだけだしね。
その日は一日料理三昧。
一週間分くらいの料理を作った。
ホットサンドは、セバスが黙々と作ってくれた。俺オリジナルのトーストサンドは、気分を変えるとニジが手伝ってくれたので大助かり。あと、二ページで本が終わるそうだ。すごい、真面目だよ、ニジは。
俺はフライや天ぷらなどの揚げ物や煮込み料理、鉄板料理などを黙々と作る。スープ類もたくさん作った。シチューは二種類、野菜スープ、ベーコンスープ、味噌汁などなど。
もうどれくらい作ったかわからないくらい。
丼系も作ったし、焼き肉用の肉も準備した。そしてパスタ類は、レトルトソースを利用してボンゴレやミート、クリームなど。
あとはおにぎりを大量に作った。もちろん、白米もかなり保存容器にできましたよ。丼の時は白米必須だしね。とんでもない量です。俺も見たことのない量の白米にニヤリとわらっちゃったくらい。
今日から魔物討伐になる。
朝早くから、空っぽのアイテムボックス鞄に、今日の昼飯用料理を入れる。それとミルクを小瓶で。ついでだから、と夕食用も入れた。ファイルの扱い方を教えれば、セバスはすぐに理解した。当然、セバスには使用許可を出した。既に確認済だ。
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【あとがき】
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