第62話 はっきりと日本と決別した日
「それで、Aランク以上の魔物がいなくなればいいんだな?」
「できましたら、Bランク以上の魔物を対象にしていただければありがたいのですが」
はぁ、こういうことか。
パトリオットをみれば、なんともいえない顔をしている。どうやら、この件には世界ギルド協会は関わらないスタンスだな。
「パトリオット、これはお前らは知らぬこと、か?」
「はい。個人的にお願いします」
あはは、そうか。俺、見放されたのかな。
「この国は特殊です。とても全てを担うことはできませんし、一応、Aランク以上の魔物に対しての対応という事になっておりますので」
「そういうことか。そうだよな、それなら他国にも言われるだろうし。俺は面倒だからAランク魔物だけの方がいいけどな。でも、よかった。見放されたのかと思ったぞ」
「絶対にそんなことはございません! 世界ギルドとしては、世界に一人だけの直属冒険者なのです。そのようなことはあるはずございません!」
「あはは、わかった。でもなぁ。まあ、いいっちゃいいんだけどな。ただ、森の木が折れたり崖が崩れたりはある。だから一般人は森への立ち入りは禁止だ。いつ、どこに行くかはわかならい。だから、とりあえず一週間は、森へは入れないでくれ。騎士団に徹底してね。もし、勝手に入って命を落としても知らん。俺たちは、数千頭以上の魔物を狩る。それでいちいち対象外を気にすることはできないからな」
「承知しました。では、騎士団長に指示して、森の入り口を幅広く騎士団に見晴らせましょう」
「じゃあ、それでいいよ。契約するならしよう。あと、取りかかるのは森への立ち入り禁止も布告するだろうし、三日後くらいでいいか?」
それはありがたいです、と宰相が笑顔だよ。うん、いい笑顔だね~
じゃあ、とりあえず、契約書を確認する。
結果、二通の契約書になった。
世界ギルドの依頼と、俺個人への依頼。まあ、どっちでもいいけど。
書類内容を確認して、パトリオットも確認した。個人のものも確認してもらったが、問題ないそうだ。
じゃあ、と魔眼で確認してサインした。
それでしたら、と依頼前に支払いをする約束だから、と世界ギルドとの約束で、白金貨五百枚をもらう。中くらいの箱に入ってた。キラキラと宝石がついてたけどね。世界ギルドへの手数料は全てが終わったあとらしい。
つぎに出て来たのは、公爵家からの押収金と宝石などを換金したもの。
それも受け取った。
これ、金ばかりあってもしょうがないんだけどな。
じゃあ、と俺はその場で空間に入った。パトリオットは文官たちと宿へ戻っただろう。
やっと戻った~
「おかえり、あるじぃ~」
「おちゅかれしゅ、あるじ~」
「大変だったね、主は様々引き寄せるから」
「あはは、それはそうかもしれないな。それでな、討伐は三日後からだ。Aランク以上と言ってたが、Bランク魔物以上を狩ることになった。三日後には森への立ち入り禁止を徹底してくれると言ってたから。まあ、Bランクだと、森の中腹以上にしかいないから大丈夫だと思うんだ」
但し、凍結を使うなら、約束はしていないんだが、『魔物のみ凍結』というかたちでやってくれ。巻き込まれる人間がいても、国王からの命令無視だ。でも、寝覚めが悪いだろう? とお願いしてみた。
わかった、と皆がうれしそうだ。
その間、何をするかということなんだけど。とりあえず、明日はのんびり寝る。明後日には、作り置きを作る。そして三日目からは討伐になる。
その間に、空の上から探索を頼みたい。東と西の辺境、どちらからやるか。その道中の街道の魔物の状況などだな。
それはもちろん引き受けてくれた。
比較的近い所を飛ぶので、ハクの背にアレックスが乗っていくことになる。ニジは、作り置き料理を手伝ってくれるらしい。それは大いにありがたいな。
じゃあ、そうしようかと決まった後、みんなは風呂に向かった。
俺はこれからメシだ。
おでんは……残ってなかった。
じゃあ、何を食うか。
そうだ、惣菜をみてみようか。
スーパーで惣菜コーナーを確認する。ええと、牡蠣フライがあるぞ! あとは、里芋とレンコン、イカの煮付け。それと、豆腐とほうれん草の白和え。あとは、ヒレカツかな。
熱々の惣菜を取り出して、白米を盛る。味噌汁もストレージから出して、大きめのボウルに入れた。
これで万全!
いただきま~す~
味噌汁、旨いね。
久しぶりの牡蠣フライ。うん、旨い! ヒレカツも甘いソースがそそるね。あと、煮物。イカとかレンコンは久しぶりだ。嬉しい、旨い、温かい。
ハグハグと食べて、全てを食べ尽くした。
その後はひとり寂しく風呂に入って、ゆっくりと眼を閉じた。
今日は、ハクとアレックスに探索に出てもらう日だ。朝から弁当作りに勤しんでいる。
お手伝いは、早起きしてくれたニジ。
パンはたくさん籠に入れてある。そして、昨日の残りのホットサンドを分ける。あとは、揚げ物屋さんのコロッケ、肉串の串を抜いたもの、つくねもどき。それぞれにソースをかけて特製にした。
あとは、トンカツを作る。
いつものように、小麦粉をはたいて卵をくぐらせれば、ニジがパン粉をつけてくれる。俺たちの昼飯にもなるので、かなりの枚数をパン粉付けした。
それを揚げながらおにぎりを作ることにした。出かける二人の分を最優先。
具は鮭、おかか、こんぶ、ふりかけなど、いろいろ作った。ひとり大型保存容器にひとつずつ。あとは、卵焼きやサラダ、ウインナー、焼きベーコンをならべる。これでなんとかお昼ご飯は大丈夫かな。
おやつはケーキとパウンドケーキにした。飲み物は、果実水とミルク、水だ。
ハクの分は、大型密閉式タッパへどぼどぼいれる。全ての種類をそれぞれ七リットルにした。アレックスは、自分で開けて飲めるので、瓶にしておく。当然、ゴミの投げ捨てなどはしない。全て持って帰ってくれるんだ。
さて。
それぞれに渡すために一度ストレージに入れておきましょう。
ニジが起こしにいった二人がやっと起きてきた。
それなら、とフレンチトーストを焼く。隣ではベーコンだな。
大皿にサラダを盛り付け、焼けた順に並べてゆく。
一応、洗面を終えた二人がやってきたので、できている分を置いてやれば、嬉しそうにたべ始めた。
次々と焼いて行くフレンチトーストは、既に二十枚を超えている。つけ込み用の卵とミルクは大量に用意してあるので、問題ない。
途中で、ニジにも用意した。
とても綺麗に食べるので、ナイフとフォークを置いておけば大丈夫だから助かるよ。
まだまだドンドン焼いているんだけど。
そろそろ食パンを手に入れないとね。そうだ、買いに行こうか。
「ニジ。後でパンを買いにいこうか。食パンがないしね。商人ギルドに行ってみるかな」
「そりがいいよ~、あるじぃ~。みんながもろっちくるち、おいちいもの、ちゅくりょう~」
そうだね、と笑顔で返す。
旨いものをたくさんお願い、とハクが笑う。アレックスも同じらしいね。
朝食が終わり、それぞれに弁当を渡す。できれば、一緒に食べた方がいいよと伝えた。どこかの岩場ででも食べるって。アレックスは大きさを調整しないとダメだしね。
何かあったらすぐに念話してね、と空の上で空間を開くことにした。外に大きめの結界を張り、二人は空に舞っていった。どうやら辺境からやってくるらしいね。
結界を解除して、一度空間に戻り、俺はゆっくり朝食だ。
俺とニジの昼食はトンカツなので、既にストレージ入ってる。だから時間はたっぷりあるんだ。
ゆっくりとお代わりするニジと一緒にフレンチトーストを食べる。お伴はミルクだね。
かなり旨いね、大好きだよ。
ニジもご機嫌でパクパク食べてる。これはずっと好きな味。だって、自分で作れるものはこれだったし。自宅のキッチンは自由に使っていた。あまり使ってなかったようだし。母さんの療養に侍女たちもついていったから。もちろん、弟は母さんと一緒に行ったから、俺は一人きりだった。父親はどこかに家があったみたい。だから、俺には金だけはあった。毎月、父親から小遣いだと三十万の金が口座に振り込まれてたしね。学校の費用や電気ガス水道なども、全て父親が払っていたんだろう。そんなことが、五歳の頃から繰り返されてたんだ。かなりの金があったんだけど、どうなったんだろうね、あの口座は。
おそらく、だけど。
俺の行方不明は公になっていないと思う。だって、世間体が大事な父親だったし。でも、今はもう出せないな、あの金は。おそらく三千万以上あったと思うけど。なんだか悔しいなぁ。金はたくさんあるけど、あれが父の手元に戻るのは何だか嫌だ。
そうだ! ホームセンターかスーパーにATMはなかったっけ? みてみようか。
ええと、ATM……
あったよ、驚きだけど。
これ、どうやって使うんだろう。
ここをタップしてみるかな?
おお、大丈夫そうだ。残高照会を押してみれば、カードを入れてくださいとある。カードか。どこかにあるかなぁ。とりあえず、指紋認証っていうのがあったから、タップしてみた。
あ、動き出したみたいだけど……
あれ、出たよ?
残高三千七百八十五万円だって。
あれから増えてるじゃんよ。
出金しますか、と出たから、はい、をタップ。
すると、再度の指紋認証をした。
金額は、全額引き出し……。もし向こうの世界で親父がこれに気づいたら、どんな顔をするだろう。俺は、もうあんたの息子じゃない。俺は、俺の家族とここで生きていくんだ。……さよなら、過去の俺。
またのご利用ありがとうございます。って、できたの?
ATMファイルにあったよ、金が。
取り出して見れば、懐かしい日本円だね。これは、俺のファイルに移動しておこうか。
ストレージの俺のファイルに入れてみたら『日本円貯蓄』って出た。あはは、これはいいね。
こっちでは使えないけど、まあ、いいよね。貯蓄だよ本当に。
無言で何かをする俺を見ていたニジは不思議そうに、でもどこか寂しそうな俺の様子を察したのか、そっと俺の膝に飛び乗ってきた。そして、ぷにぷにの体を押し当てて『あるじ、だいじょうぶよ~』と言うように見上げてくれた。……ああ、俺にはもう、こんなに温かい家族がいるんだな。
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【あとがき】
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