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第61話 アンドルール公爵処分の顛末

「アンドルール公爵を呼び戻せ。すぐにだ!」

 

 俺が叫ぶと、国王が大きく頷いてる。

 宰相がその場で通信用水晶を使い、連絡をした。すぐに戻るように王命が出たということらしい。

 

「それで、タケル殿。これにサインをしたなら、あなたはどうなっていたのでしょうか」

「これにサインすれば、同時に別の書類にサインしたことになって、俺は自由に動けなくなる。公爵の命令を何をおいても遂行することになってただろうな。例え、国王を殺せと言われても、実行するしかなくなる。戦争にだって使えるからな。俺の家族は全員眷属だから、同じ扱いになるはず。信じられないことだな」

「そ、そのようなことが。あり得るのか?」

 

 国王としたら気になるよな。


「確かにそういう風に人を操れる魔法があると聞いたことはあります。私も多少の魔法をつかうので、今までいろいろと勉強しました。その中でみたことがあります。このような方法があるとは知りませんでしたが」


 パトリオットが心配して、大丈夫かと問うてくる。


「心配するな、パトリオット。相手がわかってることだから、相手だけを攻撃すればいい。国がどう扱うかは俺には関係ないからな」


 それはそうですが、とパトリオットが気遣ってくれる。まあ、世界ギルドとしても、こんなにいろいろとあるとは思ってなかったんだろうな。俺もこれほどとは思ってなかったけど。まあ、いろいろあるさ、人生は。って、俺はおっさんか!


 などと、ひとりでノリツッコミをしていれば、戻ってきたよ、公爵が。


「陛下。何事でございますか! やはり、この冒険者が無能でございましたか!」

「何を言うておるのだ。タケルは有能だ。其方の悪巧みも見抜いた」

「は? なんの事でしょうか」


 あはは、しらばっくれるつもりだな。

 じゃあ、やってやろうか。思い知れ、俺を引き込もうとしたバツだ。


「俺が無能だって? そんなこと言っていいのか? 俺は取り込めなくなるぞ。それに、この魔法使いに見覚えがあるだろ?」

「魔法使い? そのようなものは知らぬぞ!」


 ええと、あれ? あ、違った暗部のやつらだな。今も天井裏にいるか。

 じゃあ、落とそうかな。

 とりあえず拘束っと。それから、天井破って落としちゃおう~


 バリバリバリーーー!

 ドタンドタドタ……


「こいつら、公爵が使ってた暗部の人間だ。猿轡しているから毒も飲めないな。こいつらが公爵に頼まれて、俺を引き込もうとした。で、魔法使いがこの書類の裏に細工して、俺がサインしたら、別の契約書にもサインしたことになるって訳。わかったかバカ公爵!」

「……わ、私は、そのようなもの、知らぬ。命令した覚えもないぞ!」

「そうか。じゃあ、魔法で明らかにするか。それとも、公爵家の人間に聞くか、暗部の人間のことを。知ってるやつがいるだろ、身内に。長男とか嫁さんとかさ。それでもいいなら、今すぐここに呼ぶ。どうする?」

「うっ。私を脅迫するのかっ!」

「あはは、それなら俺にまがい物のサインをさせるのはいいのかよ。それ、完全に違法だろ?」

「うぬぬ、もはやこれまでか……」

 

 あ~あ、ゲロッちゃったよ、これ。どうするかな。


「『これまでか』じゃないよ。お前が俺の家族を道具にしようとした瞬間に、お前の未来は消えてたんだ。欲をかきすぎたな、元公爵さん」


「情けないことよ。王家の遠戚でありながら、このようなことを。して、タケル。どのように処分する?」

「そうだなぁ。とりあえず、公爵家は必要ないだろ。これくらいのことしか思いつかないやつは、国政の為にもならない。私利私欲だけだ。あと、家族も全員平民だな。屋敷は国のもの?」

「はい。貴族の屋敷は、国の財産です。それを貸し与えておるのです」

「じゃあ、無駄だな。すぐに追い出せ。あと、私財は没収。これからすぐに行くほうがいい。公爵は処刑でもなんでもいいさ、生き残ってもどうせ平民だ。国からの援助も許さない。さて、宰相。私財を押さえに行くか? 行くならハクを呼ぶけど」

「はい、お願い致します。すぐに書類を用意いたしますので」


 はいは~い。


『ハク。悪いけどひとっ飛びしてくれるか。とりあえず、皆で出て来てくれる?』

『お菓子も食べたし暇だからいいよ~』


 頼むよ、と空間を開けば、全員が出て来たよ。

 じゃあ、誰に頼むかな。そうだ、ニジもアレックスもいってもらうか。じゃあ、先に騎士団に行かせるか。


「陛下。こいつの屋敷ってどこ?」

「此奴はこれでも公爵であるから、王城の隣りになる」


 なるほどね。じゃあ、時間はかからないかな。


「じゃあ、騎士団を先に向かわせてよ。あと、騎士団長は残って。書類を持ってハクと一緒に行かせる。皆には侯爵家の財産の没収にいってもらいたいんだ。とりあえず、アレックス、これ預けとく。アイテムボックスだ。お前のストレージに入れてもいいけど別にした方がいいだろうからね。中に入るのはお前とニジになるだろうし。ハクは外で逃げ出すものを管理して。何も持ってないなら使用人は帰していいよ。公爵の財産まで持ち出すのはダメ。その辺りは鑑定して」

「了解。外は私がしっかり管理する。アレックス、お前は魔法でアイテムボックスに入れられるのか?」

「やったことはないけど、全てならおそらくできると思います」


 うん、いい経験だね。


 おっと、騎士団長が来たね。その役目通りの実直な人だ。

 宰相も、やっと戻ったよ。

 じゃあ、書類を受け取って、と差し出せば、パトリオットが説明してくれた。


 了解しました、とハクがテラスに出るので、一緒に行ったね。ハクのクビにいつものバッグをかけてやれば、ニジとアレックスが中に入っていった。

 落とさないでね~


 行ってくるからね、主~

 いってらっしゃい~



 さて。普通の文官が作った書類も届いたので、一応、確認する。魔法の気配はない。ちなみに、さっきの書類は、燃やしました。


 パトリオットも確認したので、裏を見てからサインしたよ。

 ずいっと押し出されたのはさっきの箱。

 ちゃんと金は入っているので、そのままストレージに入れた。

 

 それじゃあ、ここからがやっと交渉だね。

 宰相の話によれば、辺境伯二人はちゃんと金を持って来たって。国王が今後三年間の税値上げを禁止したらしい。ちゃんと勅令を渡したってさ。かわいそうにね。まあ、そのあたりは、なんとでもするだろうね、領主だし。


 公爵は地下牢に入れたらしい。あとは国のやることだし、関係ない。

 

 ここからは、パトリオットが話をすることになる。

 最初に聞いていたとおり、白金貨五百枚で、Sランク魔物に関しては、都度金額を払う。それ以外にランク付けができていない魔物などにも同様にするということらしい。だが、Aランクの魔物以上に限る。それは領内全体を一度に探索出来る魔法使いに探索をさせる。それで集結となる。


 そんな話らしいんだが。


「パトリオット殿。そのことであるが、我が国にはそれほどの探索ができる魔法使いはおらぬのだ。王宮魔術師でも無理だと返事がきた。故に、困っておるのだが、終わりの条件は定めねばならぬ。もちろん、国からの白金貨五百枚は当然であるが、先の公爵の私財が戻り次第上乗せとして考えてもらえればありがたい。いかがか」

「なるほど。私には決定権がありません。タケルさんのご意志のもと、世界ギルド協会に報告を致します。その分、我が協会の手数料も上がりますが、よろしいですか?」

「うむ。それは理解しておる。故に、少し待ってほしいのだ」


 どうしますか、と聞かれたけどさ。ハクたちが戻るまで待つしかないでしょ。


 その間、俺は目を閉じてハクたちをおっている。どうやらそろそろ戻ってくるらしいな。うん、ちゃんと回収できてるね。


 戻ってきた皆は、怪我もなく嬉しそうにやってきた。


「あるじ~、こり、あいちむぼくちらよ」

「おう、ありがとう。どうだった、相手の反応は」

「はっ! 国王陛下よりの勅命として指示いたしました。すぐにでて行くということです。使用人たちは自由にさせましたがよろしかったですか?」

「俺はいいと思うけど、どうなの、陛下」

「うむ。かまわぬ。こういうときは、執事長と侍従長は王宮に出向いて詳しい状況を話すことになっておる。それ以外は自由である」


 なるほどね、そういうことか。まあ、それは当たり前だろうよ。


 騎士団長も下がって行ったので、アイテムボックスの中身を確認することになる。

 アレックスがアイテムボックスを逆さにすると、チャリンなんて音じゃなく、地鳴りのような音を立てて金銀財宝の山が築かれた。宝石の輝きに目が眩み、宰相は泡を吹いて倒れかけていたよ。……これ、全部民から吸い上げた金なんだろうな。 


 宰相が国王と相談しながらメモしてるけど、放っておこうか。


「主、そろそろ腹が減ったんだけど」

「え? あ、そういえば夕方だな。何にを食べる?」

「おでんはもうないの?」

「あるよ。じゃあ、おでんにするかな。パトリオット、ちょっと戻ってメシを置いてくる。何かあったら水晶で連絡して」

「承知しました。では、後ほど」


 うん、と空間を開いて中に入った。

 さっそく、パンとご飯の用意をする。どちらもほしいっていうからね。じゃあ、と炊飯ジャーを取り出して、ニジとアレックスに説明しておく。ボタンをおして、これでボウルに入れたら、蓋はパチンと言うまで閉めること、とね。


 そして寸胴を取り出して、テーブルに置く。ボウルやら水やら。いろいろと用意して、これでいいと皆が言うまでいろいろと出したよ。

 じゃあ、行ってくるね、と手を振って空間を出た。


「お帰りなさい、タケルさん」

「ただいま、待たせたか?」

「いや、待っておらんぞ。すまぬな、皆の夕食を邪魔して」

「いいけど、どうなった?」


 結果として、公爵の貯めていた私財を全て俺に渡すということになったらしい。

 どれくらいあるのかと聞いてみれば、恐ろしい明細が出て来た。

 ドラゴン金貨百枚、白金貨二千枚以上、あとは、宝石や剣とかの武器と様々な武具など。全部で数千点あった。


「これ。ものはいらないぞ。特に武器や武具とか。武器も、俺は使わないしな。短剣かミドルソードがあればもらってもいいけど。何本かは持ってるしなぁ。宝石なんかも売るしかない。もらっても仕方がないだろ?」


 どうやら、これは公爵の悪行を暴いてくれた礼もあるという。なるほどね、そういうことか。

 でも、宝石などはいらんと言えば、宰相が鑑定士を呼んだ。それで、金に換算してしまった。

 もう、どれくらいあるかわからないよ、金。



********************

【あとがき】

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