第60話 策に嵌まっていたら公爵に飼い殺しにされるところだった
ステータスを開いてっと。
再生をタップしてみたらわかるかな。
――壊れたもの、失ったものなどを再生する能力。元通りに戻すことができる。再生度合いも指定できる。対象は、物品・建物・肉体など多岐にわたる。しかし、破壊されたり失った時の状態に戻るだけ。グレードアップするならば、創成魔法を使用する必要がある。
+特殊技能 見積もり――再生に必要な瓦礫や肉体部位がない場合、何がどれくらい必要かを試算する。瓦礫などがある場合は、そのまま再生可能
これ、すごい能力じゃないか。
それに特殊技能で見積もりもできるって。これはいいな。もし、知り合いが腕や脚を失っても再生できるってことになる。
じゃあ、この王宮を再生すればどうなる? 金はどれくらい請求できるんだろうか。
金はどうでもいいけど、懲らしめるためには使えるといいな。これで貴族たちも余計なことは言わないだろう。
「なあ、王宮がぶっ壊れてていいのか?」
「いえ、それは困ります。ですが、どうしようもないですので」
「なるほどな。威厳も保てないということか。それじゃあ、国の威厳まで貴族たちは壊したってことになるな。じゃあ、なおったほうがいいんだな?」
「そうですが。何か方法がありますか、タケル殿」
「一応ね。やってみて成功すれば、だけど。見積もりするか?」
「ぜひ、お願いします! 陛下、よろしいですね!」
「うむ。タケル、頼めるか?」
じゃあ、再生の為の見積もりをする。破壊された王宮を再生するにはいくらかかる?
――見積もり金額 白金貨一千四百八十八枚
「なるほどな。成功報酬でいいんだけど、とりあえず見積もりは白金貨一千四百八十八枚だ。但し、壊れる前の状態に戻す。今すぐにな。まあ、俺も初めて使う能力だから、成功したら、でいい。ダメな場合は、壊れた状態に戻るだけだ」
「……」
あはは、一番驚いてるのは辺境伯二人だな。
さて、どうするんだ、陛下。
しばらく考えていた国王だけど、やっと顔を上げたな。
「わかった。それでは、もし成功した場合、国で修繕費を立て替える。その金は、辺境伯二人に払ってもらうが、その間、領内の税を上げることは許さない。そうでなければ、民が修繕費を払うことになる。既に払っておる税とともに、領主の尻拭いをさせるわけにはいかぬ故。よいな!」
は、はは、はいーーーーー!
おっと、返事したよな、貴族ども。
「じゃあ、成功したら書類を作るといいよ。辺境伯二人は国に借金をする。早く返済した方が陛下の覚えもいいだろうなぁ。たとえ、私財を投げ出しても、な」
ふふふ、こういうの楽しいな。
圧力で押さえつけられてた俺は、ずっと跡取りという重圧に耐えていた。こいつらはそれくらいやってもいいだろうよ。それに、ダンジョンで儲けてるんだし、いいんじゃないか?
「では、タケル殿。お願い致します」
「まあ、やってみるよ。とりあえず、全員動かないでくれ。あくまでも壊れる前の状態ということだ。新品になるわけじゃない。新品になった方がいいのか?」
「いや、それは望んでおらん。以前の状態で充分なのだ、タケル。頼むぞ」
はいは~い!
じゃあ、やってみるかな。
さっき壊れた王宮部分を元に戻す。アレックスが大きくなる直前の状態でいい。
<再生!>
ぶわ~っと謁見の間が光に包まれて、崩れた壁の破片が重力を無視して浮かび上がり、目に見えない糸で引かれるように元の場所へ吸い込まれていく。ヒビ一つ、埃一つ残さず、かつての王宮の威厳が瞬く間に復元されていく光景は、まさに奇跡そのものだったな。
長い時間に感じたけど、せいぜい二分だった。
光が収まった時には、綺麗さっぱり、俺がここに来た時の状態だ。壁も天井も屋根も。絨毯や額縁まで元の通りに再生された。
これ、すごいね!
「す、すばらしいの、タケル。其方にはそのような能力まであるのか。屋根も治ったのだろう?」
「確認しますか? それならハク。宰相殿と空でみてくれるか」
「わかった。では、宰相、私の背に乗って!」
結界、忘れるなよ~
しゃがんでくれたハクに乗った宰相は、真っ青な顔でつれて行かれた。大丈夫だよ、結界があるから。
なんだか、面白い。
貴族たちって、いじめがいがあるな。情けなさそうな顔をみると、せいせいする。領民皆にそれくらい気を使えよ、バカ領主ども!
あ、ハクが戻った。宰相の顔が元に戻ってるな。
「た、只今戻りました、陛下。間違いなく、屋根は修復されております」
「そうか! ハクと申したか、手間を取らせた。では、タケル、支払いをしようぞ。王宮の修繕代を国として立て替える。その後は、国と辺境伯二人との借財契約になる故、それも立ち会いしてもらいたい。お前は頭が良い。知識もあるようだ。故に、同席を頼みたい」
「同席か。まあ、それくらいはいいですけど。じゃあ、とりあえず、うちの子たちは返してやってもいいですか?」
「うむ。誠に済まぬことをした。そうじゃ、お主らは何を食べるのじゃ? 菓子はどうじゃ?」
「菓子は大好きだよ、用意してくれるの?」
「すぐにな。宰相、誰かに調理場へ向かわせよ。甘いものを大量にな。それと、後ほど、討伐の話もある故、それは準備をするように」
すぐに動いたね、さすが宰相だ。宰相がバカな国はダメになる気がするな。
ハクたちは所在なげにしているが、これも菓子の為だろう。
すぐに執事のようなおじさんがやってきた。袋には、箱入りの菓子だろうか。籠の中には、山盛りの焼き菓子やスイートポテトみたいなやつが入ってる。
「お待たせ致しました」
差し出されたものを受け取ったら、ハクから声がかかる。
「主、さっそく私たちは戻るよ。いい?」
「ああ。飲み物は足りるか?」
「おそらくは大丈夫。ニジ、ミルクは?」
「しゅこし、ほち~」
「じゃあ、これ。渡しておくね。ハク、瓶だから割らないようにね」
「わかった。では、住処に戻ろうね。国王、感謝するよ」
「いや、何も気にするな。討伐も考えてもらわねばならぬからな」
空間を開けば、ハクが中に入って行く。アレックスとニジは手を振ってたな。
クローズ!
はい、ひとつ、おわりっと。
じゃあ、貴族たちに戻れと言ってるけど、辺境伯は? あ、居残りね。
「では、応接室でお話しましょうか」
わかった、とパトリオットと移動する。宰相の後に続くんだけど、イマイチ場所が把握できてないんだよね。とりあえず、世界眼でみれば大丈夫だろう。
応接室っていうけど、えらくデカい部屋だな。それに豪華だ。俺の趣味じゃないけどな。
国王がやってきて、腰を下ろしたので俺たちも座る。辺境伯二人は、立ってるけどね。
さて。何がはじまるかな。
「では、最初に。辺境伯おふたりとの契約ですね。今回、余計なことをして王宮に迷惑をかけた上に、王宮を壊滅的な状態に陥らせた。これは由々しきことですので、その修繕代金として、白金貨一千四百八十八枚かかります。その半分をそれぞれにお支払いいただくことになりますが、よろしいですね?」
おお、宰相。氷の微笑みだね。
「た、確かに間違いございません」
「私も同意いたします」
「では、お支払い方法をお聞かせください」
二人の辺境伯に対しては、それぞれ白金貨七百四十四枚になる。それもすごい金額だぞ。
「東の辺境は、現金ですぐにお支払いいたします」
「西の辺境も、同じでございます」
へえ、すごいじゃん。で、いつ払うんだろうね。
あ、すぐに屋敷から持って来させるって。あはは、すごいな、感心するよ。
「承知いたしました。では、お屋敷に連絡を。では、タケル殿、修繕代金をお支払いいたします」
はいよ。まあ、別にいいんだけど、それほどの付き合いじゃないし、もらっておこう。
目の前に置かれたのは、綺麗な箱だね。
鑑定すれば、きちんと白金貨一千四百八十八枚が入ってる。間違いない。
「受け取るけど、何か書類は?」
「こちらの、確かに受け取ったという書類にサインを」
ふむ。
一応、内容を確認した。
念の為、パトリオットにも確認してもらったので、大丈夫だろう。
念の為に裏も確認してっと。
鑑定で面をみたけど問題なかった。でも、これ、ヤバイでしょ。
「ねえ、宰相。この書類、誰が作ったの?」
「魔法使いでもあり文官でもあるものが作りました。いつも契約書はこの者が作っております」
ふうん。悪意があるよね。これ、このままサインしたら、俺は貴族の囲い者になる。
「じゃあ、その魔法使い、呼んでくれるかな」
はい? と疑問に思ったらしいけど、執事が無言で出ていったよ。できたおじさんだね。
パトリオットが理解できないという顔してる。まあ、理解できないよね。
こういうの、他にもあるんだろうな。まあ、俺には関係ないけど。多分、既に屋敷に戻った貴族が繋がってるんだろうけど。どこのやつだ? 魔法使いがきたら魔眼使うか。
魔法使いがやってきて、俺の前に立つ。
無言のまま、さっき、辺境伯二人がサインした書類を手に取った。そして裏を確認する。これは大丈夫だな。
「お前が作ったのか、この書類は」
「はい。私は文官でもあり魔法使いでもあります。ですので、書類を作るには普通の文官よりも早いのです」
「なるほどな。それでこういうギミックも仕掛けられるってことか?」
俺の為の書類をひっくり返して、指でなぞってやる。そう、書類のからくりを示してやった。
俺の指先が書類の裏をなぞった瞬間、部屋の温度が数度下がったように感じたはずだ。俺を、家族を、縛ろうとする魂胆……。俺は無言で魔法使いを睨みつけた。その瞳に宿る魔眼の光だけで、男は心臓を掴まれたように硬直していたよ
「え、あ、あの。な、なんの事を言われているのか、わかりませ、ん」
「ふうん。じゃあ、ひとまず拘束させてもらうぞ」
は? と驚いてるな。
パトリオットはすぐに立ち上がって魔法使いを拘束した。詠唱できないように口を塞いでおくのは忘れない。ロープを渡せばすぐに縛り上げられたね。
「あの、タケル殿、どういうことでしょうか」
「この書類、あのままサインしてたら、俺はある貴族に取り込まれることになってた。だから拘束したんだ」
「でも、口を塞いでは白状させられませんね……」
「大丈夫だ。俺は魔眼持ち。すぐに全部明らかになる」
魔眼発動!
ええと、アンドルール公爵の命令で俺を取り込むための策を影に依頼した。影はこの魔法使いを抱き込んだってことか、と呟いてたわ、俺。
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【あとがき】
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