第59話 初対面でこの国の貴族レベルは理解できた
参りましょうと聞こえたので、パトリオットに続く。
門は既に開いていたので、真っ直ぐ入れば執事の様な爺さんが向かえに来てた。
その後について行くんだけど、迷路だね、これは。俺ひとりなら無理だけど、俺には世界眼があるから大丈夫。ナビしてくれるし、一度歩いた道は全て記録されてるから。
十分ほど上がったり下がったりして、やっと到着したよ、控えの間。
まだ待つの?
パトリオットは剣を騎士に取られてる。俺はその前にストレージに入れたから大丈夫。ナイフも解体用ナイフも入れた。
剣は、と聞かれたので、魔法使いなのでありませんと答えればすんなり受け入れてくれた。
そのうちに執事がやってきて、少し移動した。
そこはデカい扉が全開になっている。そこに脚を踏み込めば、長い列があるんだけど、両側にいるのは貴族たちだ。何人いるんだよ、貴族って!
パトリオットに習って、俺も片膝をつく。
「世界ギルド協会パトリオット。面を上げよ」
ゆっくりと顔を上げるパトリオット。
やっぱり慣れてるね。
俺は未だに待ってますけど。
「そなたが連れてきた冒険者のランクはどれくらいだ?」
「はい。SSSランクでございます」
「なんと! そのランクは誰もおらぬと聞いたが」
「先日まではおりませんでしたが、現在は、この者が唯一でございます」
おお~とザワザワとし始める。
何でもいいけど、早くしろよ!
「そうか。では、冒険者タケル・ヤマト。面を上げよ」
ゆっくりと顔を上げてみれば、こちらを凝視してるね、王様。
「お主がタケル・ヤマトか。此度はすまぬな。で、この国はどうであるか?」
「初めまして。平民ですので、無礼な話し方もあると思いますが、ご容赦ください。この国の森ですが……探索したところ、かなりの魔物が潜んでいると思います」
「やはりな。ダンジョンの周りが特に多い気がするのだ。故に、探索する者らがたどり着けぬ事態が度々ある。だが、冒険者は受けてくれぬのだ。ダンジョンでの一攫千金を望むものばかりでのう。ダンジョンの周りが多かろう?」
「確かに多いですが、森の中にもかなりおります。山頂が国境と判断して良いのでしょうか?」
「うむ。国境にはそれぞれ塀があるのだ。故に、それぞれ魔物は留まっておると思われる。ダンジョン周辺以外にもおるか。なるほど、そういうわけで、街道や森近くの移動路で襲われることが多いのだな。なかなかに難しいの」
「はい、そう思います。他に協力者はいないのですか?」
「おらぬな。騎士たちでは役に立たぬのだ。それでそちは、どのように討伐するのか」
「そうですね。とりあえず、ダンジョンに関する場所からが良いのでしょうか」
「それはその方がいいのだが」
なるほどね、かなりの収入源になるんだろうからさ。
「とりあえず、二つのダンジョンの周りを殲滅しようかと。Aランク以上の魔物で良いのですね?」
「……うむ。そうではあるのだが。騎士たちではBランクの魔物は無理であろうか」
そんなこと、知るか! アホ。
「それは、実力を知りませんのでわかりません。とりあえず、私たちは、従魔たちと私に別れて討伐するつもりです」
なに? 従魔と?
あはは、いろいろ言ってるよ、お貴族様が。
「其方たちからは質問はないのか?」
「……陛下。私から質問してよろしいでしょうか」
申せ、と言ってるけど、誰、この人。
「私は、東の辺境伯ゾールである。此度は世話をかけるな。最初は東からいくのか?」
「まて、ゾール殿。私は西の辺境伯でアラガンである。西からいってもらわねば、魔物も多いのだ」
「何を言っておる」ってもめ始めたけどね。こいつら、自分さえ良ければいいのか?
「あの! 先ほど、私は従魔と私とで別れて討伐すると申しました。もちろん、魔物の多さ、森の広さなどで多少の違いはあるでしょうが、連絡を取り合うので余り差はないかと思われます」
「しかし、お前の従魔とはなんなのだ。お前がSSSランクの冒険者というのは知っておる。だが、従魔はなんだ!」
偉そうだな、こいつ。
「はぁ。パトリオット、これは俺との契約違反だよな。どうする、俺はやっちゃっていいのか?」
「あ、あの。タケルさん、申し訳ないのですが、みんなをここに呼んでいただけませんか?」
「お前がいうならいいけど。でも、貴族たちには命取りになるかもしれない。それでもいいのかな、国王陛下?」
「そ、それは困る。困るのだ、タケル。できればそのような事のないように頼みたいが……」
「ふうん。じゃあ、披露してやってもいいけど、俺がこの国の魔物たちを討伐するかどうか、まだ契約は成されてない。だから、俺の手の内を明かすならば、白金貨三十枚。今ここで渡してもらう。あいつらに旨い物でも食わせてやりたいからな」
「わ、わかった。では、すぐに用意させる」
『ハク。嫌な貴族がいてな。もしかしたら、この場に出て来てもらうことになるかもしれない。いいかな』
『わかった。じやあ急いで残りの朝ごはんを食べるよ。このホットサンドは美味しいね、主。また作って欲しいな』
『あはは、いいよ。食べたことあっただろうけど、前と中身が違うからな。気に入ってくれたなら良かったよ』
『うん、気に入った。じや.皆で準備するね』
頼むね、と念話を終わらせた。
「タケル、白金貨を受け取ってくれるか」
差し出された革袋を受け取り、鑑定して見れば、確かに白金貨三十枚入ってるな。
「確かに受け取った。ひとつ言っておく。王宮は最悪破壊されるかもしれない、それだけは承知してくれ」
「な、なんと! タケル殿、それはどういう意味なのですか。あ、失礼しました、宰相のドンドラスと申します。それで、王宮が破壊されるとは?」
「まあ、みてみればわかりますよ。俺は気を使って従魔は連れて来なかった。だけど、見せろとおっしゃったのは辺境伯殿たち。そういえば、陛下もいったよな。だから、見せるだけだ。その結果、最悪の事態になるかもしれないと教えてあげただけ」
「いや、それは……」
『ハク。準備はいいかな?』
『うん、準備できてるよ』
『じゃあ、開くからね』
オープン!
現れた引き戸は、ゆっくりと開いて行く。
そこから、ハクがニジとアレックスを背に乗せて出て来た。当然、すぐにオートロックがかかったけどね。
最近わかったんだ、俺たちが出た後、扉は特別なことがない限り、素早く閉まる。というか、一瞬で閉じてしまうようになった。すごく便利だよ。
「主、待たせた~」
「うん、悪いね、ゆっくりしてたのに」
「で、ここは謁見の間なの?」
「そうだよ。貴族様方がみたいって」
「なるほど。私らを見世物にする気だね。それなら、貴族たち、私らに対しての感想を言ってもらおうかな」
あはは、貴族たちはザワついてるね。
「あ、あの。貴殿は、どのような魔物、か」
「私は、スピリチュアルビースト・パンサーの特殊個体、魔物じゃなくて霊獣だよ。他は?」
ハクが静かに名乗ると、騒がしかった貴族たちが一斉に沈黙した。ただの豹ではない、神々しいまでの銀色の毛並みと、全てを見透かすような瞳。その圧倒的な品格に、跪く者さえ現れ始めたよ。
「あ、あの。あなたは理解できますが、七色スライムと小さなドラゴンは?」
「疑問に思うんだね。じゃあ、その理由を見せてあげるよ。アレックス。私は主たちを守るから、お前は真の姿を見せてやって」
「んー! でも、こわれるかもらよ~」
「気にしなくていいよ」
「わかっちゃ!」と呟いたアレックスは、ハクとニジがこちらに来た瞬間、姿を変える。
ググンと大きくなるんだけれど、それに伴い、バキバキベキとあちらこちらがひび割れてゆく。
「ああ、タケル殿、その辺でお許しください!」
宰相のドンドラスが慌ててるな。
止めようかと思ったけれど、少し遅かったね。
ドドーン! と天井と片方の壁をぶち抜いてしまったのだ、アレックスは。
あああ、と項垂れる宰相。少しかわいそうだけどね。
「つぎは、この子だな。じゃあ、ニジ。あそこにいる貴族の皆さんに、爆裂の弾丸を見せてくれるか?」
「う~ん、ばくれちゅ~いくしょぉ~」
バシュッと飛び出した氷の弾丸は、貴族たちの頭の上を通り越し、窓の上に突き刺さった。
キーン!
鋭い音が聞こえて、バババン! と壁に大きな穴があき、その後ろで、ガラス窓が割れて崩れ落ちた。
ニジが放った氷の弾丸は、音速を超えて壁を抉り抜いた。着弾地点から数メートル以内の貴族たちは、その衝撃波だけで腰を抜かしている。もし狙いが数センチずれていたら……そう考えた連中の顔面は、真っ青を通り越して土色になっているな。
当然のように、国王は大口を開けて固まり、宰相は尻をついて床に崩れている。
「あはは、止めるの間に合わなかったな。でも、これが事実だよ。まだ、ドラゴンがブレス吐かなかっただけ感謝しろよ」
そんな風に突き放してやった。バカどもが!
「そ、それでは。ご理解いただけましたか、貴族様方。ご意見のある方はどうぞ、前へ出てください」
ニヤニヤ笑う俺たちだけど、その間にアレックスが小さくなって戻って来た。
ニジを右腕に抱き、左肩におちついたアレックス。ハクは面白くなさそうだね。
「あ、う、そ、そうだ! 先ほどは、どこから出て来たのだ!」
それ、討伐に関係ないだろうよ。ここでプレッシャー与えておくか。
「それを知ってどうするんだ。魔物討伐になんの関係がある? なあ、国王陛下。これ以上、俺達の事を詮索するなら話は終わりだ。パトリオット、それでいいな」
「はぁ。仕方ありませんね。では、今回の討伐依頼はなかったと言うことで、国王陛下、我々は失礼致します」
「……ちょ、ちょっと待ってくれ! それは困る、絶対に困るのだ。魔物が増え続ければ、民にも被害がでる。故に、どうしても引き受けてもらいたいのだ。皆、黙っておれ!」
貴族たちは不機嫌だね。
「そうだ、陛下。ひとつ提案がある。この建物の被害だけど、そっちのゾールとアラガンだっけ、あいつらが希望したからこの子たちは出て来た。だから、王宮を壊した修繕費は、あいつらに出させればいい。当然の話だろ? 貴族なら、口から吐いた言葉には責任を持つ。それが上に立つものの勤めだろうよ」
「それがよろしいです、陛下。確かに、二人の申し出で、タケル殿は従魔を召喚されたのです。その時に伺いました、壊れるかも、と」
「なるほど、そうであるな。国王である余が話しをつけようとしておったが、口を挟んだのは、両辺境伯。ならば、修繕費は二人に払ってもらおうではないか。皆、それでよいな!」
あはは、コクコク頷いてるぞ。これでいろいろ聞かれないで済むな。
でも、壊れかけの辺境伯どもは、何も言えないか。
そうだ、あの、再生ってやつ、みてみるかな。
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【あとがき】
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