第57話 対象の国へ移動するのにアレックスに乗ってみた
とりあえず、広い所まではハクの背に乗って行く。
いつもと同じで、鞍にまたがりニジは鞄に入って前を向いてる。その前にはアレックスが脚を投げ出して座ってるよ。ちゃんとハクの背中にある布の上に乗っかってるのがお利口だ。爪が刺さると思ってるんだろう。賢い子だよ。
そろそろ冒険者たちが戻って来始めてる。
見知った顔はいないので、気が楽だ。イリアたちは護衛で王都まで行ってるらしい。俺が渡したアイテムボックスと水晶が役に立ってるって。無事を確認できるからね。
さて。結局、門から出てから乗り換えることにした。場所がないから。
途中で甘いものも買ったし、万全だろうよ。
街道から少しそれた場所で大きくなったアレックス。小さくなったハクを抱えてその上まで飛翔した。ニジは通常通りだね。
そのあと、不可視結界の透明バージョンを発動する。完全にアレックスと俺たちの姿は消えた。
それを確認したアレックスは、数歩進んで空に上がった。バサバサと翼の音が聞こえるけど、誰もいないから大丈夫でしょうよ。
俺の頭の中にはマップがある。
このまま真っ直ぐは入れないので、遠回りすることになる。街道の上を飛んで、五分で右方向へ伸びる街道上空へと旋回する。もう、不可視結界はないからね。
でも、俺たちの周りには結界がある。落ちると大変だしね。それを確認したハクは寝転がってるし。笑っちゃうよ、ほんと。大物だね。
ニジは興味深く森を見てるね。
気配察知を使ってるみたい。俺も使ってるけど、確かに魔物が多いな。でも、今はまだ他国だし、気にしなくてもいいんだ。だけど、空の魔物がいるから、それには対応しますよ。
デカい鳥が飛んでくるんだけど、狙ってるよね、俺たちだけを。ドラゴンであるアレックスの背に乗る俺たちを攻撃するってかなり危険だと思うんだけど。
でも、的だよ、ちゃんと。
『アレックス、あの鳥はやっつけていいのかな』
『それはありがたいです。普通なら攻撃などしないのですが、おそらく主たちを見つけたのだと思います』
『わかった。じゃあ、俺が狩るよ。そのまましばらく進んで。ここはまだ他国だしね。そのうちに街道が右に曲がるから、その向こうが辺境門だと思う』
承知しました、と聞こえたので俺は鳥退治で~す。
ええと、これは食えるのか? お、大丈夫らしい。普通の鶏肉と同じだって。じゃあ、この五羽は一気に確保しないとね。
<氷弾>
ドシュッドシュッと氷の弾丸が散らばる。氷弾が命中した瞬間、巨大な鳥たちは一瞬で粒子になって、俺のストレージに吸い込まれていった。……うん、環境にも優しいし、回収の手間も省ける。これ、実質掃除機みたいなもんだな。
そうだ、ダンジョンで設定してたんだっけ、俺たちのアイテムは自動で俺のストレージに入るって。これは便利だね。
『終わったよ~』
『了解しました。素晴らしいです、主』
『あはは、魔法様々でしょ』
『なるほど。それで、あの曲がり角ですか、街道が歪んでおりますが』
『そうだと思う。とりあえず、どうするかな。辺境門の向こうはっと。あ、すぐに街だね。ダンジョンがあるからか。じゃあ、そのまま飛んでいっちゃおうか。聞いてみるかなパトリオットに』
結果。そこはスルーしていいらしい。
目的は王宮に行って国王と謁見し、話をして契約することらしいから。
じゃあ、そのまま国に入るけど、どのあたりで降りるの?
王都の手前ならどこでもいいらしい。そこで馬車を出して進むんだって。まあ、まだ時間もそれほどたってないし。だって、ここまで来るのに三十分かかってないんだよ。信じられる?
じゃあ、広い場所を探そうということになった。透明の不可視結界を張るから、林でもいいしね。
アレックスと話しながら飛んでたんだけど、ハクが王都門の手前には林の中にぽっかりと広い空間があるって教えてくれた。
起き上がったハクは、あと少しだというので、そのまま飛んでる。この国の王都は真ん中よりも手前にあるらしい。こっちから来たのは正解だね。
しばらく飛んでいると、地上のミニチュア都市に大きな門が見えてくる。
あれが王都門だね。マップに出たからわかったけど。
その手前にあるらしいけど、と少し世界眼で確認すれば、すぐにわかった。これ、やっぱりナビでしょ。
ゆっくりと下降するアレックスに透明の不可視結界を張る。中からはクリアに見えるけど、外部からは何も見えないんだよ、面白いね。魔法万歳!
地上に降りて、ハクを下ろせばググンと元の大きさになった。その代わりにアレックスは小さくなってハクの背中に乗ったよ。
オープン!
空間を開けば、パトリオットたちは椅子に座って書類を見てた。
「ついたよ」
「え? もうですか? 素晴らしいです。では、すぐに外にでますので。ええと、あの土の壁ですが」
わかってるよ、と馬車を付けてもらう。その間に、結界を張ってからハクたちにおやつを渡してやる。さっき買った肉串やコロッケだ。
嬉しそうにたべてるけど、ハクには水の溜まる魔道具を出してやる。
アレックスは瓶の果実水をゴクゴク飲んでたよ。肉はちゃんと外してあるので、フォークでブッ刺して口に入れてる。ニジも出てきて、嬉しそうにコロッケを手に持って食べ始めた。
ハクのおやつの器には、肉串、コロッケ、肉フライ、つくねなどを置いてやる。そして、結界を張った。
空間の中に入れば、やっと馬車がつきそうだ。
じゃあ、と土魔法を解除すれば、地面がスルスルと平らになって、芝生も元に戻った。
こんな風になるのか、すごいな!
点検を終えた馬車は文官が操って外に出できた。
あっちだよ、と指させばそちらに頭を向ける。
書類をかき集めていたパトリオットだけど、なんとか鞄に押し込んでるね。大変そうだ。後であの鞄の空間を少し広げてあげようかな。
「では、タケルさん。私たちは先に王都に入って宿を確保します。道中で王宮に連絡を取り、いつ謁見になるのかを話しましょう。決まり次第、連絡いたしますので。こんなに早く到着するなんて信じられません。野営も覚悟していたのですが」
「あはは、そうなんだね。アレックスに感謝して。あの子が飛んでくれたんだから」
わかりました、と馬車に乗り込みひと足先に行っちゃった。
まあ、俺たちは自由だから全く問題ないんだけどね。
やっと終わったおやつ。
俺も途中から参加したんだ。お腹は落ち着いた。だから進もうか。
飛翔でハクの椅子に乗れば、ニジはバッグに、アレックスはその前に乗った。脚を投げ出してるのがかわいい。短くて太い脚をね、ポテッと投げ出してるんだよ。それで、ハクの鬣をつかんでる。当然、結界は張ってあるから心配はない。俺もニジも、自らに結界を張った。ニジのバッグの入り口には俺が結界を足してるけど。
街道で誰もいない間に王都門へと歩き出す。そうでないと、驚くからね、皆が。
俺は基本、商人だし。馬車は引いてないけど。まあ荷物がないから、基本的にはいらないし。
おお、やっぱり並んでるね、王都門となれば。まあ、時間はかかるだろうけど、仕方がないね。
なんてことを思ってたけど、それから少しずつ進んで五十分。やっと俺たちの順番だね。
「身分証明を」
「はい」
商人のカードを出しました。
それで眷属の確認をと、タグを見せる。
「商人か。荷物がないようだが」
「アイテムボックスがあるので、荷物はありません」
「なるほど。では通って良いぞ」
「ありがとうございます」
ふふん、スムーズに通れたね。
さて。
とりあえず、どうするかな。
何か面白そうなものがあるかな。というか、美味しそうなものがある?
キョロキョロとみているんだけど、王都には屋台はなさそうだね。辺境に行けばあるんだろうけど。まあ、それはそれでいいかな。
『ハク、どうする? 空間に入るかな』
『この後の予定が立たないなら、その方がいいかもね。連絡はないんでしょ?』
『まだないね。そろそろ日も暮れそうだし、とりあえず空間に入るかな。どこで入ろうか。冒険者ギルドには行きたくないから、その辺りでもいいよね。空で入るのが一番いいから、透明の不可視結界を張るかな。そこで入ろうか』
『それがいいよ。でも王都でそんな空間があるかな?』
『あ、そうだよね。ないかもだけど。じゃあ、どうするかな。宿でも取って、小さい身体で入るかハク。部屋に入ったら空間を開くけど』
『それしかないかも。さがしてはみたけど空白はない。どこもびっしり建物が建ってるね』
『そうだね。じゃあ、商人ギルドで聞いてみようか。場所はねえ』
世界眼!
おっと、あった。
『そのすぐ向こうだね。もうすぐ見えると思うけど』
『あっ、確認した。私は二重結界を張って外で待つよ』
お願いね~とアレックスとニジには鞄に入ってもらうことにした。
今日の俺は久しぶりにアイテムボックス鞄をかけてる。その方が商人らしいからね。
到着した時、俺がハクから離れた瞬間、ハクが二重の結界を張った。
そこで待つというので、俺は急いで中に入る。
「いらっしゃいませ。本日の御用向きは?」
「従魔も一緒に泊まれる宿を探してます。従魔はかなり小型の豹の魔物です」
「なるほど。では、少々お高くなりますがよろしいですか?」
はい! 金は腐るほどあるからね~
今回は食事はどうでもいい。とりあえず部屋があればいいだけ。あれ? それなら、あのバッグにハクも入れればよかったかな?
「あちらの宿です。商人ギルド推薦の宿ですので、綺麗で静かですよ」
「なるほどね。それで、従魔無しで泊まることもできますか?」
「もちろんでございます。ひとり部屋でも二人部屋でも、お部屋の広さは同じですので」
「じゃあ、ここに行ってみますね」
その紙をもらって外にでた。
そして宿に向かう前に、ハクに相談してみる。
「なるほど、そういう方法もあるね。じゃあ私ができるだけ小さくなればいいんだね。裏に行こうか、主」
そうだね、と裏の方へと入って行く。
奥の馬場近くで、アレックスとニジに伝えて、椅子を外せば、スルスルと小さくなったハク。これは、と驚いてしまった。ハクはピクリとも動かず、つぶらな瞳で空虚を見つめている。……いや、ハク、それだと逆に不自然だから。たまには瞬きくらいしてくれよ。
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【あとがき】
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