第56話 俺、SSSランクの冒険者になっちゃった。その上、世界ギルド管轄だって。どういうことだよ!
「とんでもない商人だな、お前。うちで冒険者登録してもらえるなら、世界ギルド権限で高ランクになるんだが。どうだ?」
「高ランク? どれくらいのランクなの?」
「世界ギルドでは、Sランク~SSランクでと考えております」
なるほどね。でもね、一番嫌なのは拘束されること。
「ランクは好きにすればいいけどさ。俺が嫌なのは、貴族や王族から無理難題言われること。なんで人を勝手に使おうとするの? 高ランクの冒険者って、世界の財産だと思うんだ。そういう人たちが自由に動けるのが危険回避の一歩だと思う。それを金で囲って、なんの意味がある? それでも、金や権力が欲しい人は従えばいい。それ以外は自由にすればいいよ。そうでないから俺は冒険者にならないんだ」
なるほど、と世界冒険者ギルド協会執行役員が悩んでるよ。
「それなら、少しだけお時間ください。そうですね、四半刻(十五分)くらい。よろしいですか?」
「それくらいならいいよ。旨いケーキも出てくるだろうしね、ギルマス」
「お、おう。わかった。すぐに用意させる!」
結果として……
世界冒険者ギルド協会は、俺に限っては全ての要望を認めた。他のSランク以上の冒険者については、貴族待遇をうけて国に属するか、それらを放棄してSランク冒険者として普通に依頼を受けて生活する。それを選べるようにしたらしい。
だから、頼むと言われたんだけど。さて、どうするかな。
念話でハクたちに相談してみた。
あいつらにも迷惑がかかるかもしれないから。だが、思ったのとは違う返答がある。
『主だったら冒険者ギルドであろうが商人ギルドであろうが、結果は同じだよ。組織などでは制御できないんだから』
『その通りです、主。主は我が父が認めた逸材。すぐにでも世界をその手に収めることのできるお方です。看板の一つとしてお持ちになれば良いのではないですか?』
『あるじぃ~ニジも、しょれがいいちょおもうよ~。あるじはしゅごくちゅよいし、やしゃちいんらもの~』
『あはは、ハク、アレックス、ニジ。本当にお前たちは可愛いよ。これからも頼むね。俺、泣いちゃうこともあるかもしれないぞ』
そういえば、いつでも泣いていいんだと言ってくれた。俺の帰る家族がいるんだと、心から安堵できた瞬間だった。
「わかった。じゃあ、ランクとか適当にして。だけど、俺のやり方は変わらないよ。家族は全力で守る。攻撃したやつらは、徹底的に潰す。それでよければね」
そう言って、ケーキにフォークを入れた。お菓子タイム、再開だ。
何やら大騒ぎでパトリオットとギルマスがやりとりしてる。管轄がーとかランクがーとか言ってるけど、俺には関係ない話だ。
この後、どうなるんだろうか。
面倒な事は終わらせておきたいけど。対象の国に行くのかな。
待っている間に俺がしたことは、登録用紙に名前を書いただけ。
これが、あとで面倒な事になるなんてこのときの俺は全く知らなかった。
□□□□□
結局、俺の冒険者ランクは、SSSランクになった。というかされてしまった。これはどういうことだ?
パトリオットに問えば、今の所、このランクまでしかないからだと言われた。なんだよ、それは。
途中で水晶に手を置いてくれと言われたんだけど、拒否した。だって、見せられるわけがない。ぜったいに引くぞ、みんな。
それなら前の記録でも十分だからと言われた。まあ、関係ないけどね。
やっぱりこれから、ミッドアス大国に行くらしい。どうやら、この前の辺境のこととか、ダンジョン都市での事などが、世界に広まりつつあるらしい。
なんでだよ、と問えば、ギルド経由じゃないと神に誓うと言われてしまった。確かに、あの場にいたのは貴族やら騎士たちやら。文官もいたし使用人たちもいたからね。人の口に戸は立てられないということか。
まあ、仕方がない。無視しよう。
管轄は世界ギルド管轄になるらしい。世界に一人しかいないんだって。この街のギルド所属ではあるんだけど、意味がわからない。
どうやら、これからの依頼をスムーズに進める為の措置らしいよ。まあ、それで、世界ギルドが責任を持つならいいけど、と嫌みを言っておいた。
当然です、と世界ギルド協会からの契約書を出された。なんだこれ。
どうやら、世界ギルド協会の所属になるので、俺個人がすること以外は、依頼の中断、対象者への報復など、全てを世界ギルドが受け入れるということらしい。
まあ、それならいいけど。
特記事項として書かれていたのは、世界ギルドを破壊したいほどの事があれば、破壊する前に話し合うとなってた。あはは、これは面白すぎる。
空間に入って、ハクたちに話をする。
SSSランクには驚いていたけど、当然と言えば当然だって。面白いね、うちの子たちは。普通なら、驚くでしょうよ。
じゃあ、どうやって移動するか。
それなら、アレックスが街に入っても活躍できないから、飛んでくれるって。まあ、ハクは豹だから、俺たちを乗せて進めるしね。
じゃあ、パトリオットは空間だね。
そう決めて、空間から出た。
そしてギルドの前に行けば、パトリオットと数人がいる。こいつらは文官かな?
ハクの背に乗ってたアレックスとニジは、肉串屋さんの前にいる。じゃあ、とアレックスに俺の財布を預けて、自由に買い物していいから、と伝えた。旨いものはハクが言うらしい。
ニジも結界を張ったし、大丈夫だろうね。
アレックスは起用に前足で財布を抱え、「これ、くだしゃい!」とつくね屋さんに白金貨を出しそうになったので慌てて止めた。
「おう、かわいいドラゴンの使い魔だな」と目尻を下げてサービスしてくれていたよ。
皆はいっちゃったので、俺はパトリオットと話をする。
「タケルさん、無理なお願いなのですが」
「なに? その人たちも入れろって?」
「はい。どうでしょうか。それと馬車と馬を」
「はあ? 馬車と馬だと? まあ、馬には罪はないからいいけど。その人たちは?」
どうやら契約書などを作る文官とそれを世界ギルドに転送する魔法使いらしい。そんなのがあるんだね、便利だよ。
とりあえず、鑑定してみよう。
まあ、普通の人たちだね。
じゃあ、魔眼で確認!
文官たちは、全く問題ない。魔法使いの属性はっと。
炎と無属性か。無属性で使うのかな、書類を送るのは。あと、所属団体は……魔法ギルド。
魔法使いが集まってるギルドか。なんだか嫌な感じだね。
やっぱりだ。俺の情報を手に入れるために派遣されてきたな。これは厄介だぞ。どうするかな。
ええと、無属性魔法でできるなら、俺でもできるか。試してみようか。紙にグルグルマークを書く。そして、俺の名前。これでここのギルドに届ける。
<転送>
ふむ。とりあえず、手のひらの紙はなくなったけど。
「お~い! タケル。この紙はなんだ?」
ギルマスが俺の書いた紙を手に持ってきた。
「ちゃんと届いたね。じゃあ、大丈夫。転送してみたんだ、無属性魔法で。実験成功です!」
「はあ? じゃあ、いいのか。これは捨てても」
「うん。ごめんなさい、俺が受け取ります」
おう、とギルマスはクビを捻ってギルドに戻って行った。
「あの、タケルさん、さっきのは?」
「その魔法使いの属性が火と無属性だったから、それならできるかなと思って、やってみた」
「なるほど。ですが、それはどういうことでしょう」
「あ、ごめん。その魔法使いはダメ。俺の仕事も見せないし、空間にも入れない。俺の情報を魔法ギルドに報告する事になってたからね。だからダメだよ~」
え? とパトリオットが魔法使いを見ると、逃げ出しやがった。これ、どうするの?
「依頼料は受け取ってるのに、とんでもないやつだ!」
じゃあ、捕まえてもいいよね。
<拘束!>
ドンガラガッシャーンと音が聞こえた。
「何してんだよ、おめえはよー!」
あはは、誰かにぶつかったんだね。
「捕まえたよ。連れに行けば」
ありがとうございます、とパトリオットが駆けだした。もと冒険者だから、大丈夫だろうね。詠唱もできないように口も塞いだし。
「これは、問題ですね。ギルマスに渡してきます」
襟首をつかんで引きずられる魔法使い。依頼料もらって逃げちゃダメだよね。
お待たせしました、とすぐに戻ってきたね。
じゃあ、馬は別の場所に入れた方がいいかな。どうだろうね、灯りがあればいいか。そうだ、ハクは一緒にアレックスに乗るからいいかな。
ここからだと、すぐみたいだし。
じゃあ、とパトリオットと文官を先に入れて、場所を決めた。
入って右の奥へ馬車を止めてもらう。馬たちは馬車から外すというので、寝っ転がるためのデッキ側に土壁を作った。高さはそこそこでね。後ろには人がひとり通れる空間を空けてある。トイレがあるから。馬たちは、仕切られた空間で軽く駆けてるけど、文官たちが、水と飼い葉を用意してたね。
お風呂は俺のために作った外風呂を開放することに決めてるけど、それほど時間は必要ないかもね。
あと、テーブルと椅子は使っていい。冷蔵庫に飲み物がある。だけど、このテントには入るなといっておく。トイレもこっちは俺の。馬エリアの側にあるやつを使えと伝えれば、助かるとパトリオットが頭を下げた。少し遅れて文官たちもね。
じゃあ、と空間を閉めて、ギルドに入る。
「おう、準備できたか」
「うん。で、魔法使いは?」
「警備に引き渡す。魔法ギルドがどう出てくるかだけど、それはまた連絡するからな。それと、これがお前のギルドカードだ。裏には、王族、貴族など構い無用と書いてあるからなくすなよ」
「わかった。じゃあ、行ってくる」
「おう、気をつけてな」
バイバイと手を振って外にでた。
ハクたちは?
あ、奥のつくね屋さんだね。
「準備できたけど、そっちはどう?」
「肉串屋があと少し残ってる。揚げ物屋は全て買った。あとは、ここだけだよ」
「じゃあ、もうすぐだね」
久しぶりと肉串屋のオヤジさんと話し、隣の揚げ物屋さんとも話した。これから依頼だと言えば戻ってくるのかと聞かれたので、もちろん、と答えておく。多少時間はかかるけど、と言えば気をつけてなと言ってくれた。
果実水屋さんも、予備があるからと箱ごと売ってくれた。
つくねみたいな肉を焼く店主が、やっとできたと言ってくれる。
また、しばらく留守するけど、戻るからと伝えて握手した。
********************
【あとがき】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
面白いと思ったら、★評価やフォローで応援お願いします。 皆さんの評価とフォローが、タケルの魔力になります!




