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第53話 この国の貴族どももつまらない。いても仕方がない奴らだ

 なんだこいつらは。


「タケル殿。私は侯爵の……」

「わたしも侯爵の……」

「伯爵の……」

「男爵の……」

「騎子爵の……」


 結局、何が言いたいんだ?


「商人のタケルだ。で、何か用か?」

「うむ。我らは、貴族連合を作っておるのだが。その助けを頼みたいのだ」


 助け?


 どうやら、派閥というか、そういう団体に所属してほしいらしい。なにいってんだろうな、こいつら。


「その連合は何をする組織だ?」

「そうだな、領地に湧き出てくる魔物を討伐したり、国に命じられた盗賊の捜査、殲滅などだ」


 変な話だろうよ、それ。

 それなら、連合なんか作らなくてもいいはずだ。それぞれ騎士団もいるだろうし、国の依頼ならなおさらだ。


「なるほどな。俺にはなんのメリットもない話だ。それに意味のないことをするつもりはない」

「意味がない? なぜだ、領民のために戦う事が意味がないのか?」

「違う。領民のために魔物と戦い、盗賊を殲滅するなら、連合でなくてもできるだろうと言ってる。それほど仲良しなら、必要な時に助け合えばいいだけ。いらぬ経費をかけることはない。俺だって、タダじゃない。かなりの金が必要だが、それこそが領民の肩にのしかかるんだ。無駄っていう意味分かるか?」

「ぐぬぬぬぅ。さすが、タケル殿は頭が良いな。ならば、助けがいるときには……」

「そういうときに国を頼れよ。騎士団もデカいのがある。国王はダンジョンのこともよく知ってるから、相談すればいい。俺みたいなガキに話すことじゃないだろ?」


 わざとそう伝えておく。

 すごく悔しそうだけど、バツが悪そうだった。


 そういうやつらが少しずつ増えて来た。

 家族で参加しているらしいので、子供もそこそこいる。そいつらが、ハクたちに興味を持ち始めた。こうなるとなかなか面倒だ。


「ねえ、この小さな猫さん、ほしい」

「そのドラゴンを差し出すのだ!」

「私はこの綺麗なスライムさんがいいな~」


 言いたいことを勝手にいってるが、それぞれが眷属たちの取り合いを始めた。

 うちの子たちはそんなこと、全く気にせずデザートを貪ってるけど。


 俺もとりあえず、無視しておいたのだが、我慢できなくなってきた。


「おい、そこのドラゴン。俺の下へくるのだ。早くしろ!」

「おい、猫。お前は俺が飼ってやる。主が変わるんだ、早く来い」

「スライムさん、私がじゃんけんで勝ったの、だからこっちにおいで~」


 最後のガキはニジを抱きあげた。

 おやめください、と侍従が止めているにも関わらず、だ。


「おい、侍従。俺たちを誰だと思っているのだ。邪魔だ、どけ!」


 一番大柄なガキが侍従を蹴りつけた。

 後ろに立つ騎士は知らん顔だ。


 ガタン! と椅子を跳ね飛ばして立ち上がった俺は、無言のまま、ニジを手招きする。

 ピョン! とニジは俺の腕に戻って来た。

 アレックスは俺の肩に乗り、ハクは椅子の上をトコトコ歩いてくる。


「なにするの、そのスライムは私のなの!」

「そこの男、俺たちのものを返せ!」


 何言ってんだ、こいつらは。


 あまりに酷い言い方に堪忍袋の緒が切れた。うん、きれちゃったよ。


 蒼竜刀を取りだし、鞘から抜いてその場にあったデザートをワゴンに移動させる。せっかく作ってくれたから。

 

 ガキどもは、数歩後ろに下がった。

 当然、あいつらの護衛騎士も剣を抜いた。


「お前ら、いい加減にしろよ。俺の眷属たちを勝手に飼うだの、こいだの。なんでも言う通りになると思うな!!!」


 シュッとテーブルの中央に蒼竜刀を滑らせた。

 

 ドシーン!


 地響きの様な音がして、全員がこちらを見る。


「タケル様。何があったのでしょう。お怪我はありませんか?」

「ああ。宰相、俺は戻る。ここも同じだな、貴族のバカガキが言いたい放題。信じられないし、それをいさめない護衛、親。悪いが、こいつらを止めた侍従は蹴られてる。あとで治療してやれ。ウイル、パトリオット、俺は空間に戻る。お前たちはどうする? 行かないなら俺はこの国を出る」

「え? ええと。すぐに荷物を持ってきます。少しお時間をください」


 ああ、と空間を開いてハクたちを中に入れた。最後に入るハクは、の元の大きさに戻り、金色に輝く瞳でガキたちを射抜いた瞬間、広間にいた全員の動きが止まった。ガキたちは腰を抜かして震え、護衛の騎士たちは剣を握る手すら動かせない。これが『本物の強者』の気配だと、嫌というほど分からせてやったんだ。



 慌ててやってきたのは国王と宰相、そして執事長だ。

「タケル、何があったのだ! その者たちが何かしたのか?」

「ああ。やらかしてくれた。このガキらは、俺の眷属たちをそれぞれ自分のものにすると、飼うから、私のものだから、早く来い。そんな風に言ってた。余りに腹が立ったから、テーブルを切った。あ、そうだ。侍従。料理長が作ってくれたデザートだけど、かなり旨いから、残ったのはもらっていく。これに入れてくれ」

 そう言い、保存容器をいくつか取り出せば、すぐに対応してくれる。


「だから、陛下。俺がキレる前に引き上げてやるよ。そうでないと、このガキたち、その後ろで護衛だろうけど、俺に対して剣を抜いた騎士たち。そして、その親。全部始末する。あと、もうひとつ。貴族連合というやつらが俺に話しを持って来た。話を聞きながら、鑑定し魔眼で確認した。あいつらは反逆の恐れありだ。だから俺を引き入れて懐柔しようとしたが断った。国王も宰相も、使用人たちも良いやつだし、洗練されてた。だが、貴族たちは一部を除いてクソだな。まあ、急ぎ精査した方がいいぞ」


 俺の前に、保存容器が積まれた。

 どうやら、ゆったりと入ったようでよかった。

 それをストレージに入れた時、宰相がやってきた。


「誠に申し訳ございません。そのような輩がいるとは気づいておりませんでした。反逆を企てたやからは?」


 あそこにいる五人だ、と指させば固まってたぞ。

 あと、ガキの親たちがやってきたが、こいつらも役立たずだな。ま、俺を取り込もうとしたわけじゃなかったが、ガキの前に立ち、刀をかざした。

 申し訳ございません、と土下座するのは貴族たち。キョトンとしているガキたち。ダメだな、これは。


「こら、ガキ! お前らは偉いわけでも何でもない、タダのガキ。偉いのはお前の親に貴族位を引き継がせた先代たちだ。勘違いするなよ。なんでも思い通りになると思ったら痛い目を見る。お前たちの護衛など、俺のひとふりで終わりだ。護衛も頭が悪いしな。俺に剣を向けるんじゃなくて、いさめるくらいのやつじゃないとクソガキの子守はできない」


 ふんっ! と踵を返せば、宰相と国王が本当に申し訳ないと、頭を下げている。それを見た利口な貴族たちは、駆けつけて共に頭を下げていた。バカはそのままだな。


「俺は言ったはず。家族に対しての態度を。気に入らなければ、この国を殲滅するとな。けど、国王と王妃、宰相、王宮の使用人たちの知ったやつらは気に入ってる。これはどこの国に対しても同じだ。俺はいらぬ人付き合いはしない。あと、変な組織も気に入らない。だから俺と眷属たちのことはかまうな。何かあるなら、国王か宰相に相談すればいい」

「本当に悪かった。通達は回しておったのだが、子供がまさか。許せタケル」

「自分のガキが優秀だと思ってるんだろうけど、金持ちの我が儘なガキほど面倒なやつらはいない。うちの家族、眷属は頭がいいぞ。バカガキなんか比べものにならない。庭の草引きでもやらせればいい。使用人の大変さがわかるだろうからな」


 そうだな、と国王が頷き、宰相の鋭い視線が貴族たちに突き刺さる。



 遅くなりました、と駆け込んで来たのは、ウイルたちと文官たちだ。


「遅い、ウイル。早く入ってくれ」

「申し訳ない!」

 

 そう言って、空間を開けば中に入っていった。


「じゃあ、俺もここから空間に入る。侍従たち、本当にありがとう。お前たちはとても優秀で心地よかった。じゃあ、また会うことがあればな」

 

 国王に手を振り、宰相にも手を振って空間に入った。当然、しっかりとオートロックされたけどね。



「タケルさん、本当に申し訳ありませんでした。あんな事になってるなんて」

「もういいよ。とりあえず、俺は国王も宰相も気に入ってるからさ。これから先はわからないけどね。相手の出方したいだろうね」


 皆で椅子に座って話すことにする。


 ウイルは辺境に戻って、元通り探索者協会の仕事をするらしい。文官たちは、代官と共に、辺境の財政見直しをして、内務の安定と外交について再考するらしい。

 パトリオットに聞いてみれば、できれば同行させてほしいという。ボルック国に行くのは理解しているので、俺たちが解体などに時間をかけている間に、ギルドの内部調査をするそうだ。それ以外にも、冒険者の査定。これはなかなか厳しいことになりそうだね、冒険者たちは。


「一緒に行くのはいいけど、宿の確保は自分でやって。俺たちは基本的に空間で寝泊まりする。いつもギルドの馬場で出入りさせてもらってたけど、今はどこでもできるようになったから、空に上がってもいいし」

「なるほど。それならば、今まで通りギルドを御使いください。問題ありませんので」

「それはありがたい話だけど、もし馬がいたら困るしね。冒険者たちには迷惑かけたくないし」


 その時に考えると伝えておく。まあ、現実としてそうだしな。

 

 パトリオットは冷や汗を拭いながらタケルの背中を見ていた。もしタケルが本気で殲滅行動に移っていれば、この王都は今頃火の海だっただろう。世界ギルドとして、彼を全力で守り、かつ怒らせないようにしなければならないと、彼は深く心に刻んだんだ。


 パトリオットは俺たちの依頼について、世界ギルドに話をしてきちんと内容を精査し、向こう側との話もしてくれるそうだ。まあ、そのあたりは俺たちはノータッチ。契約しないと始まらない事だしね。



 じゃあ、とりあえず、探索者協会の馬場で空間を開くことにした。

 ユーラスト国ダンジョン都市の探索者協会馬場に入り口を開く。


 うん、大丈夫だね。なんとなく繋がったってわかるんだよね、不思議でしょ。


 オープン!


 おお、静かに引き戸が開いてゆく。既に結界は張ったから問題ないよ。


「タケルさん、今回はいろいろありがとうございました。またお目にかかれるのを楽しみにしております」

「うん。ウイルも頑張ってね。俺たちも懐かしい街に戻って魔物を解体してもらわないと、そろそろ肉がヤバイ。そのあとも、何だか忙しそうだし。でもね、基本的には旅に戻るんだ。だから、ウイルも頑張って。何かあったら連絡してね」


 ありがとうございます、と深く頭を下げるウイルに手を振って引き戸をロックした。



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そりゃぁ勝手に家族を取り合いされたら怒るわぁ
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