第52話 俺たちを取り込むための食事会という名の茶番だな
各国のギルドから助けてほしいと連絡があるらしい。もちろん、国王からの依頼になる。当然、魔物によっても違うのだが、ほぼ高ランクである。魔物としてもAランク以上。討伐に成功すれば、最低でも白金貨一枚から。それだけではなく、周りにいる魔物がいた場合は、それも討伐する。当然、追加報酬が発生するわけだが、それは世界ギルドが鑑定するらしい。依頼料も国から直接ではなく、世界ギルドが支払う。そうでないと、条件と違う場合があるので、トラブル防止策らしい。
それにしても、依頼料が安すぎるだろうよ。
白金貨一枚って。魔物を指定してもらわないとできない相談だ。
それに、俺は基本的に王族は信用していない。例えば、ここユーラスト国や、以前滞在していたボルック国などは国王との面識があるし、悪いやつらじゃないのは知っている。
だから、世界ギルドが保証するか、パトリオットが知る国じゃないと無理だと答えた。そして依頼料の問題。討伐対象の魔物の特定をするかしないか。しないなら、到底その金額では受けられない。
そう吐き出した。正直な気持ちだしね。
次に行きたいところは、とりあえずボルック国で魔物の解体を依頼したいのと、ダルゼニア王国の魔道錬成師を訪ねたいことだ。転移すれば、ボルック国にはすぐに向かえるけど、うちの子たちが運動不足なので、街道を部分的にでも移動したいと思っている。ダンジョンで成り立ってる国は魔物の解体は期待できないから。
まあ、いつも通り、気の向くままだと伝えてみた。
「なるほど。それでは、ここからボルック国はかなりの距離がありますが、どちらから行かれますか? マッカラン国からも依頼があり、ローランリック王国の西の国で、ダンジョンはありません。ミッドアス大国は世界二位の大国ですが、両辺境に大型ダンジョンがあります。ですが辺境なので、森も広いんです。そこの鉱山近くにはいろんな魔物が出るそうです。辺境から辺境へ移動する街道沿いの森にも魔物が多い。そのあたりを一掃してほしいと依頼が来ています。他にもいろいろありますが……」
ふむ。で、今どれくらいの高ランク冒険者が活躍しているのかと問うてみた。おそらく、それほどの人間はいないと思うが。
やはり俺の予想通りだった。
ほとんどの高ランクが嫌がって引き受けないそうだ。それならダンジョンにでも潜った方が効率的、と言う考えらしい。まあ、そうだろうけど。
「まあ、気が向いたら受けてもいいけど。なあ、皆。世界ギルド協会が魔物討伐依頼だって。どうする? いろんな国があるらしいけど」
「……なるほどね。私も思ってたんだ、できれば以前のように毎日旅をして進めば楽しいって。ニジもそうしたいっていうし、アレックスは元々冒険者だから楽しみにしてる。そのついでならばいいんじゃないの?」
「さすがだね、ハク。俺も同じこと考えてた。ダンジョンは楽しくない。だから、ハクには迷惑かけるけど、地上も空も楽しんで進みたい」
「あるじぃ~、しょら、あれくち、とびる~」
「そうだな。アレックスにも頼もうか。でも、ハクはどうやって飛ぶ?」
「小さくなってもいいよ。誰かの背中に乗ることなんかないけど、それも楽しそうだね」
ニジも楽しそうにフルフルしてる。
「じゃあ、パトリオット。とりあえず、一つの国を受けてもいい。地図で確認してくれるか」
はい、と現在地を指さす。そしていくつかの国を確認してゆく。かなり遠いな。
それなら、一度ボルック国へ戻るか。
最初はどこから手をつければいいのかと問うてみれば、できればミッドアス大国希望らしい。それなら、ボルック国との距離も問題ないかな。
俺を巻き込み召喚したローランリック王国のことは勇者がいるので関わるつもりはない。
「そうだ、依頼料もだけど、狩った魔物はどうなる?」
「もちろん、それは討伐者のものです。依頼料については、世界冒険者ギルド協会と相談して決めますが、Sランクの魔物に関しては別に討伐に対しての対価はお支払いします。もちろん、魔物はタケルさんたちのものです」
「なるほどね。じゃあ、依頼料をせいぜい期待しておくかな。あと、この依頼が政治絡みだったとき。例えば、俺たちを国に取り込むためとか戦争の足がかりを作るためとか。他にも家族たちを傷つけたり。そういうことがあれば途中でも依頼は拒否する。そして、対象の人、国、組織などは殲滅するから理解してほしい」
「承知いたしました。それも依頼契約書にきちんと書き入れるようにいたします。一度は国王と会うことになると思いますが……」
「え゛ーそれは断りたいけどなぁ。じゃあ、会うのはいいけど、特殊事案だから、依頼料は世界ギルドが保証することにして。もし、俺が政治的に利用された場合は、途中で依頼を放り出す。そして殲滅行動に移行する。それが受け入れられるなら、だけどね」
わかりました、とパトリオットが大きく頷いた。
そろそろ、とウイルに連絡が入る。
じゃあ、食事会だぞ!
空間を出る前に、ニジにマジックアイテムを渡して説明した。理解してくれたようで、口に入れて、従魔の首輪と同じところに保存した。試しにと発動したようで、しっかりとニジ全体に結界が張られた。
うん、これなら大丈夫か。
「あるじぃ~、こり、しゅごいね。あいあと」
俺が安心なだけだからと笑っておく。
ついでに、と言うわけじゃないけど、ハクとアレックスにも取り出してみた。
ハクは脚にすっぽりとつけている。飾りみだいでかっこいいな。ふん! と魔力を通したんだろう、脚先が変化して、脚先のカバーみたいなのが出てきた。それはスリットが入っていて、それぞれが鋭い刃物になってる。鑑定すれば、ミスリル合金の刃だ。自動再生機能付き。本当にすごいな。
アレックスは?
おお、尻尾の先に輪っかが嵌まってるな。ハクのと一緒で、発動しないときは、飾りの輪っかだ。その大きさで魔力を流したんだろう、とげとげのすごいのが生えた。これでデカかったら大変だぞ。
ぐぐぐと少し大きくなったけど、輪っかも一緒に大きくなってる。鑑定して見れば、自由に変化するらしい。もしかして、とハクのも確認したら、同じだった。ハクは小さくなって確かめてるけど、やはり輪っかも調整されている。ハクの体格が変わるたび、ミスリルの輪っかも生き物のように脈打ち、一分の隙もなくフィットしていく。ハクが少し足に力を込めると、スリットから鋭い爪がシャキーンと飛び出した。……これなら、どんな硬い魔物の皮膚も紙みたいに裂けそうだなどちらも、つけている者が外さないと使えないらしい。
但し、眷族などの場合は主が解除できるんだって。うん、すごいよ、さすが魔道錬成師だな。
あと二つはストレージに入ってる。四組もらったからね。ニジにも使いようがあるかもしれないし、ニジと相談してみよう。
宰相とウイルが連絡を取り合い、空間を王城の入り口外側に繋ぐことにした。
じゃあ、とイメージして空間を開くと、貴族たちが続々とやってきていた。
ウイルたちが外に出て、俺たちも玄関に出てから空間を閉じた。
貴族たちが固まっているところに、宰相がやってきた。
「ヤマト様。本日はご無理をお聞き届けいただき、感謝いたします。どうぞこちらへ」
うん、と俺たち家族は宰相に続く。その後ろにはウイルたち二人が続いた。
だだっ広いパーティー会場に通された俺たちは、国王と王妃たちが座ると思われる場所から少し下段で、近い所に広いテーブルがあり、そこに陣取る。
俺の隣りには小型になったハク。そして子供用の椅子を用意してもらっているのはアレックス。二人に挟まれた俺の前には、ニジがいる。
どんどん運ばれてくる料理を目に、ハクたちは嬉しそうだ。
当然、ハクとアレックスには専用侍従がついているので、俺もニジと一緒にたくさん食べられそうだ。
どうやら、貴族たちは立食パーティーのようで、それぞれが執事や侍従を連れている。当然のように貴族たちはふんぞり返っているけどね。
周囲の貴族たちは、遠巻きにこちらを凝視している。冷や汗を流す者、不気味なものを見るような目をする者……。だが、ハクがクリームをペロリと平らげた瞬間、その威圧感に気圧されて数歩下がったのが見えた。滑稽なもんだよ
そんな様子を見ているとき、国王がやってきた。
「皆のもの。今日はよく参った。我が国に、素晴らしい探索者がきているのだ。あのランクSランクダンジョンを最下層まで攻略した、タケル・ヤマト殿である。そして、その眷族たち。無理をいって、皆に紹介をしたいと出国を見送ってもらった。眷属たちの事もある故、テーブルは別になっておるが、機会があれば話していただければと思っておる」
なるほどね、そういうことか。
表向き、この国に取り込むことはできないかもしれないが、もしかしたら、ということか。まあ、大変だな国を運営するということは。
「では、ヤマト様。何かひと言」
やなこった、とクビを振った。それで理解できたらしい国王と宰相。頭がいいな、二人は。
「では、食事を始めよう!」
乾杯! と国王の声でグラスが上がる。
すぐにワイワイと始まった宴会で、ハクとアレックスがこちらを見る。
「食べていいぞ。侍従にいって取り分けてもらえばいい」
嬉しそうな二人を見て侍従に視線で合図する。そんな俺の上着を引っぱるのはニジだ。
「ごめん、ええと。ニジは何を食べるんだ?」
「んとね~おにくほち。あと、おいちもの~」
わかった、と肉を皿に取り分けてやる。そしてエビや白身魚のマリネみたいなものか。後はふっくら焼きたてのパン。そしてミルクと果実水の瓶を置いた。
うまうまな顔をしながらフォークを手にたべ始めたニジ。それなら、と俺はステーキを取り分けてもらい、カットする。時々、ニジの皿に置いてやれば、嬉しそうだ。
しばらくは家族で楽しく食事をした。
俺たちは酒を飲まないので、一時間も食い続ければ手持ち無沙汰だ。
声をかけてくれた侍従に頷けば、デザートタイムだな。
生クリームで包まれた感じのケーキは十種類以上ある。それぞれが全ての種類を食べて、好きなものをお代わりする。かなりうまうまなので、俺も没頭していた。
この後は、寒天のようなゼリーのような感じのカップ入りのものを用意してくれている。フルーツが入ってるんだ。そしてホットパイという名前の洋風どら焼きみたいなもの。前世で見た冷凍ホットケーキにクリームとフルーツを挟んだものと考えればいいかな。
それらを食べていれば、数人が前に立った。
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【あとがき】
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