第48話 なんだか眷属共々国王に気に入られたようだ
アレックスはぐんぐん大きくなって、あの古竜ほどの大きさになった。やっぱりデカいな。
飛翔で上がって翼の間に立つ。
『なあ、俺はどの辺にいればいい?』
『ふむ。どこでもいいですが、落ちないようにお願いします。もっと上でもいいです』
『それなら、とりあえず。よっこらしょ。ここなら前が見える。もっと後ろにも結界を広めに張ってもいいか?』
『なんの問題もありません。くつろいでください。場所さえわかればよいです』
『悪いな、お前にだけ仕事させて』
『とんでもございません。もっと、私たちを使ってください。それが我ら眷族の喜びです』
あはは、ありがと。
じゃあ、と俺は今乗っている場所に結界を広めに張る。翼の間までを移動できる様にしてみた。もちろん、這って移動できるくらいだけど。
『では、空に上がります』
頼む、とふわりとした浮遊感があった。
これ、気持ちいいな。乗り心地もいいよ。
地上で大きく手を振る代官に振り返して、王都に向けて出発した。当然、俺のナビはお仕事してます。
それから一時間たった頃、どうやら半分くらい来ているらしい。あと、どれくらいかなぁ。
『ハク、今半分くらいだぞ。もう風呂から出たか?』
『え? 早いね。じゃあ今から出るよ。のんびりしていたら旨いものも食えないし』
あはは、面白いよハク。
いろいろとアレックスと話しながら飛んでいる。
アレックスは、父の最後はどうだったかと聞くので、詳しく話してやった。潔い決断だったと。竜神になるべく、光の粒になって消えたと。だから、俺たち全員、竜神の加護がついてるぞと伝えれば、感慨深げに「そうですか」と大きな尾を左右に振った。
自慢の父親だな、と言えば、「はい」と嬉しそうに答えた。
そうこうしている間に王都の門が小さく下に見える。
『ハク。王都に入った。いつでも出られるようにしておいてくれ。ウイルたちにも伝えて』
『了解。既に準備はできてるから問題ないよ』
わかった、と前を向く。
『アレックス、王都門は気にせず飛んでくれ。中央にあるデカいのが王城らしい。庭かどこか開けておけと言ってあるから、上空で確認しよう』
『承知。では、王城まで高度を維持します。そうでなければ、民が驚きますので』
『それはそうだな。じゃあ、降りるときには不可視結界を張るか。その方がいいだろ。外から見れば、黒い塊だけど』
『なるほど、承知しました。では、もう少しお待ちください』
うん、とミニチュアのような王都を見ながら進んだ。
高度を保ったまま下を見れば、数人が国の旗を振っている。あそこか。
『あの旗の場所に降りることはできるか?』
『できますが、花壇が少々邪魔かと』
『放っておけ。建物を壊さなければいい』
『あはは、わかりました。では、地上に降りましょう』
<不可視結界>
周りが薄暗くなる。
中からは透けて見えるので、問題ない。
ゆっくりと降りてゆくアレックスは、静かに地上に降り立った、つもりだったのだろうが、ドドーン! と地面が揺れた。まあ、仕方がないよ、これだけの巨体だから。
正面にいるのは、国王か?驚いてるけど、嬉しそうだな。
結界を解除して、飛翔で地上に降り立つ。
オープン!
空間を開けば、ハクが背にニジを乗せて出て来た。後ろから来たのはウイルとケビンだ。
クローズ!
ゆっくりと閉まってゆく空間は、すぐに見えなくなった。
それと同時に、アレックスがスルスルと小さくなっていつもの大きさになる。そしてパタパタ飛んでハクの背に乗った。
「お待ちしておりました、ヤマト様。謁見の間に案内いたします」
「うーん、面倒だね。あのテラスに直接行くから、こっちきて」
は? という男を引き寄せて、ハクにふれる。ウイルとケビンも、俺のまねをしてハクにふれた。
「ハク。あのテラスに転移してくれ」
「承知」
ふっと一瞬でテラスの上に降り立つと、それに気づいた男が駆けて来た。
「ウイル! ここからかい。どうぞ、皆さん。入ってください」
最初に入ったのはウイル。そして俺。
後に続くのはデカいままのハクとニジ、アレックス。最後にケビンが窓を入った。これって、窓って言うか壁を切り取ったような広さだな。
陛下の前に敷かれた赤い絨毯の上で臣下の礼をとるのはウイル。少し後ろにはケビンだ。
「よく参った。して、タケルは?」
後ろからひょっと顔を出す。ハクで見えなかったらしい。
「おおお、タケル。こちらへ来るのだ。此度は世話になった」
当然、俺は立ったままだけどね。
「いや。俺個人としても許せなかったし。ウイルが切られて、何かがブチッとキレたんだ」
「切られた? 大丈夫なのか!」
「ご心配ありがとうございます。タケル殿が最高ランクのポーションと、戦っている間にも治療魔法をかけてくださいましたので」
「なるほど、其方は治療も使えるのだな」
「タケル殿。私は宰相のルクスと申します。お見知りおきを。映像を記録したものがあるとお聞きしましたが」
「それはウイルに聞いてくれ」
こちらに、と手に取ったんだけど、うちの子たちは暇そうだな。
「それでは、確認させていただきたい。今からテーブルを用意いたしますので。従魔の方々はいかがされますか?」
「そうだな、どうする、お前たち」
「私は身体を小さくすれば、ソファに座れるよ」
「同じでよろしいかと」
「ニジも、しゅわりちゃい~」
「ということなんだが」といえば、すぐに、とテーブルと椅子のセット、ソファセットなどが運び込まれる。
すごいな、この速さは。
ソファセットが置かれると、ニジがテーブルにぴょんと跳んだ。三人掛けには、思い切りちいさくなったハクがストンと腰を下ろす。といっても、姿は猫だけどね。隣りにはアレックスが両足を投げ出して座った。
「ふむ、身体の大きさが変えられるのか。すばらしいの。何を食するのだ?」
「何でも。本来は魔物を食ってたけど、主のメシが旨すぎて、今は人のご飯を食べるよ」
「そうか。では、菓子はどうだ?」
「うん、大好きだよ」
ハクの声に侍従と思われる男が山盛りの菓子を持ってくる。ミルクや果実水も出されたのだが、俺はハクの前に飲み物用のボウルを置いてやる。当然、すぐに何がいいかと聞いて入れてくれるよね。
ニジはテーブルに座って、小瓶のミルクをゴクゴク飲んでいる。アレックスも果実水をゴクゴク飲んでるけど、すぐにお代わりだね。
ハクの器を取り出して、菓子を分けようと思ったら、侍従がやってくれるって。嬉しいなぁ。
俺たちはテーブルについて、旨いケーキを口にする。これ、むちゃくちゃ旨いぞ。
ウイルは上品に、ケビンもそれなりに。俺だけ大口開けて食う。まあ、探索者だしね。
ひとしきり食ったハクはごろんと横になった。じゃあ、とアレックスはテーブルの上に乗って菓子を食う。ニジもお腹いっぱいになったらしく、『あるじ、おなかいっぱぁい……おやちゅみなちゃい……』そう言って俺の指を一回キュッと握ってから、ハクの毛並みに埋もれていった。その無垢な姿に、国王すらも頬を緩めていた。
俺も一応、腹は落ち着いた。
今はミルクを飲んでいる。その間にちびっ子たちを見て、浄化しておく。アレックスはまだ食ってるけど、俺の方を見た。
「いいぞ、思う存分食え。お前はずっと飛んでくれたんだしな」
クリームだらけの口を開けて嬉しそうに笑った。あはは、とんでもないことになってるぞ。
「それで、ウイル、映像を見せてくれるか?」
ああ、と答えたウイルは、辺りを見て広い壁に映像を映し出す。よく見えないな、と室内に不可視結界を張った。
おお! と皆が驚いてるけど、国王は真剣だ。
最初からのやりとり、ウイルが騎士に切られたとき、そして結界を張って治療、ポーションの治療。
そのあとは、俺たちのやり取りが写っている。
バカ領主は偉そうに咆えてるけど、眷属たちと俺で、殲滅するところもハッキリ写っていた。
俺、あんな風に騎士たちの間を切り捨てながら駆け抜けたんだな。意識してなかった。あはは、これはヤバイだろうよ。
ハクたちもそれぞれ上手に戦っている。殺さないようにと気を使ってるね。まあ、殺さない場所をお願いしたから大変だったろうけど、いい経験だよ。
それにしても、あの男はだれだろう。デカい男も一緒に見ているんだけど。ちょっと気になるな。それに、むっちゃ驚いてるぞ?
全ての映像が終わった時、国王は頭を抱えた。
「ウイル、君はもう大丈夫なのだな?」
「はい。タケルさんの治療とポーションで完全回復しております」
「ふむ。そっちのケビンだったか。其方は大丈夫か?」
「はい。おかげ様でタケルさんの結界で守っていただきました」
「ふむ。やはりタケル。其方は素晴らしい漢だな。我の側に欲しいが、おそらく受け入れぬであろう。ならば褒美をとらす。そなたたちと従魔たちに対しての褒美であるが、何が良いか?」
「陛下。うちの子たちは従魔の首輪はしてるけど、従魔じゃない。眷族だ。俺の家族だ」
「なるほどな。眷族か。それは素晴らしい。では、眷属たちにも好きなものを取らす。何がよいかのお」
「それなら、マジックアイテムが欲しい。この子たちの防御の足しになるようなものがいいな」
「ふむ。わかった。では、後で宝物庫に案内させよう。宰相、良いな」
はっ、と頷いたね。
「もうひとつ聞きたいことがある。冒険者ギルドの話である。世界ギルドに連絡して一応、話はした。だが、余では要領を得ぬ。それで、世界ギルドの役員がおるのだが、詳しいことを話してくれるか?」
「うーん、いいけど。ハッキリしてくれるならそれでいい。今話せるのか?」
宰相が合図をすると、一人のデカい男が入ってきた。こいつ、あの男だ。
「失礼致します。私、世界冒険者ギルド協会執行役員の、パトリオットと申します。よろしくお願いします」
「なるほどね。少し待ってくれ」
待たせておいて、俺は魔眼を使う事にした。
魔眼発動!
ほう、この男本物だな。元SSランク冒険者か。三十歳で引退して、今は世界冒険者ギルド協会執行役員をしているのか。公明正大、平等か。これなら大丈夫だな。
「悪い、確認させてもらった。話しても問題なさそうだ」
「えっと、確認ですか? なるほど、どうやら魔眼をお持ちのようです。これは隠し事はできませんね。それでお話を聞きたいのですが」
俺は、余計な人間を排除してもらい、謁見の間に防音結界を張った。
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【あとがき】
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