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第46話 強欲な辺境伯と魔法使いとのご対面といきましょう

 じゃあ、俺は片付けをしてから風呂に入ろう。

 結局、ドロップアイテムの話をすることにはならなかった。でも、それでいいじゃないか。今の所、困っているものはない。

 あとは、従魔の首輪をあわせてみることくらいかな。


 もう夜の十時なので、今夜は寝る方がいい。

 風呂でさっと洗って俺もベッドに潜り込んだ。




 朝になり、早々に準備を整えて、俺たちはウイルを訪ねた。


「少しお早いようですが、どうされましたか?」

「ちょっと聞きたいことがある。お前、貴族だろ?」

「え? ええ、一応そうですが」

「ふむ。それでどこの家だ」

「どうしてそのようなことを?」


 俺が気になったのは、こいつの素性。

 今日の成り行きによっては、領主の舘を潰すつもりだ。そうなれば、こいつ自身や身内に迷惑をかけることになる。だからだ。


 以前の鑑定では出なかったが、さっき鑑定すれば、公爵家三男だった。これはどう判断するかによって話が変わる。


「ええと。これは職員たちにも内緒なのですが、私は国王の遠戚であるブルードル家の三男です。跡目争いと関係ないので、長兄が探索者協会に推薦してくれました。もともと、冒険者に憧れはあったのですが、知識ばかりで剣の腕はイマイチでしたので、感謝して話を受けたんです」


 なるほどな、そういうことか。


「それなら、国王か宰相と話ができるか?」

「ええと、陛下との連絡は宰相殿を通していますが、なぜ?」


 なるほど。

 宰相のことを問えば、長兄の学友で同じ年らしい。子供のころからよく遊んでいたそうで、辺境内のこと、治政などの報告をしていたという。最近の辺境騎士団の横暴もきちんと報告しているし、当然俺の事も伝えているって。

 それはいらんことだけど、まあ、いいか。


「昨日の騎士たちの言い分を聞いて、大体想像がついたが、辺境伯のやりかたは正直言って嫌いだ。俺と話した男、あいつもただ者じゃない。辺境伯を操るほどの能力がある魔法使いだ」


 遠隔で魔眼を使ってみれば、領主の背後から伸びるどす黒い魔力の糸がはっきりと視える。それを操っているのは、あの隅でにやけているとことだ。……胸くそが悪い。糸ごと叩き切ってやりたくなる。


「操る、ですか?」

「ああ。操られてるな。俺は自分の家族、そして仲のいい知り合いを傷つけるなら我慢する気はない。辺境伯と正面から打ち合うつもりだ。俺はこの街の住人でもないし国民でもない。だからと言って自分に振りかかる火の粉を払わずに出て行く気もない。ずっと追われるのは嫌だしな。だから、いざと言うとき俺は我慢しないと伝えてほしい」

「な、なるほど。少しお待ちいただけますか、今から話をしますので」


 ああ、と皆が食ってる菓子を俺も口に入れてみる。これ、クッキーだけどしっとりしてるな。

 あ、その間に。


「アレックス。この従魔の首輪をつけてみて。多分このサイズであうと思うから」

「これはヒヒイロカネでしか。すばらしいしゅ、あるじ」

「ハクもニジもつけてるから、お前もな。でも、身体の大きさが変わるから、伸縮自在の魔法を使おうと思ってる。とりあえず、かけるぞ」


 大きな頭を通してみれば、腹までぶら下がったけど。 じゃあ、やってみるか。


 ハク、アレックスのヒヒイロカネ製従魔の首輪。身体の大きさが変化するごとに同じように変化する。強度は保ったままで。俺と仲間以外は取り外しできない。

 

 しっかりとイメージしてみた。それなら、魔法はこれしかないだろ。


<伸縮自在>


 するすると従魔の首輪が縮まって、今のサイズなら動いても違和感ないくらいになった。今は小さいサイズのハクも同じだ。

「主。私のも小さくなったよ」

「ああ、同じにした。ニジはそのままでいいからな。

 メダルがキラリと光っているのがかっこいいんだよ。

「失礼します、タケルさん。今、宰相殿と繋がっておりますが」

「ありがとう。初めまして、俺はタケル・ヤマトだ。話は聞いたか」

『はい。しっかりと。何分、管理が行き届かず申し訳ないのですが、何か起これば気にせず暴れていただいて結構です。こちらに国王陛下もおられます』

『タケルと申すか。余はユーラスト国王である。此度はランクSの探索を終わらせたとか、誠に素晴らしく思うぞ。して、其方の言い分は理解した。辺境伯を操る輩、是非に退治してほしい。それは余が許可を出す。辺境騎士団も良くない噂を多々聞いておるゆえ、それなりの処分を考えておったのだ。それも、そのウイルバードと其方に任せる』


 ウイルバード?

 自分を指さしているのはウイルだ。なるほどね。


「そういってもらうと助かる。あの騎士団はいただけない。それにあの男も。どういう結果になっても、いいんだな」

『うむ。広い国を統治するということは大変なのだ。その上、ダンジョン都市。領主はやりたい放題になるとは思っておった。故に、頼めるか?』

「まあ、政治のことはそっちでやってくれ。俺は、俺に向けられた敵意はきっちり始末する」

『あいわかった。して、タケル。其方、一度王都にこぬか。我も其方にあいたいのだ』


 なるほどな、そういうことか。


「それはわからない。俺は、ローランリック王国に多少の遺恨がある。だから王族や貴族は基本的に全く信用していない。ここにいるウイル以外はな。だから、行く気になったらいく。そうならないと行かない。俺たちは旅がしたいだけだ。もう金もいらない。くだらないやつらとつるむつもりもないからな」


 ついでに、ここの冒険者ギルドのギルマスは少々痛めつける。俺の仲間が冒険者をやめるから、預けていた金を返してくれといったら、ボコボコにやられた。冒険者はなるのもやめるのも自由だろうよ。それを無言で殴られ蹴られして戻ってきたやつの方がどれだけ上だよ。


 そう言ってやった。さて、どう答える?


『そのようなことがあったか。では、それは余から依頼しよう。痛めつけて拘束してくれ。できれば、生きたままつれて来て欲しいが、ままならぬ場合は仕方がない。今から世界ギルドに連絡をいれる。其方が事を起こせば動けるようにしておこう』


 わかった、と伝えてウイルと交代した。


 はあ、つまらん。だが、水晶越しに鑑定した限りでは、国王と宰相は問題ない人物だった。何より、民を思う心があった。そのために街に密偵を放っているようだ。国民の意識として、守られているという感覚。これは経済が潤えば、民も潤っていくという宰相からの意見を受け入れた国王の性格だろう。

 ローランリック王国の国王のようなアホではないらしい。というより、宰相が頭の切れるやつなので助かっていると言うべきだろう。伯爵家の四男ではあるが、かなりの切れ者だ。まあ、この国の要といってもいいだろう。後は、貴族どもがどうなのか、だな。


「ふう。ハラハラしましたよ、タケルさん。陛下に対しての言葉遣いとか」

「別にいいだろ、怒られるのは俺だし」

「まあ、そうですけど。では、そろそろ行きますか。私が映像保存の魔道具を持って行きますので、今日の一部始終は確認できます」

「ふうん。それ、お前が持ってくの? 誰かに持たせた方がいいんじゃないか」

「ですが、私ひとりと……」

「別にいいだろうよ、俺が同行を求めたってことで。副マスターまで出かけるとダメか?」

「さすがにそれは。でしたら、他のものを。ケビンを呼んでくれ」

 

 ケビン? まあ、どんなやつか見てみるか。

 おっと、来たな。


「マスター、なんでしょうか」

「少し待ってくれ。タケルさん、この男はどうですか? 冒険者ですが、怪我をして。動けなくはないんですが、自分が不安だとやめたんです」


 ケビンをじっと見る。

 こいつ、冒険者やめたって、もったいないくらいだな。脚が悪いのか。だが、頭もいいし、なにしろいろんなスキルのランクが高い。嘘もつかない、貴族は大嫌い。いいじゃんか、こいつ。


「じゃあ、ケビン。ウイルと一緒に行ってくれ。頼むぞ」

「はい。頑張ります!」


 うん、と二人に馬車に乗ってもらい、ニジは俺の鞄に滑り込み、アレックスと一緒にハクの背中に乗って走り出す。

 馬車の後ならついていってもいいだろう。


『主、何か食べるものない?』

『あるけど、腹が減ったか』

『うん。そのあたりでもいいから、何か食べたい』

 

「ウイル、先に行ってくれ。ハクがおやつらしい」

「あはは、わかりました。では、門のところで待っていますので」


 頼むな~


「さて。何を食う?」

「ホットサンドとハンバーグサンドが欲しい」

 

 わかった、と地上に降りてそれぞれを口に放り込んでやる。飲み物は水をボウルにいれてやった。

 当然、アレックスとニジも食べるよな。

 二人はハクの背で食べてる。俺は立ち食いだ。


 十五分ほど食った後、やっと背に乗った。

 空に上がったハクは、馬車を追うように飛び始める。ウイルの気配をマップで確認していたので、そのまま真っ直ぐ進んだ。


 お、馬車が到着したところだな。

 ゆっくりと地上に降り立つハクを見て、驚いているが、そのまま中に通してくれた。


 馬車が停まった時、ハクの椅子を外してやれば、するすると小さくなったので抱きあげる。ニジはリュックに入ったので結界を張ってやる。アレックスは肩に乗って俺の頭を抱いている。すごいかっこうだな、とクスリと笑って、アレックスとハクに結界を張るように伝えた。当然、俺も張ったから大丈夫だろう。魔法が飛んできたときが厄介だからな。


 執事のような爺さんの後を付いてゆくのはウイルとケビン。その後を俺たちが付いてゆく。

 

 一際豪華なデカい扉は開いていて、その中には、でっぷりと太った、派手な宝石男が座っている。成金趣味だな。高級そうな椅子だが、悲鳴を上げている。指という指にはめられた指輪が、やつの強欲さをそのまま形にしたようで、見ていて吐き気がする。こいつらには、説得なんて言葉は無意味だろうな」


 俺は取られたくないので、剣はストレージに入れている。そう、ベルトごと。タップすれば一発で装着できることを発見したからな。


「お前がタケル・ヤマトか。この度、ランクSダンジョンを攻略したそうだな。さすがにお前のような子供だとは思っていなかったが、ご苦労である。では、ドロップアイテムをそこに出すのだ」

「なんで出す必要がある? これは俺のものだ。お前には関係ない」

「何を偉そうに言っておるのだ! 領主様が出せとおっしゃっておるのだ、出せば良かろう!」

「誰だ、あんた」

「私は、領内のキリルレッド伯爵である。早くするのだ!」

「だから~。嫌だっていってるだろ? 話はそれだけか? それなら俺たちは戻る」


 腹が立つ奴らだよ、ホントに。




*******************

【あとがき】

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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