第45話 小さな古代竜アレックスが大切な家族の仲間入りしたよ
ランクSは魔物自体の数はすくない、ランクが高いだけで。
ただ、ドロップアイテムはそこそこあった。
同様に読み上げる俺の声を聞き、数人が書き写している。四十分ほどして、やっと終わった。
それを見たウイルと副マスターが無言になってる。なぜだろう。ただ、最下層は古代竜ではなく、黒竜ということにしておいた。
我に返ったウイルだが、これのどれを売ってくれるのかと聞く。
まだ相談してないから明日、領主の舘から戻ってからでいいかと伝えておいた。
ここから馬車で三十分くらいかかるらしいので、どうやって行くかと聞かれた。さて、どうするか。
ハクもいるのだが、アレックスは乗れないだろうし。どうするかな。
「主。我は本来の姿になり、子供サイズになればハク殿の背には乗れないでしょうか」
「乗れると思うぞ。お前の元のサイズだと別に飛んでいけるけど、それじゃあ、攻撃が飛んでくるからな」
「では。我は己の本来の姿になりましょう。いざと言うときには、身体の大きさを調整いたします」
わかった、と返事をすれば、ウイルがクビをかしげている。
アレックスは立ち上がって、何かを呟いたと思ったら、スルスルと小さなドラゴンになった。
「え、あ、ああ!?」
「古代竜の子供だな。アレックスは少し銀色がかってるな」
「はい~」
あはは、かわいいな。
「こ、古代竜、でしたか。理由は聞きますまい。では、明日はその姿で?」
「そうなる。だからハクの背に乗っていく。アレックスは領主の舘を知ってるか?」
「はい、あるじ~」
「わかった。じゃあ、舘の門の前に馬車を止めて置いてくれるか。それならわかる」
「承知しました。では、時間は午後の三刻少し前くらいで」
うん、と俺はアレックスを見て、剣をと思えば自分のストレージに入れたらしい。あとは、鎧や荷物もせっせと入れてるね。
じゃあ、と空間を開いてゆっくりと中に入った。アレックスもパタパタと飛んできたので、ウイルに手を振って空間を閉じた。
前にも来たから知ってるよな、といえば、嬉しそうにハクの声がする方を見る。そしてパタパタ飛んでいった。
「ありっくしゅ、もろりまちた!」
「おう、戻ったね。その姿でいるんだね」
「はい!」
「そうか。じゃあ、風呂に入って。綺麗にして、新たな出発だよ!」
「はい!」
それを見て俺は思わず微笑んでしまう。
ちょっとした軍隊だぞ、これ。
器用にとび込んだアレックスは翼を広げたまま、尻尾で舵をとり進んで行く。
俺はその間に食事の準備をしよう。
今日は何を作ろうか。
俺はカレーが食いたいが、こいつらには白米よりもパンの方がいいだろう。バゲットにカレーをかけるかな。それもいいかもしれない。
じゃあ、とりあえずカレーを煮込みながらトンカツを作るか。それでカツカレーだな。パンが良いやつは、トンカツとサラダを添えて。
うん、それでいってみようか。
それからは、スキル先生にお世話になり、ジャガイモ、にんじん、タマネギの皮をむく。そして一口大にカットして。肉はマナバイソンでいいかな。
アクが出るから、マナバイソンの肉は、薄切りでいいか、角切りにするか。角切りの方が美味しいかも。それなら、肉を取り出し角切りに。もちろん、スキル先生にお願いします。おおまかな大きさを伝えて、発動。
寸胴鍋を取り出して、油を入れる。この鍋や盗賊から押収した日本でも見たことのある鍋だ。それを二つ用意した。
肉がカットできたものをフライパンで炒めては寸胴に入れる。
それを繰り返して野菜をいれて軽く炒めた後、水を入れてコトコト煮込む。
沸いてきたら、スキル先生にあく取りをお願いして、白米の確認をしよう。
炊飯鍋には炊きたてご飯が二個分ある。
それなら炊飯器で六合ご飯を炊こう。準備が終わればスイッチオン!
あはは、ここまでは簡単ですよ。
次にはトンカツの準備をします。
大量にカットしてあったトンカツ用のオークを取りだし、ホームセンターで手に入れたジャガードを手にバンバンとまな板に打ちつけるように叩いて行く。それも途中からはスキル先生がやってくれるって。アクを取りながらジャガード作業。すごいよ、先生!
じゃあ、塩胡椒を振り、小麦粉をはたいて、よく溶いた卵にくぐらせる。その後はパン粉つけだ。
この前は、ニジが手伝ってくれたなあ、と思い出しながら手際よく準備する。
あっという間にトンカツの準備ができました。
とりあえず、カレーは煮込むだけなので、端のコンロに二つ。その隣りで揚げ鍋をかける。そして、植物油をいれて火をつけた。
残りのパン粉付けを終わらせた頃には、油の温度がいい具合だ。
じゃあ、とさっそくデカいトンカツを投入。
鍋一つで、二枚しか入らなかった。大きな揚げ鍋だけど、とにかくトンカツがデカすぎる。もう、笑う程だね。
仕方ないのでもうひとつの揚げ鍋を用意して油を沸かすことにした。
次々と上がるトンカツを油切りのついたトレイに立てるようにおいて行く。その繰り返しだ。
カレーのルーを入れたら、混ぜないと焦げるので今はトンカツに集中する。
そろそろトンカツの終わりが見えてきた。
どれだけ揚げたんだよ、俺。残れば保存しておいて、サンドイッチに使うつもり。
さて、トンカツが終わった。
この後、カレーの火を止めて大量のルーを投入して行く。ルーを入れる側から溶けて行くので、いい感じだね。
二つの寸胴にルーを入れ終わったので、火をつける前に、風呂にしようかなぁ。
「そろそろご飯食べるよ。どうかな?」
すぐに出るとドヤドヤと出てきた。一応、タオルもおいてあるけど、誰も使わないよね。
出て来たデッキの上に温風を吹かせておけば、それぞれが乾かしている。
鍋をかき回している俺のところに最初に戻って来たのはニジだ。
「あるじぃ、いいにおいぃ~」
「そうだろ。これはカレーっていうんだよ。ご飯にかけたりパンにつけて食べるんだ。甘口にしたからニジでも食べられるからね」
「わ~い!」
あはは、大喜びだね。よかった、レックスが言った通り、普通にも話せるんだ。なんだかすごく嬉しいよ。
ニジはご飯で食べるらしい。
深めの皿があったかな、と探してみればありましたよ、戦利品に。
それを取り出して俺とニジの分を浄化する。後の二人はどうするか、聞いてからにしよう。
自分の分のトンカツをカットして、ニジは一枚を三つにカット。アレックスも同じサイズにしてみた。ハク用は半分にと思ったけど、ご飯にするならもう少し小さめがいいかな。じゃあ、三つカットを多めにした。
次に戻ったのがアレックス。
ニジとは違い、テーブルに座れるサイズに調整してポテッと座った。両足を椅子の上に投げ出してるのが可愛い。
子供用の椅子でも買うかな。
少しだけ毛の長いハクは時間がかかるので、一応、カレーのコンロを止めて、手伝いに行こう。
ブラシを持って鬣や尻尾の毛を梳きながら乾かせば、綺麗に早く乾く。脚もすぐに乾いたね。
最後に全体に風を強めに当ててからやってきた。
「皆、お待たせ。遅くなってごめんね。何だかいい匂いがするんだけど」
「そう。今日はカレーっていう食べ物だよ。俺たちの世界では、白米にかけることが多いけど、パンにつける人もいる。どっちがいい?」
「ニジ、ごはぁ~ん!」
「おれも、ごは~ん!」
「最初は私も白米を食ってみたいな」
「おっけ。トンカツをのっけて、カツカレーにしようと思ってるけど、いいかな?」
賛成~ときこえたので、ハクのデカいボウルに炊飯鍋を取り出して白米を入れる。その上にトンカツを二枚分、乗せる。
アレックスのは深めの大きな皿に白米を盛ってトンカツを一枚分のせた。
ニジもアレックスと同じで。
それにカレーをかけて、それぞれの前に置いて行く。
「ふう~ん、これがカレーと言うものなんだね。スパイスがきいてる臭いがする。辛いの?」
「スパイスはきいてるけど、甘口だよ。ニジもいるからね。食べてみてよ」
ニジとアレックスは大きめスプーンで。ハクは大きな口を開けてバクッと食べた。
「なんだ、これ! むっちゃ旨いよ、主。気に入った!」
「あるじぃ~おいちよ~」
「おれもきにいった~」
そう、よかった。
それなら、自分の分もと白米を持ってカツを乗せカレーをかけた。久しぶりのカレー。嬉しすぎる!
とりあえず、カレーの鍋二つと炊飯鍋はストレージに戻して、俺も遅れまいとパクつく。
うん、旨い。
とても懐かしい、涙が出そうだ。日本にいたとき、レトルトで食べたカレー。当時の俺にとっては慣れ親しんだ味だった。一人だけの食事では、あまり意味がなかったが、それでも美味かった。……そんな記憶が湯気と共に鼻をくすぐる。異世界に来てそこそこ強くなった俺だけど、支えてくれるのは、やっぱりこういう味なんだな。
ガツガツと聞こえるんだけど、皆無言だね。
最初にお代わりしたのは、ハク。
もう一度白米がいいらしい。じゃあ、と同じ様に盛ってやれば、再びボウルに口を突っ込んだ。
当然、ニジもアレックスもお代わりだ。
俺はまだまだお代わりにはならないけどね。
途中で思いだし、俺のお代わりはカツカレーうどんにする。
冷凍うどんをスーパーから取り出して、温めをどうするか。
<温め>
おお、できた! すごいぞ、魔法で電子レンジだ! 器にうどんを入れて、カツを乗せカレーをかけてできあがり!
うれしい、うどんだぁ~
ずるずるとカレーうどんを啜る。そしてカツを食う。
それを見ていたニジは、問うてくる。
「あるじぃ~そり、なぁにぃ~?」
「これか。これはね、カレーをうどんっていうのにかけた。小麦粉で作った麺だよ。俺の住んでた世界では庶民の食事だったんだ」
「ふうん。ニジもたべち、いぃ~」
ああ、と差し出せば、フォークで器用にたべ始めた。
「おいち、こり、ちゅるちゅる、おいち~」
あはは、かわいいね、ニジ。
次に興味を持ったのは、アレックスとハク。
自分たちも食べるというので、ハクには食べにくいかもといいながら、作ってやった。とりあえず、一人前ずつ。
当然のようにペロッと食べましたね。
アレックスは気に入ったようだが、ハクは食べにくいから、今度はバケットにするらしい。
しばらく続いた庶民の宴が終わったとき、三人に浄化をかけて、口の中まで綺麗にしてからテントに向かわせた。
ハクのとなりに新しい大きな座布団を置いてやれば、ころんと横になったアレックス。寝心地がいいと気に入ったようだ。ハクがアレックスを鼻先でつんとつつき、「狭くはないか」と気遣う。アレックスは嬉しそうに尻尾を振った……なんだが年の離れた兄弟みたいであきないな。
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【あとがき】
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