第44話 眷属アレックス誕生!
「じゃあ、お前は今日からアレックスだ。冒険者でもなくなるけどいいのか?」
「もちろんでございます。ギルドマスターにしても、既におらぬものに対して、どうにもなりますまい」
「ん、わかった。ウイル、それでいいかな」
「は? ええと、訳がわからないのですが」
「ああ、ごめん」
そう言って、一部説明した。
アレックスは進化した。それで俺の眷族になった。冒険者ドラゴはもういない。こいつはアレックスだと言えば、驚いてるね。
「ええと、じゃあ、アレックスさんは、何に進化されたのですか?」
ここでは言えない。とりあえずは、この街ではこの姿でいいだろう。本来の姿を明らかにすれば、欲の渦が巻き起こるからな。そんな風に説明すれば、ウイルは納得してくれたようだ。
とりあえず、協会へと歩き出した俺たちだが。
その前に騎士たちや職員を押しのけて入ってきたのは豪華な鎧を着けた騎士たちだ。
「タケル・ヤマト。お前がこのランクSのダンジョンを最下層まで潜ったというのは本当か」
「ああ、本当だ。だが、核は取らないでくれと言うからおいてあるぞ。それがなんだ?」
「なるほど。では、只今より、探索者協会マスターおよび、そなたたちは領主様の元へ参るのだ」
「なんで?」
「なっ! 何を言うのだ、謹んでお受けいたせ!」
はあ、こいつら貴族ってなんでこうなんだよ。
「あのな、俺は今まで誰もできなかったランクSのダンジョンを最下層の六十一層までいって、今戻った所だ。正直いってすぐにでもメシが食いたいし、風呂に入りたいし休みたい。それが普通だろ。領主ならそれくらいの気遣いはないのか?」
うぬぬ、と唸ってるけどね、騎士たちは。
でも、みんなコクコク頷いてるよね、常識があるね。
騎士たちの後ろから、誰かがやってきた。
誰だこいつは。
「失礼致します。私は、領主様の補佐役として御役目をいただいております、ノーマンと申すもの。此度は、騎士たちが失礼をいたしました。ですが、領主さまは、ダンジョンがどれくらいまで進んでおるのか、どのような魔物がいたのか、などをお聞きになりたいのです。もちろん、堅苦しい席ではございませんし、御食事もご用意しております。一度顔見せだけでもかないませんでしょうか」
こいつ、いい人ぶってるけど、気にいらない。
そうだ、こういうときに魔眼を使えばいいのかもな。
じゃあ、右目の魔眼発動!
瞼の奥がほんわりと温かくなる。ふん、気持ちがいいな。
ゆっくりと瞼を開ければ、うわぁ、こいつ。極悪人じゃん。魔法使いか。その上、領主を操ってるな。本人は自覚無しという所か。かわいそうな領主だね。あとは、まあ、話と言うよりはお宝目的だな。これ、ヤバイね。
「それはそちら側の話だけでしょう? 直接お世話になっているわけじゃないし、俺は冒険者ではなく商人なんです。だから探索者協会に属してる。それ、わかって言ってます? 冒険者のSランクなら従う必要があるんでしょうが、そんな規約はなかったよ、探索者協会には。だから日を改めてもらえるなら考えます。どうですか? 納得いかないのなら拒否させていただきます」
「……なるほど、商人ですか。わかりました。では、明日の昼過ぎにおいでいただけますか? 領主の舘へ」
明日の昼過ぎは寝てるだろうね。
「明日の昼過ぎは、まだ休んでいると思いますので、お茶の時間、午後の三刻くらいでどうですか?」
「承知いたしました。では、お待ちしておりますので」
さっと踵を返した補佐の後に続いたのは騎士たち。豪華な馬車にのった補佐を守るように騎士たちも引き上げていった。
はあ、つまらないことばかりだよ、この街は。
ウイルに促されて、俺たちは一度探索者協会へ向かうことにした。
ハクの背に乗る俺たちと隣を走るアレックス。そして馬車でついてくるウイルと職員たち。
騎士さんたちは手を振って見送ってくれたよ。
やっともどった探索者協会では、拍手で迎えられた。なんで?
「みんな、喜んでくれてるみたいだね」
なるほど、そうなんだ。
じゃあ、と皆に頭を下げてからウイルと一緒に応接室に向かった。
ふぅと息を吐いてソファに座る。
ハクは子猫の大きさで隣りに座ってる。ニジはテーブルの上、アレックスは俺の後ろに立ってるよ。そうだ、あとでアレックスに剣をやろうか。その方がいいよね。この姿でしばらくいるのなら。あ、でもどうするか聞いてからの方がいいかな。
ハクとニジはひと足先に空間に戻るらしい。アレックスは? と問えば、主と共にというので、二人を帰すことにした。アレックスは、俺の影のように後ろに控えて一歩も引かなかった。「私は主の剣であり盾です。一時たりとも離れるつもりはございません」その真面目すぎる瞳に、俺は苦笑しながらも頼もしさを感じていた。
ハクに、とりあえずの食べ物は何がいいかと問えば、ホットサンドだって。お気に入りらしい。
じゃあ、と保存容器を二つ取り出して、あとはミルクの大瓶と小瓶数本。そして果実水も二十本ほど出しておいた。冷蔵庫にもあるからと伝えれば、ニジがハクに乗せてもらって出してくれるって。それなら安心だね。
全てをアイテムボックスに入れたハクとニジは、開いた空間から中に入っていった。
いつもながら素晴らしい、とウイルは大喜びだ。
俺とアレックスのために、大量のパウンドケーキやクリームケーキ、エクレアなどがおかれて、果実水とミルクが置かれた。大量にね。
とりあえず、口に入れてください、と嬉しそうに進めてくれる。
当然、鑑定しても問題ないので、アレックスにも座れといって食べることにした。
「食べながら聞いてください。ええと、疑問なのですが、アレックスさん、でしたか。進化されたと伺いましたが、何に進化されたのですか?」
「……ん、ええと、この姿で言えば、リザード・レックスだな。本来は違うけど。でも、それはアレックスと相談してからになる。そうだ、お前冒険者ギルドに預けているものとか、借りているものはないのか?」
「はい。金を預けております。今から向かい返金してもらいます」
「うん、その方がいい。それと冒険者をやめるということをハッキリして手続きしてこい。間違えるなよ、冒険者としては、ドラゴだからな」
「はっ! では、すぐに行って参ります」
気をつけて、と送り出せば、パウンドケーキを一つ口に押し込んで、果実水を手に太い尻尾を振りながら部屋を出た。
「本当に大きいですね、アレックスさんは。先日はあれほどの大きさではなかった気がしますが」
「そうだな。あれは血筋だよ。だから本来の姿になっても、元の大きさじゃいられない。子供の姿にならないとどこにもいかれないぞ」
「え? そうなんですか?」
ああ、と菓子を口にいれる。
そしてミルクをゴクゴクのんだ。はあ、少しは落ち着いたぞ、腹が。
街を出るときに教えてやると言っておくのだが、今夜話をしてからだと伝えた。あと、従魔の首輪が欲しいと伝えれば、どれくらいの? と聞くので、小さいのでいいと伝える。じゃあ、と手続きをしてくれるくれるらしい。ここでもできるのか? と問えばできますよ、とにっこり笑う。従魔を伴ってダンジョンに入る探索者も多いので、冒険者ギルドから、探索者の分はこっちで受け入れろといわれたらしい。
なんだ、偉そうに。やっぱり気に食わないな、冒険者ギルドは。
「首輪はどのようなものにしますか? いろいろありますが」
「ほんとか? 冒険者ギルドでは鉄製だったぞ?」
「はい。こちらは商人もおられますし貴族もおられますので、それなりの高級品もあります」
「なるほどな。じゃあ、ヒヒイロカネはあるか?」
しばらくお待ちを、と廊下にたっている副マスターに指示をした。
俺はそろそろお菓子も終わりそうだ。
「これはアレックスにおいておこう。あいつも食べたいだろうし」
優しいですね、と笑ってるねウイル。
書類を書き終わって渡せば、すぐに手続きをしてくれるらしい。それと、ハクとニジも眷族になったんだけど、と言えば変更しましょうというのでタグを預けた。
副マスターが手続きをしてくれるらしいので、頼むことにして、ウイルと向き合う。
「それで、ランクAはどうでしたか?」
「うーん、楽しくなかった。弱すぎるだろ」
「は?」
あはは、ウイルが呆けちゃってるぞ。
「あの、やはりタケルさんの感覚は違いますね。というか強すぎるのですよタケルさんは。ですが、それを目指して精進している探索者もいますので、内密にお願いします」
「あ、ごめん。そうだよな。俺、こういうこと平気で言うから敵が多いんだろうな。まあ、あまりに抑圧されて育ったからかな、自分の言葉で何かを言うこともできない環境だったからさ。今は思いきりいいたいことをいう癖がついた。悪かった」
「いえ。タケルさんがそのような幼少時代を送られたとは知りませんでした。こちらこそ、心ないことを。失礼しました」
それからは、以前と同じように、ランクAダンジョンのドロップアイテムを確認することになる。
Bランク以上の魔物の核は相談することにして。
それ以外をとりあえずメモをする。でも、面倒だな。とおもいつつ、数人が順番にメモをしてくれるので、俺自身はスラスラと読み上げるだけなんだけど。
一時間ほどして、やっと終わった。
ちょうどその時戻って来たのがアレックスだが、えらくボロボロになってる。
「何があった」
「いえ。冒険者をやめるからといいました。預けている金を出してくれといいましたが、ギルマスがキレました」
キレた? なんでだ。
「今までの恩を忘れて! と殴られました」
「恩を受けたのか?」
「他のものたちと同じです。特別に訓練してもらったことも、良い依頼をもらったこともありませんでした。だからダンジョンに潜ったんですから」
で?
だまって殴られて来たと言う。
金も最終的には払ってくれたらしい。職員や他の冒険者たちが止めるのも聞かずに暴力を振るったギルマス。これは、黙っていられないな。
「ウイル、副マスター、この姿を見ておいてくれ。すぐには動かないが、街を出るときにハッキリしてやる」
ぶわりと魔力が溢れる感覚があるが、そんなことはどうでもいい。その時の俺には怒りしかなかったから。
「しょ、承知しました。確かに確認しましたので」
二人は厳しい表情で受け入れてくれた。
とりあえず、治療をしてアレックスの怪我を治しておく。菓子を食ってろ、と伝えて次に進むことにした。
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【あとがき】
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