第38話 追加でパーティを助けた俺たちは、この先の事を相談した
「これ、食っていいのか?」
「うん。俺が作ったんだけど、家族には好評だよ。とりあえず、水を飲んだら食べて。それとミルクは大丈夫?」
「ああ、大好きだ」
「じゃあ、これ、飲んで。身体をできるだけ戻さないとね」
ありがとう、と言い水を飲み干して、サンドイッチを食べ始めた。
ひと口噛んで、大きく目を開く。そのままムシャムシャと食べ出した。
よかった、と安堵して、ミルクを注げば、カップを持ってゴクゴク飲む。
「主。私たちもデザートを食いたい」
「ピピッ!」
「ああ、わかった。じゃあ、ニジはこっちでね。何がいい? 甘いもの?」
「疲れたときには甘いもの、なんでしょ?」
そうだね、と饅頭を取り出して並べる。
いただきます、と言った二人は、饅頭を食べ始めた。ハクはすぐに食べてしまいそうなので、空になったらエクレアかな。
俺はぼた餅を出しておく。
ハクに水とミルクを。ニジにはミルクを注いで、俺もミルクを入れた。
冒険者を見れば、そろそろ終わりそうだけど、どうするかな。ホットドッグでもいいかな。
「どうする、まだ食べられそう?」
「うむ。悪いがあるか?」
「うん。じゃあ、今度はこれね」
焼きそばパンとコロッケのホットドックを出した。焼きそばパンは自分の為に作ったんだけど、食べてくれるならいいか。
「これは? 初めて食うものだ。旨いな」
よかった、とハクの器にエクレアをポンポン入れてゆく。ニジの皿にも置いてやった。
さて、やっとぼた餅が食える~
久しぶりのぼた餅を堪能する。これ、買ってから忘れてた。でも、時間停止型でよかったよ。そうでないと腐ってただろうからね。
デカいぼた餅を二個食べた俺は、ウイルに連絡を取ることにした。
「ウイル、聞こえる?」
『はい、聞こえます! タケルさん、どうでしたか?』
「十四階層で見つけた。でも、助かったのは一人だけだったよ。かなりやられてたから、高度の治療と回復をしたら何とか立ち上がれた。でも、出血が酷くてね。それで今、食事をしてるんだ。次の転移陣はどこかな」
『よかった。確か、十五階層にあると思います。そこから戻られますか?』
「うん、一度戻った方がいいと思う。二人は助けられなかった。もう、ギリギリでダンジョンに取り込まれるところだったし。とりあえず、ギルドカードだけは持って来た。他にも数人いたみたいだけど、姿も形もなかったよ」
『それでも、一人でも助かればよかったです。それにしても、あの時間から、もう十四階層ですか?』
「うん。人だけ探索して、いた人には名前を聞いてから結界を張って魔法で殲滅してきた。数組はいたけど、砂漠にいた人たちは、一人亡くなったって。洞窟に隠れてたけど、どうかな。でっかいサソリは一応殲滅したけど。救助しないとあれじゃ戻れないと思うけど」
『なるほど。それはお願いできませんか?』
「ちょっと待ってよ。俺は救助専門じゃない。まあ、魔物をすっ飛ばしたのは問題ないけど。もともとそのつもりだったし。でも、一度戻らないとでしょ。時間の無駄だなぁ」
『あのですね。タケルさん、今空間ですか?』
「そうだよ」
『おそらくですが、空間の出入り口はどこにでも開くことができると思います。ですので、その人たちを……』
「うーん、ちょっとまって。確認する」
ストレージの『タケルの空間』をタップしてみる。
あ、出て来た。
*どこでも出入り自由。出る場所は、きちんとしたイメージがあれば、そこに出られる。無属性魔法・時空魔法の効果*
ほんとだ。これなら大丈夫かもしれないな。
「ウイル、どうやらできるらしい。戻る時に行ってみる。一応、水や氷などは渡して来たけど、脱水症状があるかもしれないから、治療の準備をしておいてくれ」
『ああ、ありがとうございます。やはりお願いしてよかった。今から治療師を連れて広場まで参りますので』
うん、と通信を終えた。
「主、あの砂漠の者たち?」
「そう。助けて戻ってほしいって。ほんと、無理ばかり言いやがる、ウイルのやつ。だが、放ってはおけないな」
命にかかわることだ。冒険者たちが嫌いなわけではない、一部を除いて。ただ、冒険者ギルドは好きになれない、システム的に。
「悪いが少し寄り道する。お前、ええと、名前聞いてなかったな。リザードマンだろ?」
「ああ、名乗ってなかった。俺はドラゴだ。リザードマンのくせにドラゴンみたいだとつけられたらしい。ガキの頃からデカかったし」
「わかった、ドラゴ、俺はタケル、こいつはハク。スライムのニジだ。寄り道するが、お前はあっちの小さい方のテントで横になれ。休んだ方がいい」
ありがとう、とドラゴは、少しふらつきながらテントに入って行った。
気持ちを切り替えた俺は、砂漠のフィールドを思い浮かべる。そして、あの洞窟。その中にいたやつらをイメージして、少し奥に空間を繋げたいと思った。
オープン!
ゆっくりと開いてゆく引き戸を見ていれば、確かにあの洞窟だ。
外を覗いてみれば、どうやら戦っているらしい。じゃあ、と外にでて結界を張った。
「大丈夫か!」
「あ、あの時の。少し待ってくれ、こいつらが……」
「下がれ、俺が対応する!」
転がるようにこちらに来たのは、さっきいたやつらだ。
サソリに対して、氷の弾丸を放つことにした。でも、その時に爆発するようにイメージすればどうだろうと、やってみることにする。
<爆裂氷弾!>
バシュバシュと突き刺さった矢は、かなり深くめり込んだ。
その瞬間、魔力多めで結界を張る。
ドン! と聞こえて、結界にサソリの肉が飛び散った。
「大丈夫か。怪我してるな、とりあえず、中に入れ」
え? と驚いてるやつらを無視して、空間の入り口にかけた結界を解除する。
「ハク! 皆を引きずり込んでくれ!」
「わかった!」
すぐに駆け寄ったハクは、冒険者たちの襟を咥えてそれぞれを引き入れた。
最後に中に入った俺は、出入り口に結界を張り、洞窟の入り口の結界を解除した。
中をのぞき込んだサソリたちは、キョロキョロしている。そんな姿を見ながら、引き戸は一気に閉まった。
おお、こんな速度でも閉まるんだな。気をつけよう。
このとき、タケルたちは知らなかったが、外にいたサソリたちは、目の前でバタンと閉まった扉に、完全に獲物を見失っていた。
さて。ロックされたので振り返る。
「助けてくれと泣きが入ったから迎えに来た。詳しいことは後で話す。立てるか?」
ダメだな、しばらく洞窟にいたからだろうな。
「とりあえず、治療するにしても浄化するから。そのままでいて」
<浄化!>
ブワリとわき上がった光はすぐに落ち着いた。
あとは、治療だけど。
「傷に砂とか入ってないか?」
「ああ、多分入ってると思う。水はあるか?」
「ある。とりあえず、その場にいてくれ。ニジ、水魔法で水を」
「ピィ~」
すぐにニジがやってきて、砂だらけの皆を流してゆく。足下を重点的に洗ってくれてるね。
その間に、俺は低いテーブルを出して、水を並べてゆく。あとは、冷気を周りに流してやった。
灼熱の砂漠で死にかけていた男たちにとって、空間から流れてくる清涼な空気は、何よりの福音だった。一人が『ああ、生き返る』と漏らし、憑き物がが落ちたような顔で水をすすった。
一応、見たところ砂はなさそうだ。
<最高度治療・回復>
再び光った皆は、傷口も治っていた。きちんと傷口の砂は出されたみたいだね。
「あ、ありがとう。すごい魔法だな。お前、魔法使いか?」
「いや、剣士だ。魔法もガンガン使うけどな。とりあえず、そこにあるのは水だ。あと、何か食えそうか? 味噌汁とかならあるけど。熱いのがダメなら、甘いものか。時間があるなら、のどごしのいいものを作ってやるけど、今は、治療師が集まってると思うから、とりあえず、戻る方を優先するけど、いいか?」
「も、もちろんだが。ここはどこなんだ?」
「俺の空間。あ、そうだ。俺は探索者のタケルだ。よろしくな。十四階層で一人助けて今はあの小さいテントで休んでる。ここからならすぐだし、戻るけど。どうする? 何か食うか。ミルクもあるし、俺が作ったサンドイッチもある。あと、甘いものはいろいろあるぞ」
「それはありがたい。あれからまともに食ってないんだ。何かもらえるか?」
ああ、とまずはミルクの大瓶とカップを取り出す。そして、ローストビーフ入りのサンドイッチ、あとハンバーグサンドなどを取り出した。
ガツガツと貪るように食ってるけど、大丈夫か?
「トイレは、あの奥にある。魔道具がついてるから、トイレでしろよ。その辺りにしないでくれ。じゃあ、食ってていいから、戻るぞ」
ふんふん、と食いながら返事をしている。
再び俺はイメージする。
このダンジョンの入り口広場に空間を開きたい。治療師たちとウイルがいる近くに。
オープン!
急いで薄い結界を張れば、静かに引き戸が開いてゆく。
えええ!?
あはは、大騒ぎだな。
「タケル、さん? ああそうだ、タケルさんだ。ご無事で何よりです! ご無理をいって済みません!」
ゆっくりと結界を通り越して外にでる。
「本当にご無理だよ、ウイル。とりあえず、砂漠は犠牲者がひとりだけだった。なんとか踏ん張ってくれてたよ。一応、浄化して傷口も水であらって、最上級治療と回復をかけたら、皆元気になった。今は腹ごしらえ中だ。あと、十四階層にいたやつは、休ませてる。とりあえず、ウイルだけ入ってくれ。治療師たちは、皆を連れてくるから待機してほしい」
結界を解除してウイルを中に入れて引き戸を閉める。既に結界が張ってあるので、興味津々な皆の視線がうっとうしい。
砂漠のやつらは、ウイルが声をかければ、やっと食べるのをやめて、名簿をチェックしていた。
「ドラコ、起きてくれ。戻ったぞ」
「ん? あ、悪い。今、起きる」
「どうだ、身体は」
「うむ。傷などは問題ないが、疲れが残っている。だが、食事を取ったからだろう、かなり力が戻っている」
「じゃあ、探索者協会のトップが来てるから、話してくれ」
わかった、と立ち上がって、大きな身体をかがめて出て来た。
やっぱりデカいな。
皆が話している間に、魔道テントの中を浄化しておく。掛け布団などを整えておいた。
「さて。どうする? 十四階層から下に行くか?」
「せっかくだから、最下層までは行きたいよね」
「ピィピィピピィ~!」
「そうだよな。とりあえず、行くか。じゃあ、メシは作り置きだけになるけどいいか?」
「うむ。主の作るメシは旨い。どれほど待ってもいいと思うくらいにね。でもボス部屋だとそうはいかないかな。それとも、安全エリアで空間に入る方がいいかも」
「そうするか。それがいいかもな」
そうしようと決まった。
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