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第37話 救出作戦は終わった

 より速く階段の向こう側にある安全エリアに入った。

 そこで水分補給だね。

 ハクは水をがぶ飲みしてる。ニジも水がいいって。それなら、とこれから喉が乾いたり、腹が減ったときには伝えてもらうことにした。

 

 さて、行くか、と階段を降りてゆく。

 ここも同じか。

 

 じゃあ、と駆け出す俺とハク。その間に、ニジは既に氷弾攻撃を始めてる。

 ここはヤバそうな蜘がいるので、魔法一択だ。ハクにも伝えて、そのまま駆け抜けることにした。

 こいつは爪に毒があるし、糸は粘着性があるので、引っかかれば面倒だ。それなら、空に上がって俺が焼き尽くすと言えば、ハクが空に上がる。俺も飛翔でハクの背中に乗った。すぐに結界を張り、身体を固定する。

 

 火魔法を放っていたんだけど、面倒になって、火炎放射器をイメージしてみた。


<火炎放射!>


 ブワァーーーっと炎が出て、右手と左手から噴射される。

 

 ギャギャギャー


 嫌な声が聞こえるけど、仕方がないでしょうよ。

 時々飛んでくる糸はハクが避けてくれるし、攻撃態勢のやつはニジが狙撃してくれる。

 うん、俺たち最強だね!

 

 当然探索も忘れない。人まで燃やしちゃったら大変だし。


 ここもとりあえずは奥まで来たよ。

 安全エリアで休んでる人たちがいたので、中に入って聞いてみる。


「こんにちは。悪いけど、名前教えてくれるかな。この名簿にある?」

「名簿? ああ、えっと俺たちはこのパーティーだ。何かあったのか?」

「ちょっと調査してるんだ、探索者協会の依頼で。どれくらいで下に行くの?」

「そうだな、あと十五分くらいしてから降りるかな」

「わかった。じゃあ、俺たちは人がいない限り殲滅しながらいくから。大丈夫だと思うけど、リポップするのが間に合わないかもしれない。ごめん、少し待ってもらえると嬉しい」

「殲滅? どうやって」

「相手によるけど、急いでるから魔法を使って行くつもり。それ以外も使うけど」

「なるほどな。でも、次は砂漠のエリアだぞ。走るのは大変だが」

「大丈夫、この子がいるから空に上がるよ。ありがとう!」


 手を振って俺たちは階段を駆け下りた。

 砂漠なら、岩陰とかに人がいるかもしれないな。


<探索>

 

 うん、いるね。どうするかな。

 暑さに疲れて隠れてるのか。それなら、行ってみるかな。

 静かに空に上がったハクに真っ直ぐすすんでもらう。しばらく行くと、浅い岩の切れ目があった。

 ここだ。

 

 ハクには空にいてもらって、俺は地上に降りて中に入る。


「すみませ~ん、中に誰かいるでしょう? 探索者協会の依頼で調査してます。この名簿を見て、名前を確認してもらえますかぁ~」

「大きな声を出すなよ。ええと、お前が調査?」

「はい。従魔と一緒に。それで、この名簿にパーティ名がありますか?」

「ああ、これだ。だが、一人やられた、こいつが今はいない」

「そう、残念だよ。でも、進むなら気をつけてね。で、何か不足はある? 水は?」

「とりあえずはあるが、お湯みたいだ」

「なるほどね。それじゃあ、これ。冷たい水どうぞ。それとね、これ、氷だよ。脇とか股間の付け根に入れると楽になる。まあ、溶けるから効き目は薄いけど。これからフィールドを殲滅しながら進むから。入り口には半刻くらいで消える結界を張るから、大丈夫だよ。とにかく気をつけてね」

 

 ありがとう、とさっそく皆が脇に入れて股間にも入れてた。


 入り口に三十分で解除される結界を張って空に戻る。

 最初に戻って魔物を探れば、ブラックスコーピオンだね。かなりの数がいるけど、どうやって倒すかな。そうだ、土魔法で砂を剥ごうか。

 魔物のいる場所だけ砂を剥いであらわにする。そんなイメージで考えてみた。


<土魔法・砂剥ぎ!>


 バサバサと姿を現すサソリたちは、驚いてポカンとしている。その間にニジが二頭を捕らえた。

 ハクも氷の塊をぶつけて倒している。俺は、それぞれの個体を凍らせて行く。熱いところで効率が悪いようだけど、俺たちの氷魔法は大丈夫みたい。おそらくレベルが高いからだろうね。攻撃手段も、ニジとハク、俺はそれぞれ違う。それで効率がいいんだと思ってるよ。

 

 土魔法を行使しながら、攻撃をする。そんな感じで俺たちは進む。さて、こいつらのリポップの時間と結界が消える時間がどれくらいの差があるかな。まあ、自分たちがわかってて来てるんだし、冒険者だらから大丈夫でしょう。


 そんな風に端っこの安全エリアでひと休み。

 水を取りだし、ホットドッグを出す。

 大喜びの二人は、がぶがぶ水を飲んだ後にガツガツ食べる。おやつタイムだ。


 

 それからも同じように人を探して殲滅を繰り返す。

 お昼になる前に九階層の端までやってきた。

 そこの安全エリアで昼ご飯を食べることにした。

 何食べる? と問えば肉だって。

 じゃあ、と焼き肉サンドとトンカツサンド、サラダを取り出した。

 食パンに焼き肉を挟んだサンドイッチだ。食パン二枚で野菜と焼き肉を挟んでカットしてある。

 同じようにトンカツサンドも作ってカットしてあるので、お手軽でしょ。

 

 飲み物をがぶがぶ飲みながら食いまくる。

 うん、旨いんだけど。これ、人気になりそうだね、我が家では。


 さて、ここまでは探し人はいなかった。

 問題はここからだろうね。


 とりあえず探索をしてみた。

 下に向かって人の姿を探すけど、よくわからないな。人が感じられないけど。

 魔物が何かを狙ってるような気配はするね。


 じゃあ、世界眼を使って見るか。

 指で名簿のSランクを抑えて、どこにいるのかとイメージする。


(世界眼)


 パパパっと出て来たけど、数人は黒い×がついてるね。あと、三人らしいけど、間に合うか? 

 階層は十四階層だ。

 ヤバいな、これは。

 

「ハク、ニジ。十四階層にいるみたい。三人はまだ生きてる。急ぐぞ!」


 階段を駆け下りて、驚く。

 真っ暗だから。死霊エリアか。

 面倒だ、とフィールド全体を魔法の灯りで照らし出す。驚いたのは魔物たち。

 厄介だけど、なんとかなるか。

 使ったことないけど、光魔法を使ってみよう。それで浄化すればいいかもしれない。


<光魔法・浄化!>


 ブワリと光の粒がわき上がる。それが魔物たちを襲った。闇のものたちだが、わりと高ランクもいる。まあ、残ったら個別に片付けようか。


 光の粒の後は、いつもの浄化のようなしゅわ~っとした風に見えるんだけど。


 全てが収まった時、フィールド内には何もいなかった。

 やった、成功だ!



 そのままハクは最速で飛んでゆく。

 そして次の階層も闇。

 同じようにやってみれば、なんとか消す事ができた。ドロップアイテムはその場で消える。便利だね、これは。


 十二階層も闇だった。

 同じように対処したら、一応なんとかなった。数体は効かなかったようで炎で焼き尽くした。


 十三階層はまあ、いろいろいたね。ひとつ目やらミノタウロス、オーガのデカいやつ。まあ、全て的が大きいから問題ない。全てを魔法で片付けて、そのまま端まで通過した。

 

 そして、問題の十四階層だけど。

 これは……

 サーペントがうようよいる。

 デカいのもいるし、普通のもいる。気持ち悪いね。

 気配を探れば、途中の入り口の狭い洞窟にいるらしい。どうみてもサーペントは入れそうにない。でも時間の問題だろうね。

 少しずつ、岩が剥がれているから。


 とりあえず、確認できたのは一人だけ。

 ヤバいな、行くぞ!


 ハクは空高く上がってくれる。

 炎は使えないだろう。それならととりあえず、洞窟の前までいって、頭を突っ込んでいたやつらを引き剥がす。そして結界を張った。


 その後は、全てを凍らせるつもりで魔法を使う。


<魔物のみ凍結!>


 バキバキバキバキベキベキベキ……

 

 耳をつんざく凍結音が止むと、さっきまでうごめいていたサーペントたちは、彫刻のように美しくも恐ろしい氷像へと変わっていた。……よし、これで邪魔者はいない。一刻も早く洞窟の中に入らないと。

 そして、近くからサーペントが塵になってゆく。

 気配を探れば、全ての魔物が凍ってるね。ハクにはその場にいてもらって、俺はひとり結界の前に降りる。そして結界を解除した。

 

「助けに来た! 大丈夫か!」


 暗いな、と灯りを灯せば、一人の男が壁にもたれている。出血が酷い。

 その前には二人が倒れていた。他の人たちの亡骸はない。

 倒れている二人をよけて男に近寄る。


「大丈夫か! 生きてる?」


 うっすらと瞼が持ち上がる。

 

「悪い、助けか?」

「うん、助けに来たよ。こっちの二人はどうする? 連れて帰るか?」

「いや、このままでいい。戻っても誰もいないか、ら」

「わかった。じゃあ冒険者?」

「そう、だ」

「後でカードを取っておくよ。とりあえず治療するから」

「む、無理だ。もう、たすか、らない……」

「大丈夫。俺の治療はレベルが高いから。少し休んで」


<最高度治療・最高度回復>


 ブワリと光に包まれた男をその場に残して、倒れている二人を鑑定すれば、やはり命はなかった。それなら、とギルドカードを探して、二人分をストレージに入れた。

 

 光が収まった男だけど、すぐに動くことはできないだろう。


「ありがとう。なんとかなった、のか?」

「うん。大丈夫だよ。地上に戻ったらもう一度治療するから。最高級ポーションも持ってるしね。だから休めばいいよ」

 

 ちょっと待ってて、とハクに伝えて、その場で一度全員が空間に入ることにした。

 男は何とか立ち上がった。

 その場で空間を開いてハクが先に中に入る。ニジを頼んで、俺は男を浄化し、肩を貸してゆっくり歩き始める。

 不思議そうな男を促して中に入った。


「ここは……」


 さっきまで死を覚悟していた地獄のようなダンジョンとは打って変わって、目の前には青々とした芝生と暖かな光が広がっている。男は自分の目を疑うように瞬きをし、タケルの横顔を見つめた。一体、自分を助けたこの男は何者なんだ?


 そんなことは全く気にしていないタケルは、戸惑う男を支えながら引き戸を閉める。


 クローズ!


 静かに閉まったあと、ゆっくりと歩き出す。

 どこか具合の悪いところはないかと問えば、血が足りないだけだろうという。

 それなら水を渡してサンドイッチを出してみた。さっきの残りだけどね。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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