第36話 人助けのためにとりあえず潜りましょう
馬場で空間を開いて中にはいる。しっかりと引き戸を閉めて、芝生を踏みしめて歩く。
どうやら、二人はまだ眠っているらしいね。
俺も少し休もうか。自らに浄化をかけてベッドに寝転がった。
息苦しくて目を開けると、ニジが俺の口と鼻を半分塞いだ位置にいて、のぞき込んでる。
「ぷはっ! ニジ、息ができなかったよ」
「ピィピィ~」
ん? どうした。もしかして腹が減ったか?
身体を震わせているのでどうやら正解らしい。
ハクはどこかな、と見てみれば、芝生の上でゴロゴロやってるよ。
「ごめん、遅くなった。ご飯作るからね~」
「うん、よろしく。その間に風呂で泳ぐか、ニジ」
「ピュイ~」
あはは、どうやら決定みたいだね。
さて、今日は何を作るかな。
肉じゃがはある。あと、ベーコンスープがあって、白米はある! そうだ、ショウガ焼きがいいかな。揚げ物がいいか? 俺はショウガ焼きが食いたいね。それでいいかな。
以前スライスしていたオークの肉を大量に取り出す。キャベツの千切りはかなりあるから大丈夫だね。
トンテキでもいいけど、まあ、いいか。
ショウガ焼きのタレは市販のタレをスーパーから取り出して少し味を甘くするつもりだ。タレの瓶は八本でたりるかな。
サラダもあるだろうか。
うん、何とかありそうだね。じゃあ、ついでにゆで卵をたくさん作ろうか。
大鍋に水を入れて魔道コンロにかける。卵をゆっくりと入れていくんだけど、殻をむくのって、スキルでできないかな。後で試してみようか。
それと今思いだした。
ジャムだ!
最近はスーパーにもとんでもない種類のパンがある。だからジャムを塗れば、そのまま食べられる。
ハンバーガーを作りたいと思ったけど、あのパンの数が揃わない。それなら、以前買ったホットドッグ用のパンを使って、コロッケパンやハンバーグパンを作ればいいかな。本当なら焼きそばパンも食べたいけど、ハクは食べにくいかなぁ。
そんなことを思いながら、サラダを盛り付けてトマトみたいなやつをカットする。それ以降、洗ってあるトマトはスキルにお任せでカットをしてもらおう。
その間に風呂をみにいったら、魔法を上手に使ってハクが身体を洗ってた。
「すごいね、ハク! 魔法で洗ってるのか?」
「うん。主の洗ってくれるのを思い出してやってみたらできたよ。私のオリジナル魔法だね」
「そうなんだ、すごいね。その上でニジが転がってるのは、洗ってるの?」
「ピピ~」
なるほどね、考えたな。
「そろそろご飯にしようかと思ったんだけど、もう少し後の方がいいかな」
「まだ、少し時間がかかるけど……」
「わかった。じゃあ、その間、軽食の新作を作ってみるよ」
嬉しそうな二人をみて、キッチンに戻れば、トマトが山盛りになってた。あはは、ストップ!
カットしたトマトは保存容器に入れましょう。残ったのはストレージに戻してっと。
じゃあ、何から作るかな。
ハンバーグがいいか。少しパンをあぶってっと。切り込みが入ってるから少しだけね。
それにバターを塗って溶けている間に、キャベツを敷きます。その上にハンバーグを縦半分にしてのっけよう。といっても、大きすぎる。
じゃあ、三つに切って乗っけると……
うん、いいサイズだね。これにハンバーグのタレを少しかけます。できあがり~
もうひとつ作って、同じハンバーグドッグを作ります。その上にチーズをスライスして、ガストーチであぶると、とろりと溶けていい感じだ。
これでいこうか。
同じようにそれぞれ三十本分作った。
スーパーの惣菜で肉コロッケを取り出して、これも縦にカットしてキャベツの上にのっけます。無理矢理コロッケ一個分乗せました。タレはウスターソースですよ。
はい、完成!
これもコロッケがある数だけ作った。かなりの数できました~
保存容器に入れて、ストレージに保存しましたよ、ホットドックは。
おっと、そろそろ出てくるかな。
ハクがブルブルしてるので、ドライの準備をして風を吹かせます。テーブルの上にタオルを出しておけば、ニジもそこで乾燥してるんですよ、最近は。外で使う用のテーブルはニジ専用になりつつあるんだ。
その間に、俺はショウガ焼きを作ります。
でっかい皿と普通の皿には、キャベツが盛られてます。ポテトサラダもおいて、トマトものせました。
じゅわ~っとフライパンの中でうごめくオークの肉をトングで丁寧にまぜ混ぜします。ばらけるようにね。
ちょっとたくさん入れすぎたかな。
最後にタレを回しかけて、少し砂糖を入れ甘めに仕上げました。
すると、甘辛い醤油とショウガの香りが、空間いっぱいに広がる。これから戦いに向かうとは思えないほど、ここは穏やかで暖かい。……よし、この満足感を力に変えて、サクッと助けてくるか!
そんなことを考えながら、同じようにショウガ焼きを作り続ける俺は料理人並みだな。
いただきます、とたべ始めた二人はかなりの速さで平らげて行く。
旨い! ピピピィ~! と聞こえて嬉しくなる。
微笑みは隠せないので、二人を見ながらもっと作ります。かなりの量を作って、二人も落ち着いて来たようなので、自分の分だけ取り分けて保存容器に入れました。
明日のおやつも準備できたので、明日の朝は、フレンチトーストにすることに決めて、俺はひとり、風呂に入って身体を伸ばす。
ランクAに潜るんだけど、楽しむというよりは調査のつもりで行こうかな。それなら、たくさん出てくる魔物も、チェックしながら進めるし。ドロップアイテムは完全回収されるので、問題ない。
十階層ごとにボス部屋があるらしく、浅い階層の魔物はCからBランクらしい。十一階層からはほとんどBランク。二十階層からは、雑魚でもAランクだって。
少しは楽しめそうだね。
ボスに至っては、二十階層からはSランクが出てくる。そして、三十階層からはSランクがAランクを従えてるって。
ここは、SSランク冒険者が調査に行ったらしい。
全部で六十八階層だと探索魔法の使い手がいったらしいけど、どうだかわからない。
何かいいものが出てくればいいけどね。
そうなるとランクSのダンジョンはどれくらいのレベルか。
まだ、情報が全くないらしい。
SSランク冒険者でも、十階層のボス部屋までたどり着けずに戻って来たらしいからね。
うちはどれくらいまで行けるだろうね。
ハクがいるから俺も楽だと思う。ニジは結界の中からの攻撃になるだろうけど、魔法でも剣でも何でも使って進んでやる!
さて、明日のランクAが前評判通りだといいけど。
翌朝、俺たちは直接馬場から空に上がって、街の東寄りにあるダンジョンを目指して飛んでいます。
ハクはやる気満々ですね。ニジも楽しそうだ。俺もだけど。
ナビを見ながら直線距離で進んでるんだけど、さすがに、並んでることはないみたいだね。
ただ、大通りからダンジョンまでの道には露店というか、いろんな店があるらしい。
左に折れてからはもっと店が密集している。グッズを売ったり素材を買い取ったりするらしいね。
さて、そろそろおりますか。
ハクはゆっくりと降下して、地上に降り立ちます。そのまま歩いてゲートに向かう。
「おはようございます。お願いします」
「探索者、タケル・ヤマトさんと従魔二頭ですね。ええと、これだけですか?」
「はい。入っていいですか?」
え、ええ。
そう言われて広場に入ったんだけど、すぐに騎士たちが駆け寄ってくる。
「君、従魔と君だけか?」
「そうだけど?」
「それは危険だぞ。ここはランクAだ。悪いことは言わない、やめておけ」
「大丈夫。俺たち強いから」
「冒険者か?」
はあ、面倒だね。
「違うよ、探索者」
「うむ、それならなおさらだ、やめておくんだ」
止めてくれるのはありがたいんだけど、これ、どうにかならないのか?
あ、水晶通信だ。
『タケルさん、既にランクAに入られましたか?』
「いや。まだ。騎士さんたちが入れてくれない。危ないからって」
『はぁ、よかった。あのですね、お願いがあるんです。というより、依頼ですね』
「なに? 面倒ごとはごめんだよ」
『いえ、違います。一昨日からSランクパーティーが潜っているんですが、まだ戻ってないんです。予定では、明日の夕方には一度戻ると。それで、途中でその確認をお願いできないかと』
「なんだよ、それ。もう間に合わないかもしれないよ? もし、そうなら亡骸はないんじゃないかな。助けられるなら助けるけど、一度転移陣で戻って怪我人がいるなら引き渡す。治療して治るなら、そのまま進むよ。特に深い階層ならね。水晶は届かない?」
『安全エリアか転移陣の所でしたら届きます。お願いできますか?』
「いいよ。仕方ないじゃん、人の命がかかってるんだもの。じゃあ、上層は魔法で突っ切るようにする。十階層から下でしょ、その人たち。探索しながら進むから。今、ここに何人入って入るのか、聞いても良い?」
変わってくれと言ったので騎士さんに水晶を渡す。しばらく話していたんだけど、何やら名簿を渡された。
『タケルさん、今、潜ってるのがその名簿の人たちです。なので、すみません、お願いします!』
「わかった。ウイルの頼みだからとりあえず確認するね。じゃあ、急ぐから切るよ」
お願いします! と聞こえて騎士さんに顔を向ければ、頼むと言われた。どうやら話を聞いてくれたらしいね。
「じゃあ、行こうか、ハク、ニジ」
「わかった」
「ピピッ!」
一気に駆けてダンジョンの中に入って行く。
一階層は途中かCランクの魔物たちがうようよでてくる。面倒だから中央を走り抜けながら魔法を連発する。ハクもニジも同じだ。
どんどん通りすぎるんだけど、正直この辺は面倒だ。
あっという間にたどり着いた階段を駆け下りて、二階層。
ここはCとBランクが入り乱れているけど、全く問題ない。
ここも魔法で吹き飛ばす。
ニジは、氷の弾丸で狙撃してるね。ハクは魔法と脚での攻撃の連打。ハクが駆け抜けた後には光の粒子しか残らない。俺の刀が閃くたび、魔石だけが虚空に吸いこまれていく。……文字通りの『掃討戦』だ。救出対象がいるなら、一秒でも早く下の階層へいかないとな。
多少の手応えはあるけど、俺たちは自分の身体を覆う結界を纏っているので、大丈夫だ。ハクのランクもグンと上がってたし、結界のレベルも上がってた。ニジもゼロ歳なのに、レベルは12だ。すごいことだよ。
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