第34話 ランクBダンジョンは期待外れかな……
階層を重ねて行くごとにボス部屋もそこそこ強力になってきた。
といっても、問題ないレベル。今は三十階層のボス部屋にいるんだけど、ここが終わったら昼食にしようと思ってる。
腹が減ってるから、ちゃちゃっとやっつけよう!
ボスはサーベラスというらしい。
三つ首の魔犬。首それぞれが炎、氷、嵐の属性を行使する。その唾液は甘い香りのする猛毒なんだって。面倒だね。
とりあえず、ハクとニジに結界を張って隅にいてもらうことにする。
さて、どうやるか。
まあ、凍結すれば簡単だけど、楽しくないからね。でも、かなり面倒な気がする。
サーベラスは一気に突っ込んでくるんだけど、途中で魔法が飛んでくる。
炎と嵐が巻き起こった。まあ、強力な結界があるから問題ないんだけどね。
だけど、面倒だよ。じゃあ、首を落とすか。
<氷刃!>
シュンシュンと二枚の刃が飛び出して、炎と嵐の首をカットする。それはもう、シュパッと切られて飛んでったよ。
ゴガァアアアーーーー!
あ、残った首が怒ったね。
どうやら氷の魔法を使うらしいけど、周りから水分を集めてるのか、これ。
面倒だな。
じゃあ、一気に行くか。
刀を手に大きくジャンプして振り向いた首を無視して腹を切る。
うん、さすがの切れ味だ。
上半身と下半身が分かれた。一瞬だったからだろう、口の中で氷が固まったね。まあ、どうせなくなるんだからどうでもいいけど。
討伐報酬をストレージに入れて、昼食を取ることにした。アイテムボックス鞄から取り出した食事を食べる。空間に入ると、時間経過で再びボスがドロップするから。もっと浅い階層だったけど、笑っちゃった。
だから、今はここで食べるんだ~
あと少しで終わりそうだから、軽いものにしよう。
作り置きのホットサンドを山盛りだした。嬉しそうな二人は、さっそく食らいつく。飲み物はニジはミルク、ハクは果実水をご所望だ。俺はミルクだけどね。
今日のホットサンドはサクッ! と小気味よい音を立ててパンが割れると、中から肉汁たっぷりのローストビーフと、特製果実ソースの甘い香りがあふれ出す。シャキシャキの葉野菜とマヨネーズが合わさって、もう最高のごちそうだ。
「これは売り物としても出せる!」とハクがいってくれたのでかなり嬉しい。
たらふく食べた後、扉を開けて下に降りよう。あと、少しで最下層らしいから、腹ごなしだね。
はあ、と面倒くささを感じながらフィールドを見れば、ナイトメアがいる。ご丁寧に騎士が乗ってるね。
これ軍隊かと思うほどの数がいるんだけど、どうするかな。
これは面倒だから凍結一択でしょうよ。
じゃあ、魔力を広範囲に広げるようなイメージで凍らせよう。
フィールドに一人降り立ち、発動した。
<凍結!>
ベキベキベキベキ……
おお、いつまで続くんだ、これは……
それから数分ほど続いた音がやっと終わったので、ハクの背に乗って移動する。ここは真っ暗だけど、俺が魔法で煌々と照らしているので、かなり明るい。
半分と少し進んだ頃、次の魔物が見えてきた。
これって、デュラハンかな。馬に乗ってるんだけど。まあ、どっちでも同じかな。
さて、どうするか。
「主、ニジが試したいことがあるんだって。やらせていい?」
「うん、いいけど。結界の中からやるんだよ」
ピィ~と嬉しそうだ。
何をやるんだろう、俺も気になる。
いきなりゴロゴロ言い始めたと思ったら、バリバリバリっと雷が落ちた。それも、それぞれの馬とデュラハンに対して。
おお、すごいね。
打ち漏らしというか、無駄打ちはない。すごいよ、ニジ!
落雷のとき舞った煙が収まった時、全てが黒焦げで倒れていた。
「ニジ、すごいね。驚いたよ、かっこいい~」
ピイピイピッピピィ~
そんな風に楽しそうにフルフルしている。本当に可愛いね。
じゃあ、進もうか。
到着したボス部屋にはスリーピーホロウがいた。
どうするかな。
「主、ここは私に任せてほしい。ニジもいいところを見せたから私もやる。以前のダンジョンで戦ったことがあるからね。あの時は何体もいたけど今日は一体だし、問題ない」
「そう? じゃあ、任せるよ」
うん、と空に上がったハクだけど、敵は、空を見上げてハクを敵と認識したようだね。
相手は騎士だけど、どうやって戦うんだろう。
そう思って見ていれば、一気に地上めがけて突っ込むハク。
え? と余りに意外な攻撃で驚いた。
当然、剣を振るんだが、かなりの速さで振られたのにもかかわらず、ハクの片脚で折れてしまった。その後、前足で踏み潰される。
おっそろしい……
その辺のやつら、ハクに手を出したら殺されるぞ。間違いない。
サラサラと消えて行くスリーピーホロウを背に、ハクが戻って来た。
「ハク、すごいよ! あんな攻撃初めてみた。本当にかっこよかった。ハクもニジも、自慢の家族だよ」
そう言えば、ハクは喉を鳴らして俺に体をすり寄せ、ニジは俺の肩の上でこれでもかと胸を張っている。二人の『どうだ!』と言わんばかりの表情に、思わず笑みがこぼれたよ。
そんな風に、嬉しそうな二人を抱きしめて、報酬をストレージに入れた。
その後も続けて階層をおり、最下層と言われるボス部屋を制した俺たちは、お宝を回収して扉を開ける。
あれからは、階層ごとのボス部屋にはSランクと言われる魔物がいた。それでも、俺たちは普通に進んだ。皆でそこそこ手応えのある相手を滅し、今、最下層にたどり着いたんだ。ここは三十六階層あったことになる。
一応、これは報告した方がいいだろうね。
まあ、Sランクのボスたちのお宝はそこそこいいものがあった。だから、まあいいとしよう。
扉を開けば転移陣がある。
その上に乗ればいいのか、と時計を見た。今は夜中だな。それなら、誰もいないかもしれないと思い転移陣にのったのだが……
一階層に到着した時には、煌々と灯りがついていた。こんな夜中でも警備がいるんだな、と感心する。
ご苦労さん、と騎士たちに声をかけられ俺たちはその場から空に上がった。
広場にいた騎士たちは驚いていたが、腹が減ったので早く戻ってメシを食いたい。そして風呂に入ってゆっくり眠ることにした。
深夜にもかかわらず、ハンバーグや牛丼、角煮など食べたいものをたらふく食べた俺たちは、風呂で汗を流し眠りについた。
目を開けた俺は、時計を見る。どうやら既に昼を過ぎているらしい。はぁ、とため息を付きダンジョンのことを考える。
ダンジョン都市といっても、これくらいのレベルか。まあ、ランクBだったからかもしれない。それならSとAは、覗いてみる方がいいだろう。でも、さほど深いダンジョンはなさそうだ。
これなら、ハクから聞いた未開のダンジョンの方が面白いかもしれないな。
ゆっくり起き上がって、身体を動かしてみるけど全く問題ないね。
ダンジョン巡りって、思ってたほどの刺激はない。思う存分剣が振りたいと思ってしまう。最近は日本でのような強制的な訓練はないが、楽しくもなくなってきた。以前の押しつけられた訓練がしたいわけじゃないけれど、あまり暇なのも困る。
そんなことを考えながら朝食を作っていると、二人が起きてきた。
「主。遅くなった、ごめんなさい」
「ピィ~」
「いいよ、別に。俺もさっき起きたところなんだ。気にしないで。で、何を食う? もう昼は過ぎてるんだよ」
「なるほど、それで腹が減ってたんだ。ニジは何が良いの?」
「ピッピピィ~!」
「ふむ。主、ニジはホットサンドがいいらしい。ローストビーフとかベーコンを挟んだやつがいいって。私もそれが食べたいんだけど、頼める?」
「うん、おっけ。でも、少し待っててね。今から作るから」
わかったと、二人はのんびり何やら話しながら芝生を歩き始めた。
ニジと話ができるのは少しうらやましい。でも、そのうち、ニジも成長する。そうなれば話しもできるようになるだろう。
ホットサンドメーカーをもう一台ホームセンターから取り出して、炊飯器のスイッチを押し、炊飯鍋を二つオーブンに入れてから、ホットサンドを作り始める。
そうなんです、ここのキッチンはデカいのにしました。だからご飯用のダッチオーブンも二つが一度に入るんです!
ホットサンドの材料は食パンとバター、葉野菜にマヨネーズ、ベーコン、ローストビーフ、あとは、ゆで卵の細切れをマヨネーズであえたもの。
いろいろ挟んで次々とホットサンドマシーンに入れてゆく。そしてパチンと止めればスイッチオン。魔力は満タンだから。
一度に食パン八枚を消費するが、一度に四個できあがるので半分にカットすれば八個だ。保存容器にカットして入れてから、一応ストレージに入れておくよ、冷めないようにね。
ミルクを飲みながら作業を続けること、二十分。
そこそこ貯まったので、二人を呼んであげよう。
「お待たせ~できたよ~」
嬉しそうに駆けてくるハクとその背に乗るニジ。
大皿に乗せたハクのホットサンド、別の皿に置いたニジの分。それぞれの前に出してやれば大喜びだ。
「何を飲む?」
「ピイピ!」
「ニジはミルクだって。私は両方ほしい」
ん、とニジにミルクの小さい瓶を五本置いてやる。ハクには大瓶からとくとくとボウルに注いだ。もうひとつのボウルには、果実水を十本入れてやった。
大喜びの二人は子供みたいにパクパク食べている。まあ、ニジは赤ちゃんだけど。
俺はひとり白米を山盛りにして、味付け海苔と焼き魚、味噌汁だ。漬物は本来好きじゃないので食べない。
それぞれがはぐはぐとメシを食う。
旨い! この白米は外せないよ、絶対。今食べているのは炊飯器で炊いたご飯。炊飯鍋二つはストレージに入れた。これでしばらく白米は安泰だ!
デザートをそれぞれが食い、ケーキとパウンドケーキを大量消費した。
これは商人ギルドに行った方がいいかな。
とりあえずは、スーパーにもいろいろあるんだけど、時間があれば行ってみるか。
満足した俺たちは、口内を浄化して、出かける準備をする。といっても、着替えるのは俺だけなんだが。
着替えを済ませて、準備万端。
外には誰もいないことを確認して、結界を張り外にでた。
しっかりと引き戸を閉めて結界を解除する。
すぐ前の建物が探索者協会なので、ゆっくり歩いてウイルを訪ねた。
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