第26話 透さん夫婦のためにヤパニューラ国に引っ越ししましょう
じゃあ、とハクと一緒に空に上がる。そして東に向かって駆けた。
結界の中で世界地図を取り出して確認すれば、ヤパニューラ国は、もっと東の方だった。結構な距離があるぞ、と驚いていたんだけ。どこかで空間に入ろうとハクに言えば、すぐに場所を探してくれた。
そこは岩山だけど、山頂が尖ってない。丸くなっているので、その少し下で結界を張る。ハクを包む大きさの結界だ。
そのまま「オープン!」と言えば引き戸が開いて行く。ハクは俺たちを乗せたまま、空間に入った。そして、当然「クローズ!」である。
入ってすぐに浄化したハクは心地良さそうだ。
「お帰りなさい、タケル君」
「ただいま。ひと休みしましょう」
テーブルに腰を下ろせば、ハクがやってくる。
『主、おやつが食べたいんだ』
「うん、出してあげる。待ってて」
うん、と言ったハクに、ニジが近寄ってゆくと、ピョンピョンと鼻先から頭に乗っかり、するするとモヒカンの上を滑って椅子を下ろした背中に乗っかった。
あはは、面白いな。
大きなボウルにケーキをいくつも入れてやる。生クリームのケーキ、ロールケーキ、パウンドケーキなど。山盛りだ。
隣りには果実水を十本、ボウルに流し込む。
すぐに、ゴクゴクと果実水を飲み始めたハクだが、その様子を見ていたニジも俺の頭に飛び乗ってきた。
ほら、とニジに皿に置いたケーキとフォークを出してやれば、ピィピィ~と嬉しそうにたべ始めた。
「その子たちはタケル君の従魔かい?」
「そうですね、というより、家族です。俺はこの世界にきて本当の意味での生きるということを知りました。日本にいたときは、重圧に潰されそうな毎日だったから」
「なるほど、苦労してたんだね。でも、ネットも何もない世界だけど、いいのかい?」
「全く気になりませんよ。だって、進学校で勉強しながら、家に帰っても五時間以上の鍛錬が待ってました。そして、将来日本全国の弟子たちを率いることへの重圧。それから開放されたので、全く気になりません。以前なら居合道がいつも側にありました。でも、今は剣士としていろんな戦い方ができる。それは楽しいです。悪者退治もできますから」
「なるほど。そういう腕があるなら、本来なら勇者だろうね。でも、華道の家元? かなんかと勘違いされたって?」
その通り。
俺は、自分のステータスの最初の部分を話した。
種族:人間 十六歳
職業:大和流大家元流
レベル:1
と出ていたと言えば、なるほどね、と透さんは笑ってた。
でも、今は、ちゃんと剣士になってると伝えたら、嬉しそうに微笑んでくれた。
少し話してから、スキルの譲渡というものをやることになる。ハクとニジは風呂に入るとプールのようなデカい風呂に行ってしまった。水はニジが入れてくれるので、炎はハク。二人で上手ことやってくれてる。即席で作ったにしては、どれも使い具合がいいんだよ、この空間は。
少ししたら、ドボンと音が聞こえたから、風呂に飛び込んだんだろうね。
「じゃあ、やってみようか。ええと、最初に確認しておくかな。スキル譲渡:双方同意の下、送る方が受け取る方に自分のスキルの譲渡したい旨を言う。それを受けるほうが受け取ると承認すること。って書いてあるけど、いいかな。私のユニークスキルを受け取ってくれるかな」
「よろこんで受け取ります」
そういったとき、俺の身体がピカッと光った。
そして、透さんのステータスボードに、『ユニークスキル譲渡完了』と出たらしい。
じゃあ、と俺もステータスを開いて見ることにした。
ステータスオープン!
初めてオープンにしてみた。透さんに確認してほしかったから。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
種族:人間 十六歳
職業:大和流大家元流
レベル:40
生命力 2万1730
攻撃力 3500
防御力 3500
魔力 8000/8800
スキル:居合道術Lvel.MAX/剣術Lvel.42/算術Lvel.10/交渉術Lvel.8/ 気配Lvel.23
エクストラスキル:言語理解/世界眼Lvel.14/治療・回復Lvel.12/結界Lvel.15/鑑定Lvel.19/上級五属性魔法Lvel.22/無属性魔法/時空魔法/再生/料理/伸縮自在
[隠蔽]ユニークスキル:ホームセンター・スーパーマーケット(近藤 透より譲渡)
[隠蔽]特殊スキル:タケルの空間 ストレージ
ハク:眷属:バリアルト・スピリチュアルビースト・パンサー(特殊個体)
ニジ:眷属:レインボウスライム(特殊個体)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
こんな感じですと見てもらえば、かなり驚いていた。すごいステータスだということらしい。
でも、これもいろいろやったからここまでになった。それでも、最初から隠蔽されていたレベルやスキルは恵まれていたんだと思う、と話せば、なるほどと自分のステータスも確認していた。
そこには、きちんと隠蔽されて、俺に譲渡したと記載されているらしい。そうなんだ、と嬉しそうに笑う。それに、新しいスキルができたと言う。それは、「物作り」とだけ書かれているらしい。タップして見れば、いろんなものを作れるスキルらしい。これは最高だと二人とも嬉しそうだ。
よかった、と二人に提案をした。
俺が持っている皮がいくつかあるので、なめす作業は必要だけど、使ってほしいということ。
それは申し訳ない、と遠慮がちだ。
だけど、俺にはちゃんとホームセンターとスーパーのユニークスキルがある。中を開けば、とんでもない数の商品が、まるでネットショップのように出てくるし、写真まで見えるんだ。
それを話せば、透さんもスキルを確認している。物作りスキルだが、いろいろなものの名前があるらしい。そこで革細工をタップすれば、魔物の皮のなめし方なども出て来たって。それなら安心だと感心していた。ステータスってこういう使い方もあるんだね、と大喜びだ。
それと……
アイテムボックスから白金貨が五十枚入った袋を取り出す。それを二人の前に置いた。
これは、感謝の気持ちだと告げたのだが、中身を見て二人は後ずさる。
「これは。私にとってお荷物だったものだよ。それを引き取ってもらって、その上でお金をもらうなどあり得ないよ」
そんなことはない。
新しい国に行ったら、商売をするのに家が必要になる。店舗付き住宅という物件が。賃貸なら毎月費用も必要だし、それなら買えばいい。
そう提案した。
最低でも住むところが確保できるし、子供ができても、育てながら店が運営できるから。
なるほど、と頷いている。
あちらの国の相場がわからないけど、とりあえずその金額。家を買うのに、それ以上かかる場合は、もっと出すと言っておく。そんなことは、と言うのだが。
俺は盗賊の討伐をやってる。
冒険者ではなく商人だ。その押収品には金もそこそこある。家具や魔道具もあるから、使ってもらっていい。
そして、俺たちがまた訪れたとき、笑顔で受け入れてほしいと言えば、それは当然だと言ってくれた。
じゃあ、細かいことは気にせずに、と伝える。だって、俺は自分の金は一円も使ってないんだし、と笑っておいた。
盗賊の金でも金は金。それでいいのなら、ありがたく受け取るって言ってくれた。
大人としてはプライドが傷ついたかもしれないけど、これは商売だ。俺のもらったスキルだって、エンドレスで商品が補充されるという。どういう方法かわからないけど、そうらしい。それなら、充分使わせてもらおうと思っている。行商の商材としても使えるしね。
じゃあ、さっそくウッドデッキを作るのに、インパクトを出してみる。あ、でも充電ができないか。
でもコンセントのコードがない。どうするのかと鑑定して見れば、どうやら魔力を充填して使えるらしい。それならさっそく、ブン! と小さな音がして魔力が充填される。電動のこぎりもあった。これもちゃんと魔力の充電もできる。これならかなり楽になるな。
あとは、ネジ釘とかハンマー、釘、角を削るサンダーなど、いろいろ取り出して見た。
電気製品は、全て魔力充填式に変換されているらしい。これはすごいね、自動変換だよ。スイッチを入れると心地よい回転音が空間に響く。「魔力で動くインパクトは、日本で使っていたものよりずっとパワフルで硬い木材もスイスイ加工できそうだ」と透さんが言っていた。
もしかして、盗賊のアジトで見つけた炊飯器もバッテリーで使えるのか?
取り出してみれば、思った通りだ。これは、本体に魔力を入れるタイプらしい。それなら、炊飯鍋だけじゃなくて、炊飯器でご飯を炊いてみよう。
さっそく準備をして炊飯器のスイッチを押す。魔力は満タンです。問題ないね~
あと、オーブントースターもありました、ホームセンターにね。それも内蔵バッテリー式ですよ。魔道キッチンと同じですね。これならホットサンドも作れます。あ、それなら、ホットサンドマシンはないかな。
ありましたよ、二個一度にできるやつが。
それなら、明日の朝、作ってみよう。
じゃあ、今夜はこのままここで過ごしましょう。
そう話すと、安堵した顔をしている。なぜ? と問えば、ここなら安心して眠れるからという理由だった。そこまで気を張り詰めていたのか。
「ずっと誰かに狙われている気がして、地下で息を潜めていた毎日。それがこの清々しい空間でタケル君に守られている」……トールさんが深く、深く吐き出したため息は、これまでの恐怖を洗い流すようだった。
とりあえず、ご飯は大丈夫だね。八合炊いてるし。他には何を食べるかな。
じゃあ、ハンバーグにするかな。
あ、その前に、壁を作っておこう。
俺のテントやハクたちの風呂を見えなくする為の壁ですよ。
そうだ、それなら、新しい風呂を作るかな。
バスタブはあるしね。
お湯の出る魔道具もあるから、石でタンクを作って使えないかな。排水の魔道具も他にもあるから、使えばいいでしょ。そういえば、トイレもあるね。
じゃあ、つくっちゃえ。




