第24話 俺を巻き込み勇者召喚した国の人たちの思い。別国の稀人の思い……
□□□ 国王の思い、騎士団長の思い……勇者召喚の国(タケルを巻き込んだ国)
その頃、ローランリック王国では、勇者たちの訓練が大詰めに入っていた。
最後の仕上げとばかりに、ダンジョンに潜るのだ。
王国の西側にあるダンジョンは、ランクでいえばB。そこに、勇者一行と騎士団が共に向かう。
ただ、勇者といっても、ステータスが高いだけで、本当の戦闘経験は、森の魔物狩りくらいだ。
それを危惧するのは騎士団長だったが、王宮の習わしとして押し通された。
騎士団長自らが騎士団を率いて、今、ダンジョンの前にいる。
騎士団長からみて、この勇者一行は「理解できない者た。そのひと言でしかない。
口では格好のいいことをいうが、実際に訓練や学習など、適当としかいいようがない。他国の知識、今までの戦術など、全く学ぼうとしないのだ。
それに比べれば、勇者ではないと追い出されたあの男の方がよほどマシだったかもしれないと心の底で感じていた。あれはいい軍師になりそうだと感じたのだが、王宮の判断は違った。それは仕方のないことではあるのだが。
騎士団長は、今、己の命をかけて勇者たちを助けるつもりは全くなくなっていた。勇者たるもの、よいステータスを持っているならば、己の実力で戦うしかないのだ。騎士団の騎士たちには、国を守る為には自らが生き延びることを考えるようにいってある。
勇者ならば、これくらいのダンジョンを攻略することなど、容易いはず。それもできぬなら、国防は無理。そう判断せざる終えない。それは、陛下にも告げてこの場に来た。そうでないと、騎士たちを無駄死にさせることになるから、と。
王女はまだしも、陛下はそれを納得してくれた。
いささか疑問に思うことが多々あったのだろう。
確かに、勇者たちには破格の金を毎月払い、何でも思うがままに与えているが、その訓練たるや、情けないものだ。それを目にした陛下は疑問を持っておられる。ただ、王女が勇者のマコトという男に思いを寄せられているご様子。それで今の所は勇者を立てておられるのだ。
本当に情けない話だが、結果が良いものなら受け入れよう。だが、そうはなるまいと、騎士団長は予測していた。
二日後、結局今回のダンジョン攻略は失敗に終わった。
勇者たちはなんとか怪我くらいで終わったのだが、騎士団に二名の死者が出たのだ。負傷者は当然多数出てしまった。
この結果に、騎士団長は撤退の指示を出した。勇者たちだけでは進む事は無理だと判断したからだ。
それでも、勇者たちは文句タラタラで、絶対に残って続けると言い張る。仕方なく、騎士団長は通信用水晶で国王陛下に連絡を取り、心配事が現実になったと詳細を話せば、当然撤退の結論に至った。
ぶうぶう言う勇者たち一行を前に、騎士団の面々は死者を担架にのせて連れ帰った。
家族に対しては、国からの多額の保証がでた。だが、家族を失ったのだ。平然とはしていられまい。その上、勇者のパーティを守って死亡したのだ、納得できるはずもない。勇者だと日頃偉そうに言い、王都では好き放題だったやつら。それを民は見ていたのだから、文句が出るのも頷ける。
その対価として、国からは賠償金の増額が示唆された。その代わり、一連のことは話さないという条件で。渋々その話を受けた家族たちは、王国を出て行くことにしたようだ。勇者を召喚してまで魔王と戦争をしようとする国にはいられないということらしい。
それに対しての国からの引き留めはなかった。いや、引き留められなかったのだ。
事実として、今回の勇者召喚は失敗に終わったということ。国王陛下はそう判断された。騎士団長も同意見だ。だが、今まで金をかけて訓練させたやつらを、どう処分するか。
そこで、国王陛下と宰相殿に相談を受けた内容には驚いた。だが、それが成長の為には一番早いだろうということになった。
現実として、勇者パーティーに対しては、冒険者として各国を見て回る軍資金、白金貨五枚を渡しただけで、勇者というエンブレムはない。つまり、各国の優遇はないということ。それでもいいと勇者たちは言った。カタッ苦しい学習と訓練に嫌気がさしてきたのは、やつらも同じだったらしい。
それでも、勇者としてふさわしい実力になって戻ってきたならば、出陣できるだろうと含んでおいた。
そうなれば、特別に財を与え、その他褒美の類いも様々あげられた。期間は二年。
さて、どうなることやら、と騎士団長はため息を付く。なるようにしかならない、というしかない。
それで、国にとって宝になるかゴミになるか。それは後の判断になるだろう。
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騎士団長の思いなど、全く知らない俺たちは、ハクの背に乗ってぐんぐん進む。街道を行く馬車を襲う魔物を討伐したり、商人の護衛たちも魔物から守り、当然、盗賊を見つけたときには、全てを狩り尽くしてアジトでお宝を手に入れる。
そんなことを繰り返しながら空を進んだ。
最初の国を通り越すのには、二日かかった。国境門の気配を感じて転移してくれるので、各門の近くはショートカットできる。本当に素晴らしい相棒だよ、ハクは。
その間に、面白い事を思いついた。
ハクが言うに、そろそろ空間を持つことができるだろうと判断したらしい。魔力もかなり増えただろうしね。ステータスの確認はしてないけど。
じゃあ、と街道の中に降りたって、やってみることにした。
ハクに教えてもらい、イメージを固める。
俺の空間がほしい。
縦横、百メートル×二百メートル。高さがビル二階分ほど。太陽のように、熱はいらないが、朝には明るくなり、夜には暗くなって月が出るのが希望。
給排水は魔導具を使ってもいいけど、風はそよそよと吹くくらいがいい。年中、快適な温度を保ちたい。地面は芝生のように埃が舞い上がらないように。あとは、地面が掘れる方がいいんだけど、無理なら大丈夫。綺麗な木も花も植えたいけど、その辺りはお任せします。
あとは、使って便利だと思うことは付け加えてください。
<空間作成>
ぶわっと光った俺は、めまいがするほどになった。
ハクとニジが心配そうにこちらを見ている。
あ、終わったのか?
確認するのはどうすればいいんだろうね。
開けごま、とかオープンとか?
あ、デカいドアが開いたよ。これ、ハクでも通れる幅は充分あるね。
じゃあ、入ろうかと皆で中に入った。
だだっ広い空間だが、芝生が敷かれている。
中に入るとドアは自然と閉まった。そして、カチャリと鍵がかかったぞ。
『主、成功したね。かなり広いけど、広すぎない? あ、木があるよ。それに花も咲いてるね』
本当だ、とても空気が綺麗だし、清々しいね。
「これ、いいな。すごいよ、本当に。これからは寝床を探さなくていいって事だね? でも、外にでてドアを閉めればどうなるのかな。ドアが見えるのか?」
どうやらハクも知らないらしい。
じゃあ、とりあえず、出てみようか。あれ? ニジは?
ニジ~と呼んでみれば、花の側からやってきたよ。どうやらニジは芝生の感触が気に入ったみたいだ。ピョンピョン跳ねるたびに小さな花が揺れている。……それなら、あそこにニジ専用の池でも作ってやろうかな。
「外にでるよ」とドアの鍵を開けて外にでた。
すると、自動的にドアがしまった。これ、日本の自動ドアと同じだね。ドアといっても、引き戸だよね。
その場から離れれば、すぐにドアが消えた。
え? どこにある?
腕で探っても何もないよ。
これは素晴らしいよね。
『主。これ、空でも入れるよね。結界を張ってもいいし、近くで開けて中に入ればいいよね』
そういうことなんだ。
空に浮かんだ状態で結界を張り、そこで空間を開けばいいと学んだ。魔物の気配だけしっかり察知しておけば、どこでも空間に入れるんだ。それなら、王宮でもらったハクの入れるテントを使ってみるか。そう思い、再び空間に入ってテントを取りだした。おう! これはすごいね。まあ、王族が戦場での基地や自宅にするくらいだからね。テントの中は驚く装備がある。ベッドもあり、ハクの寝床もある。風呂とトイレもあるから、しっかり休み、しっかり食事をとり、しっかりと眠る。
その繰り返しなら、俺たちは元気でいられるだろう。
あと少しでインデルート国の手前まで行ける。
そう、あの海のある国の向こう側なのだから。その国は、サンライズ国。
南だから、まだ大丈夫だと思う。北の海洋国にも行きたいんだけれど、それは冬の後にしようと思ってる。
やっと、サンライズ国に入った。当然空からだけど。
インデルート国に向けて空を駆けるハクの背で俺は、あのスーパーのスキルを持つ稀人を探している。
どうやら、普通の民として生活しているようだが、どういうことだ? 国に能力を知られてはいないのかな。無事ならそれでいいんだけど。
そんな風に稀人の気配を追いながら、インデルート国に入った。
空から稀人の居場所を特定する。
あれ? 普通の家か。でも、おかしいな。家の中の存在場所が曖昧だ。
ハクに頼んでその家の真上にいるんだが、そこでやっと理解した。地下室にいる。なぜだろうか、国から追われているのか?
とりあえず、近くで地上に降りた俺たちは、家を訪ねることにした。名前はわかっている。トールと名乗っているが、本名は近藤透だ。
ハクは普通の猫サイズになってもらい、ニジはバッグの中に入ってもらって家の前までやってきた。
間違いない、ここだ。
コンコン。
あれ、誰もいないのか? 気配は感じるのに静かすぎるな。地下室に潜んでいるからかも。もしかして見張られたりするんだろうか。




