第105話 Sランク迷宮に行こう!
その後、結界を解除して、Sランク迷宮の探索者協会へ向かう。
建物の前にゆっくりと降り立った俺たちは、ドアを開いて中に入ってゆくんだが……そこでは、ちょっとしたもめ事が起こっていた。
これ、どうするよ、と受付に視線を向けると、こちらへと手招きされたので、二人で移動する。
「すみません、騒がしくて。それで本日は、迷宮に入られるということですか?」
「そうです。問題ありますか?」
「いえ、冒険者ですか?」
「とりあえずはそうです」
「ではギルドカードを見せてください」
どうしても見せろというので、仕方なくギルドカードを取り出した。そう、黒いカードを出してみると、不思議そうに見ていたが、慌てて誰かを呼んだ。 なんだろうと思っていれば、奥から男性がやってきて、恭しく黒いカードを目の前に置く。
「タケル様。本日はSランクの迷宮に挑戦されるのでしょうか?」
「はい。そのつもりですが、問題ありますか?」
「……いえ、問題ございませんが。お一人ですか?」
「二人です。俺と眷属の二人で挑戦したいと思っていますので」
「では、後ろの方は眷属だと?」
「そうです。無理ですか?」
「いえ。問題ございません。ではいつから?」
「この後すぐにと思います。食事も持っておりますので、できるだけ潜りたいと思います」
「承知しました。では、お気を付けて向かわれてください。できましたら、攻略を終えられたらこちらへ戻っていただきたいのですが……」
「一応、覚えておきましょう。ただ、出たことだけはお知らせしますので。では、書類は?」
「あ、し、失礼しました。こちらをお持ちください」
「はい。ありがとうございます。ではギルドカードを返してもらえますか?」
も、申し訳ございません! と深く頭を下げたおじさんだけど、これで大丈夫か?
まあ、どうでもいいか。じゃあ行こうか、クロノス。承知、と俺の後をついてくる。そのまま空に上がり、Sランク迷宮のチェック門へと降り立った。騎士たちは驚いたが、俺が差し出した書類を見て、すんなり通してくれた。
じゃあ、行ってきますと笑顔で中に入った。だが、忘れてた!
「そうだ! ストレージを持ってるので食事も十分だし、決まった時間が過ぎても出てきませんので、気にしないでくださいね。じゃあ、行ってきます!」
行ってらっしゃい! と騎士たちが笑顔で送り出してくれた。
中に入って驚いた。最初のホールには転移陣があったが、誰も使った事はないらしい。まあ、それは仕方がないだろうね。冊子には十階層に転移陣があり、その先は五階層ごとらしい。まあ、別にいいけどね。楽しいことがあればいいな。
最初の階層から、Aランク魔物が出てきたんだけど、さらっとクロノスが始末した。一階層全てで五分もかからなかったのは、ちょっと怖かった。ブレスで焼き尽くしてお終いだった。絶対に敵に回したくないクロノスだね。
二階層からもAランクが束で出てきた。
さすがに、二人で殲滅戦をやりました。楽しかったよ、本当に。昼までには五階層に達していたので、二人でゆっくり昼ご飯を食べた。ラスが作ってくれたホワイトシチューと焼きたてパン。そしてポテトサラダと生野菜。これは夕食でもいいだろうと思えるメニューだ。ガツガツ食って、お腹いっぱいだ。
少し休憩して、と思っていたんだが、そろそろリポップしそうだからね。少し焦ってボス部屋に入ることになった。
ここのボスは、角が二本のサイクロプスだ。これは任せろと言うクロノスに譲ることにした。志願した形で前に出たクロノスは、あっという間にドラゴンの姿になり、サイクロプスが数歩引いたほどの威圧を放つ。これは、勝てないな、とクスリと笑った。
当然、高温のブレスが放たれる。あまりに高温なので、炎は白く輝いている。すごい、としか言いようがない。当然、敵は消えた……
これがクロガネ竜の特殊個体の力か。素晴らしいな、と改めてクロノスの戦いを見て、感心するしかない。
「お疲れ、クロノス」
「うむ。簡単であったな」とケタケタ笑うクロノスは既に人型を取っている。本当に敵には回したくない。
その後のドロップ品はなぜか俺のストレージに入れろというので入れた。というか、勝手に入った。なんで? と少し疑問だけど、まあ、任せる方がいいだろう。
それからも次々と階層をクリアしていった俺とクロノスは、気がつけば、最下層に立っていた。「もう終わりか?」とこちらを見るクロノスだが、俺もあまりに簡単であっけにとられている。どうやら、二十階層で終わりらしい。それならやりましょうか、とボス部屋を開く。そこにいたのは、ワイルドハント・グリフォンだった。グリフォンの王と言われている奴だが、気持ちが高ぶると雷を落としまくるんだ。
「少々面倒な奴ではあるが、どう戦うのだタケル。あの雷は面倒だぞ。それを回避するのは無理だろう。跳ね返すのはなんとかなるかもしれぬが、こちらのダメージも大きい」
確かにそうだろう。もし、正面から戦うならばな。だが、こんな国のダンジョンならば、別に正攻法でいく必要はない。
「大丈夫だ。一気に消すから」
「消す?」とクロノスは不思議そうだ。
さて、そろそろやろうかな。
クロノスは何が起こるのかとワクワクしているみたいだ。こいつ、本気で受け取ってないな。まあ、それでいいよ。見てろよ、思いもよらないだろうし。
じゃあ、やるぞ。
「削除!」
シュッと!一瞬で目の前のワイルドハント・グリフォンが消えた。
「はぁ?!」と聞こえたのはクロノスの声だ。
戸惑ってるな。
「どういうことだ?」と不安らしい。なぜ、不安になるんだよ、と笑った。「削除したんだよ、魔物を。消したんだ。おそらくだが、亜空間でバラバラになって塵にになったと思う。これをやると、危険を冒さずにダンジョンを攻略できるからな」
「なんと言うことを……」とクロノスは呆れている。まあ、呆れるかもしれないよな。でも、こういうときには助かるんだよな。ものは使いようってことだろ。
ポケッとしているクロノスの近くにドロップ品が並ぶ。それぞれを確認する間もなく、ストレージに回収してから奥に向かい、コアを取りストレージに入れた。そして祭壇を破壊することにした。
少し下がって、魔法を放つ事にした。祭壇を破壊したい、ダンジョンを収束する。そのための魔法を作りたい。
(祭壇破壊魔法)
ズズズンッ! と地響きが怒ったかと思えば、コアが置いてあった祭壇がパラパラと崩れ始めた。
「クロノス!」と叫んで転移陣に向かって走る。やっと転移陣に乗った俺たちは、光に包まれて第一階層の転移陣の前に立った。というか、そこは小部屋だった。これって意味があるのか? と外に出れば、驚かれた。騎士たちが取り囲み、迷宮を攻略したのかと問われたので、もちろんだと答えた。あっけにとられている騎士たちをその場に残し、探索者協会に連絡を入れておいてくれと伝えて、俺たちは空に上がった。
さて、これからどうやって王宮に行くかな。
「タケルよ、どうやって王宮に向かうのだ?」
「とりあえず、王宮にどうやって知らせるか、ってことだよね。さて、どうするかな。手紙でも送るか。謁見の間に乱入するかな。それも面白そうだね。話を聞いてくれるかどうかもわからないけど、聞かないならそれはそれで仕方がないんだ。でも、謁見の間で顔をさらすのは最後にしたいんだ。だからどうするかなぁ」
「それならば、伝聞のようなものを届ければ良いではないか。姿を見せなくても声だけを届ければよい。それならば、王宮の上空で話せばいいだろう。誰が聞くかは知らんが、国王たちに聞かせれば良いではないか」
「うん、そうだね。じゃあ、やってみようか。ちょっと待ててね」
さて、どうやってやるかな。
そうだ、王宮だけに聞こえればいいのか。それなら王宮内に届くように声を届けるか。
じゃあ、やってみようかな。
『えーっと、聞こえますかぁ? 誰か聞き取れるかなぁ。魔法で声を届けてます。聞こえたら返事をしてください~』
あはは、王宮の中でパニックになっているぞ。面白いほど慌ててるけど、誰が返事をするんだろうな。
「タケル、楽しんでおるな」
「うん、楽しいよ。だって、慌てているからさ、本当ならすまし顔で落ち着いてる奴らだけど、滑稽でしょ」
「確かにそうであるな。だが、我らの姿は見えておらぬ。認識阻害の結界を張った故、認識はできぬであろう。魔法使い塔を滅したものだと伝えればよいではないか」
「ああ、そうだ、忘れてたよ。それも話そうかな」
『ええと、誰も聞こえてないのかなぁ。俺は今朝、魔術師会の塔を殲滅した人間だ。それでこの後の話を聞いた方が良いと思うけど、どうかな。気にならないなら、別にいいけどね。国王じゃなくてもいいよ、どうせ貴族に操られている国王なんか話しても仕方がないからな。ちゃんと聞かないと、驚くことになるけど、いいのかなぁ。まあ、あと二分だけ返事を待つ。その後は話をしないから。じゃあ、二分だけ待つよ~』
クククとクロノスが笑っている。笑い事じゃないぞ、お前。
そろそろ夕方になるかな。とりあえず、そろそろ二分になるからもう話は終わりだな。じゃあ、一応警告してから戻ろうか。
『そろそろ二分だけど、話をする気がないみたいだから、俺は戻るよ~じゃね~』
それだけ言って、クロノスに話をした。
このままSランク迷宮に入るかな。まだ時間も早いから、それでも良いと思う? と聞いてみた。
「それで良いのではないか。邪魔が入る前にSランク迷宮に入った方がよかろう。そうでないと、面倒なことになるぞ」
やっぱりそう思うよね、じゃあ、そうするかな。
ラスに連絡を入れておいてくれるか。もう一つのSランク探索者協会へ行くから。
承知した、と聞こえたので、クロノスと一緒に結界を張り、地図を取り出し、位置を確認して、転移した。
入り口に降り立ったとき、建物には職員いかいなかったから、ちょうど良いな。
「連絡したぞ。午後七時から八時くらいに連絡するそうだ」
わかった、と入り口を入った。
いらっしゃいませ、と笑顔で迎えられる。
「探索ですか?」
「はい。今からでもいいでしょう?」
「問題ございません。身分証を見せていただけますか?」
「ええと、身分証ですか。ギルドカードでいいですか?」
「はい。お預かりします。ええと、このカードは……少しお待ちください」
そう言って裏に駆け込んだ。またこのパターンかよ。どうしてこんなことになったんだ? いちいち世界冒険者ギルドのカードは認識されてないだろうよ! 情けないなぁ。でも、仕方がないか。
「お待たせしました、タケル様。本日は今からダンジョンへ参られますか?」
「うん。時間は関係ないよね? Sランクは関係あるのかな?」
「い、いえ。問題ございません。では、こちらを記入してください」
はい、はい、っと。
さらさら書いて渡しました。それを受け取った男性は、問題ないと受け入れてくれた。眷属とは? と聞かれたので後ろのクロノスを指させば、大きく頷いてくれた。そこで小冊子を受け取り、書類を手にして外に出た。
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【あとがき】
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