あなたならきっと
泣いて震える双葉さんの肩を抱きしめた稔さんは、こちらを見て静かに言った。
「すみません。少しだけ、時間をください。」
そう言われると、圭介さんが俺達へ静かに部屋を出るよう促す。
「圭介。悪いけど、お前もだ。」
そう言われた圭介さんは驚いたように稔さんへ身を乗り出した。
「で、でも!」
「頼む。」
真剣な眼差しに、圭介さんも何も言えず、小さく頷いて部屋を出て行った。
俺達も後に続き、柊木さんを先頭にレストランへ向かう。
「あれ? 縛達は?」
「あ? どこ行った?」
柊木さんが首を傾げる。
「さぁ〜。」
結局誰も分からず、俺達はひとまずレストランでコーヒーを飲みながら待つことにした。
もちろん俺はカフェラテ。
「ん! これ牛乳の味が濃くて美味しいー!!」
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僕は目の前で落ち込んでいる忍野の後を追った。
「はぁ……俺の何がダメだったんだろう。」
そう呟くと、忍野はソファへ腰を下ろす。
「なぁ? ハク?」
そう言って僕を見つめた。
「やはり、あなたは──。」
「あっ。それ以上は言ってはダメだよ。」
言葉を遮られ、僕は息をのむ。
「どうして、あなたがその格好で……。」
忍野はどこか寂しそうに笑った。
「さぁなぁ。これには、お前も触れちゃいけない。」
どういう意味だ。
「それは、一体どういう意味なんですか?」
僕が問い掛けた、その時だった。
「縛〜! いたー!! ねぇ! 聞いてー!」
後ろから勢いよく駆け寄って来たのは正樹さんだった。
どうやら、美味しいカフェラテを見つけて興奮しているらしい。
僕が忍野へ視線を向けると、彼は口元に人差し指を当て、小さく「しー」と口だけを動かしていた。
まさか……。
「縛!!! 聞いてる!?」
正樹さんが僕の腕を掴み、そのままレストランへ引っ張って行く。
僕は最後まで忍野から目を離せなかった。
だが、まだ真実は分からない。
僕は静かに意識を正樹さんへ戻した。
遠くで忍野が小さく笑う。
「このタイミングで来たのは、本能か危機感か……相変わらず分からないなぁ。」
忍野はそう呟くと、小さく目を細めた。
その呟きは誰にも届くことなく、静かに世界へ溶けていった。
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甘党な縛のためにカフェラテを見つけた俺は、宿の中を歩き回っていた。
どこにもいないじゃん!!
そう思いながらロビーへ戻ると、さっきも探したはずなのに、縛がまるで何事もなかったかのように立っていた。
「縛〜! いたー!! ねぇ! 聞いてー!」
俺は嬉しくなって駆け寄る。
でも、どこか心ここにあらずという感じだ。
「あのさぁ! めっちゃ美味しいカフェラテ見つけた! 甘い上に濃厚だから絶対美味しいよ! しかも、あんバターまで付いてる!」
話し掛けても、全然こっちを見ない。
もういいや。
レストランへ連れて行こう。
「縛!!! 聞いてる!?」
反応なし。
もう! たまにあるけど、その不思議ちゃんは何!?
俺は縛の腕を引っ張りながら歩き出す。
「それにさぁ、期間限定の抹茶アイスにパンケーキもあったし。」
「抹茶?」
あっ!
やっとこっち向いた。
「そう!! 美味しいやつ!」
やっと興味を示してくれたことが嬉しくて、俺は足取り軽くレストランへ向かった。
もちろん、ソファに忍野さんが座っていたことなんて、まっっったく気付かなかった。
……うん。
あれは無理だぁ。
レストランへ着くと、いつの間にか真美ちゃんと結愛ちゃんも来ていた。
「あれ? 真美ちゃん! 久しぶり!!」
「昨日会ったでしょ。」
真美ちゃんが笑いながら返す。
その笑顔を見ていると、不意に双葉さんのことを思い出した。
「きっと大丈夫よ。」
真美ちゃんは何も知らない。
それでも、その一言だけで十分だった。
俺は何も言わず、小さく頷く。
きっと、あの二人なら支え合って生きていける。
そんな確信だけは、なぜか胸の中にあった。




