自由だぁーーー!!!
「じゃあ、正樹くんの体調も落ち着いたみたいだから、僕は帰るね。」
小鳥遊さんはそう言って立ち上がる。
「薬だけは忘れずに飲ませてください。行動に制限はありませんが、何かあればすぐ連絡を。」
「分かった。」
柊木さんは荷物を持ち、小鳥遊さんと一緒に部屋を出て行った。
縛は静かに薬を俺へ差し出す。
……はい。飲みます。
その日は久しぶりにベッドの上でゆっくり過ごした。
────────
翌朝。
昨日は鼻血が出なかったこともあり、今日はみんなと出掛ける許可が出た。
「やっと自由だぁーーーー!!!」
「よしっ。」
体を軽く動かしてみる。
昨日の筋肉痛は少し残っているものの、体調は悪くない。
ピロン♪
『着いたよー!』
双葉さんからのメッセージだった。
今は朝の八時。
「縛ーーー!!!!」
「はい? 朝から元気ですね。」
そう言いながら、浴室から出てくる縛。
……なんで上半身何も着てないんですかね。
それにしても、同じ物を食べているのに、なんであんなに筋肉が付くんだろうなぁ。
俺は自分のお腹を触る。
ぷにっ。
……やっぱり野菜増やそうかなぁ。
「で? なんですか?」
「双葉さん着いた!」
「…………今、何時でしたっけ?」
「八時。」
縛は少し考えると、どこかへ電話を掛けた。
「急ですが、朝食を五名分追加でお願いします。食後にカフェも利用したいので、あの個室を使わせてください。はい、お願いします。」
どうやら手配をしているようだ。
俺は柊木さんへ連絡すると、どうやらもうロビーで双葉さんたちと会っていたらしい。
『やっぱ農家は朝早いなぁ。本人たちも謝ってたぞ。』
農家さんってやっぱり朝が早いんだなぁ。
俺には真似できそうにない。
「正樹さん、何しているのですか? 行きますよ。」
気付けば縛は出掛ける準備を終えていた。
俺は自分がまだ着替えていないことに気付き、慌てて準備を始める。
「急いでくださいね。」
そう言うと、縛はラーメンのクーポンを両手で持った。
ピタッ。
「な、何してるの? 縛。」
「さぁ、何でしょうね。健康のため、このクーポンは一時預かります。」
「ちょっ! それ俺のだから!」
「……やっぱり捨てることにしましょう。」
そう言って、縛はクーポンを静かに自分のポケットへしまった。
ねぇ、それ俺のだよね?
疑問に思いながらも、俺は縛の後に続いて部屋を出る。
最近は何かしら方法を考えて、俺の命を奪おうとしている。
こわっ!
ロビーへ着くと、全員が揃っていた。
なるほど。圭介さんも来てたのか。
ん? 真美ちゃんと双葉さんも仲良くなってる。
結愛ちゃんは子ども二人と遊んでいる。
それを見守る男性二人。
……傍から見たら不審者だと思ったことは黙っておこう。
圭介さんは何がおかしいのか、こっちを見てニヤニヤしている。
なんだ?
「おはよう。早く着いてしまって申し訳ない。」
稔さんが申し訳なさそうに声を掛けてくれた。
「大丈夫です! 朝から一緒にご飯を食べられるなんて嬉しいです!」
「本当に申し訳ない。すっかりこの生活リズムに慣れてしまって。」
申し訳なさそうに笑う稔さんの頭を、圭介さんが軽く叩く。
「だから早いって言っただろ。」
「その通りだぁ。待たせるわけにはいかないと思ったんだけど、本当に申し訳ない。」
「大丈夫ですから!」
「その代わり、今日の観光で掛かるお金は俺らが持つよ。」
「いや、本当に気にしないでください。」
「遠慮するなって。」
「……では、お言葉に甘えようかな。」
すると今度は、双葉さんが圭介さんの頭を軽く叩いた。
「あんたは自分で払いなさい。朝から本当にごめんなさい。」
「大丈夫ですよ!」
このままでは謝罪大会が終わらないと思った、その時。
ぐぅぅぅ…………。
「やだぁ、ごめんなさい! お腹すいたわよね!」
「それじゃあ、みなさんで朝ご飯に行きましょうか。」
縛がそう提案すると、みんなが歩き出す。
俺は自分の腹に初めて感謝した。
ナイス!




