正樹確保!
稔さんが語り合えると、俺は胸がジーンとした。
これが家族を持つという意味かぁ。
「なぁ、父ちゃん、話終わった?」
いつの間にか近くに来たのか、小学生の兄が稔さんに絡む。
あれ? いつの間にか一人大人が増えてる。
「おうおう〜。話に夢中で子ども放置してたって、双葉ちゃんに言おうかなぁ〜」
アイドル顔で日に焼けた男が声を掛けて来た。
「やめろ。双葉に言ったら、お前の彼女にキャバ行った事言うぞ〜。」
「あー、それ幼馴染に言う事かぁ!」
幼馴染の圭介さんかなぁ? 背中にはあおくんが乗って、笑ってる。
いいなぁ。幼馴染……
グゥー。
俺じゃないよ。
顔を上げると、あおくんが「お腹空いた〜!」と自分の腹を指差す。
グウゥー。
…………。
「今のは僕じゃないよ。」
そう言って、大人二人がこっちを見る。
「はい。俺です。」
「お? じゃ、ご飯食べに来るか?」
俺は手を振って遠慮していると、圭介さんが話す。
「今日、おにぎりの日か?」
「いや、今日は確かラーメンって朝言ってたようなぁ。」
「へぇー、珍しいなぁ。」
「あぁー、なんか客が来るから、手軽にって言ってたぞ。」
二人が話している横で、俺はそっと手を上げる。
「お? どうした??」
「ごちそうになっていいですか?」
俺が聞くと、「おー、来い来い。」と言いながら、皆で歩き出す。
その道中で、圭介さんから聞かされたのは、毎日稔さんからの甘さたっぷりな惚気を聞かされて、最近めいいってるという話だぁ。
甘さたっぷり。
縛好きそうだなぁ。
「そういや、兄ちゃんもイケメンだよな?」
そう言うのは小学生の兄、昴くんだった。
「いや、そんな事はないと思う。」
「いやいや、爽やかな顔をしているよなぁ。稔とは真っ反対。」
「お? 喧嘩かぁ?」
圭介さんのイタズラに、稔さんはニヤッとする。
「あ、見えて来た!」
あおくんが前に見える建物を指差す。
「あそこが家なんですか?」
俺が聞くと、「うん!」と元気よく答えるあおくん。
なんとなく奥さんの名前を聞いて、そうじゃないかなぁとは思ってたけど……まさか旦那さんとお子さんに先に会ってしまった。
塀の入り口に近付いて来ると、稔さんが大声を出す。
「双葉ー! 帰ったぞー!」
そう言うと、双葉さんが走って来る。
「おかえり! それより、大変よ!! 今日来るお客さんが一人、今行方不明になったみたいで!」
「こいつじゃない?」
圭介さんが俺を指差す。
「え? そんな訳……。確かにあの写真の人だわぁ。」
待って、どの写真だぁ?!
「東雲さん〜! いましたよー!」
双葉さんが手を大きく振り上げて、遠くにいる二人を呼ぶ。
近付いて来た二人が、素晴らしい笑顔だぁ。
やばい、怒られる!!!!!
「待って。佐伯の兄ちゃん。」
逃げるより先に、柊木さんの手が伸びて来た。
縛は双葉さん達に頭を下げながら謝ってた。
そして、俺の方を向く。
「病み上がりにどこ行くのですか?!」
「どこって……ここ?」
「………はぁー。」
縛が大きくため息をつく。
「東雲、ちゃんと怒らないとまだやるぞ、こいつ。」
柊木さんの言葉に、縛は頭を振る。
「いえ、もう止めても無駄だと分かったので、GPS付けます。」
「待って待って待って!! 反省するから!!! ねぇ!?」
俺が謝ると、縛がじーっとこっちを見る。
なんとなく居心地が悪く、柊木さんの後ろに隠れようとしたが、柊木さんに前へ押し出される。
裏切り者!
「いえ、きっと口だけですから。決定事項です。」
「そ、そんなぁー。」
俺は膝から崩れて、落ち込む。
「ドンマイ。」
昴くんが慰めてくれる。それを真似するかのように、あおくんが俺の肩を叩く。
「どんまい。」
うぅー、まさか子ども達に慰められる日が来るとは…………
グウゥー。
俺とあおくんのお腹が鳴ると、周りの皆は爆笑する。
「もぅ! わらわないで!」
あおくんが怒ると、俺はうんうんと頷く。
それにより、さらに笑いが起こる。
分からぬ!!!
「ふふ、お腹空いたなら、よかったらご飯食べて行ってください。」
双葉さんの言葉に、俺は足軽やかに進むが、進まない。
肩を柊木さんに掴まされてるからだぁ。
「………ご飯。」
俺が言うと、柊木さんが無言で俺を見る。
はい。静かにします。
「ありがたい誘いですが、流石にご迷惑なので、僕たちはこれで。」
「ん? 食べていけ。迷惑じゃないから。」
稔さんがそう言うと、圭介さんと一緒に縛を押して家に入って行く。
あーー、一番権利がある人を先に見つけるとはやるのぉー。
俺がそう思っていると、柊木さんが俺の肩を離す。
「ラーメンー!!」
俺がスキップして行くのを見て、柊木さんが小声で、
「やっぱりラーメンのせいか。」
と言っていた。
俺は聞こえない。
ふふ、ラーメン楽しみだなぁ。
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小ネタ
「ねぇ、縛。今、もも食べたのだけどさぁ。」
「はい、食べましたね。」
「唇見て。真っ赤(笑)」
「…………。」
「田中先生。正樹さんがまたやりました。至急お願いします。アレルギー反応です。」




