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人類の罪  作者:
7/24

ご飯に罪はない

縛の言葉が胸の中で何度も何度も強く打ち付けて来る。

頭では知ってる言葉なのに、意味が入って来ない。


「おにさん、こっちだよー!」


「お家帰るよ〜」


「今日の夜ご飯なに?」


近くにいる小学生達の声


親子の会話


さっきまでまったく気にならなかった声がやけに頭に響く………


「…い……ぉい…おい!兄ちゃん大丈夫かぁ!?」


肩に伝わる強い振動に思わず意識が戻る


「ふぇ!…え?」


目の前には、警備帽子を被ったおっさんが立っていた。…え?状況が信じられず周りをキョロキョロすると、辺りはすっかり暗くなっていた。隣りに座っているはずの縛もいない。


「大丈夫かぁ?兄ちゃん?夕方からずっとここに座っていたよなぁ?もう公園閉まるから、そろそろ帰りなぁ。」


公園の警備員が眉を顰めながら、しっしっと手で払う仕草をするのを見て、今までのは夢だったのか?いや、そんな筈は……


再び考え込んでしまった正樹を見て、警備員は正樹の腕を掴み立たせる。


「しっかりしろ、兄ちゃん。ほらっ、早よ帰った帰った!兄ちゃんが帰らないと俺、退勤できねぇんだよ。」


背中を押された正樹は渋々歩き出す。公園の出口に着くと、先より一段と強い力で押し出された。


「ほなぁ、兄ちゃん気をつけて帰れよ〜」


ガラガラガラーガシャン


…………………目の前で公園の鉄門を閉められた。


先までのは夢だったのか?まさかずっーと公園で寝ていたのか?

「うぅー」

思わず口から声が漏れ出す。

信じられない気持ちになった正樹はしゃがんでしまう。

……はぁー、訳わかんねぇー…


慣れた手で右ポケットからiPhoneを取り出す。


「はぁー、今何時だぁ。」


光るiPhoneの画面を見ると思わず力が抜け、その場に座り込んでしまった。


「なんだぁ、これぇ〜」


そこに映ったのは、ベンチに座っている自分とピースを決めている縛だった。


「…………夢じゃなかったのかぁ〜」


怖い状況の筈なのに、なぜか夢じゃない事に酷く安堵した。


「よいしょっ」


重たい腰を上げて、立ち上がる。心なしか全身が固まってる。


「あぁー、とりあえず帰るかぁ」


固まった腕を少し回して、公園から家へと向かう。


ぐぅーと小さく主張する腹の音に今日はカフェラテしか飲んでいない事に気付く。

帰り道ついでにコンビニにも寄って行く。


とてつもなく疲れてしまった……


とぼとぼと重い足を半分引き摺って自分の家に着くと、違和感を感じた。


「…なんで電気がぁ……」


まっ、まさか!!


泥棒!!


一気に目が覚めた正樹は、外に置いてある花壇から植木鉢を取ると、じり…じり…とドアに近付いて行く。

静かにドアまで行く事が出来た正樹は、ドアノブに手

をかける。

…よしっ…開けるぞ!…………いや、5数えて開けよう…1.2.3〜.4〜.5〜〜……よしっ今度こそ!!


その瞬間、玄関のドアが勢いよく開く。


ゴンッ!


「ん?あ、おかえり〜」


「っ……!」


開いたドアは見事に正樹の顔面へ直撃


あまりの衝撃に力が抜け、手に持っていた植木鉢が――


ゴトッ。


今度は自分の足の上へ落ちてしまう


……とことん災難である。


「!!!!!!ーーーっ!いたいーーー!」


文句を言おうと耐えていたが、耐えられず思わず叫びが出てしまった。こんな時間に誰だよ!と涙目になりながら自分の鼻を押さえる。


「あぁーすみません。痛くないですか?」


と自分の鼻に長い白い指が触れる。


「だいじょ……」

大丈夫な訳あるかぁ!と文句を言おうとしたが、相手の顔を見るとその言葉は口の中に戻ってしまった。


「赤くなってますね。今冷やすの持って来ますねー」


まるで我が家のように冷蔵庫に向かい、保冷剤を探す黒い服の男。


そう…彼こそは縛である。


…………え?…………


信じられない気持ちで一歩後ろに下がって、玄関のドアを閉める。そして、また開ける。また閉める、開けると何回か繰り返していると…


「何回やっても人は変わらないですよ。ディ◯ニーの見過ぎじゃないですか?」


保冷剤を持っていつの間に目の前にいる縛を見て、冷静に考えた。


………ツッコミするんだぁ。


縛に手を引かれ、家に入って行くと机には唐揚げ弁当が2つ置いてあった。


「………………」


ぐぅー……体はいつも正直。


「ふふっ、お腹空きましたね。お弁当温めてますよ。あっ、コンビニ寄ったのですね。どうせ味噌ラーメンか唐揚げ弁当でしょうから、冷蔵庫に入れてくださいね。」


縛に言われたまま、とぼとぼと歩きながら、冷蔵庫に味噌ラーメンを入れる。そして、手を洗い、うがいをした後は、ソファに座る縛がポンポンと叩く所から少し離れた所に座った。


「さぁ、温かい内に食べましょ。」


縛から渡された箸を受け取ると、唐揚げ弁当を開いて、野菜、唐揚げ、ごはん、野菜、唐揚げ、ごはん…無心で食べる………


「いや!違うでしょ!なんでいるんですか!?」


パンと机を叩くと


「お行儀悪いですよ、座って食べてください。」


ピシッと言われてしまった。


「うぅー」


納得いかないが、ご飯に罪はない。

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