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人類の罪  作者:
6/19

君だよ

ピロリン♪ピロリン♪


ポケットに入っていた携帯を取り出すと、画面に出ていたのは病院からの電話だった。


「ごめん、希空ちゃんちょっと離れるね」


木に寄り掛かっている患者に声を掛けた後、見える所で病院からの電話に出る。


「はい、田中です。」


電話の向こうからは、希空の“家族”を名乗る人物が面会を希望しているという話だった。


「ですから、まだ会わせるのは難しいかと…」


苛立ちを覚えながら、電話の向こうにいる看護師に説明していると、何かを持った男性が希空に近付いているのが見えた。


「すみません!病院戻ったらまた話しましょ!」


急いで電話を切り、希空に駆け寄る。

-----------------------------------------------------------------------


バンドを確かめようと手を伸ばすと


ザッ、ザッ――


背後から近づく足音に振り返るより先に、鋭い声が飛んだきた。


「離れろ!」


肩を掴まれ振り向くと、白衣を着たメガネの女性が見えた。


「あっ…」

話そうと口を開け掛けた時


「その方私の患者なんです。触らないで頂きたい。」

メガネがギラっと光るかのように、強い口調の多分医者の女性に思わずムッとしてしまう。


「反応がなくて心配で。前に知り合いが入院してた時、病院のバンドで管理してるって聞いたことがあって……」


そう言うと、医者は自分のおでこを抑えてながら、

「……本当にそれだけですか?」


「はい」


しばらく俺を睨んだ後、医者は小さくため息を吐いた。


「……すみません。言い過ぎました。この子、見た目が目立つせいで、怪しい人に声を掛けられることが多くて……警戒してしまいました。」


少し申し訳なさそうな医者に、先までの感情もなくなり逆に申し訳なくなった。


「いえ、勘違いさせた自分もいけないので大丈夫ですよ」


「本当に申し訳ない。」


このやり取りをしてる中でも、まったく反応を見せない小柄な女性に思わず好奇心が芽生える。


「この子どうしたのですか?呼びかけても反応がなくて……」


「あー…大丈夫ですよ。この子はこれが日常です。」

少し重たそうに口を開きながら、痛々しい表情で小柄の女性を見つめる医者。


「なんの病気ですか?」

口に出した瞬間、自分でも驚いた。


俺は何を聞いてるんだ。


初対面の人間に聞くことじゃない。


なのに…


知らなきゃいけない気がした。


なぜか胸の奥がざわつく。


理由もなく、この女性から離れたくなる。


「なんでそんなこと聞くんですか?患者の情報ですよ。個人情報って分かってます?」


医者の表情が少し怒っているのを見て、まずいやらかした。

「あっ、いや……は、は」

愛想笑が思わず出てしまう自分が情けない………


「はぁー、もういいです。今あの木の所までは貸切なので、あっち側でしたら使えますよ。」


医者から遠回しにあっち行けと言われ、少ししょんぼりしながら「あっ、はい。すみませんでした。」とか細い声で返事し、そそくさと移動する。


歩みを止めず広場まで来ると、空いてるベンチに腰掛ける。

「ふぅーやっと一息つける。」

思わず独り言が出てしまうが、誰も聞いてないからよしっ


気付けば公園の広場には人が増え、子ども達が走り回ったり、家族でピクニックしてたり、老夫婦が散歩したりと公園の中ではゆったりな時間が流れていた…

「ふぁ〜」

あんまり寝れてない影響か、思わずあくびが出る。

それにしても今日は本当に気持ちの良い天気だなぁ〜

日陰は風も吹いて涼しい……


キャッ、キャッ――


子どもの笑い声が聞こえる。

けれど、その声は少しずつ遠ざかっていく。


……待って


どこか懐かしいその声に手を伸ばそうとした瞬間、意識は深い闇へ沈んだ。

----------------------------------------------------------------------


「…さ………さん。大丈夫ですか?」


白衣の男性が問いかけてくる。

声が出ず頷くと

「よかったです。具合悪かったら言ってくださいよ。

では、報告しますね。3号と4号は無事に育ってます。」


男の言葉に頷き、管が繋がっている手から視線を上げると、目の前にはカプセルに入っている二人の胎児がいた。


トクン、トクン――


無機質な機械音の中で、それだけが……


たしかに――


“生きている”証だった。


----------------------------------------------------------------------

カァ……カァ……


カラスの鳴き声に目を覚ます。辺りはすっかり夕暮れになっていた。ん…左頬が暖かいぞぉ…

パッと顔を上げて、左を見るとそこにはワイルドお兄さんがいた。


「うわぁー!」


驚いて立ち上がり、後退りをする。

その姿を見たお兄さんは苦笑しながら


「よく寝てたね〜改めて自己紹介をさせてもらうよ。はじめまして、僕が手紙を出した、東雲しののめ) はく)だよ。よろしく。」


握手を求めるかのように伸ばされた手を、思わず反射的に握り返す……あ…握ってしまった。これも仕事病だぁ……営業のくせだぁ……


握ったからには、自分の名前を言わないのも失礼かと思って口を開く。

「えっ、えっと、佐伯さえき 正樹まさしでふ。」噛んだ。うぉーーー、最近災難過ぎじゃねぇ。

手を握ったまま俯く正樹に縛は思わず笑ってしまう。


「ふっ、知ってる。まぁ、座って」


離された手でベンチに座る事を勧められる。

なんで自分の名前を知ってる。思わずプルッと鳥肌が立ってしまう。

ベンチを見て悩む正樹。


………とりあえず…はじっこにしよっ。うん。


ベンチに正樹が座ったのを確認した縛は口を開く。


「なんで知ってるか気になる?」


その言葉に頭を振って頷く。


「ん〜じゃ先に僕の話を聞いてくれる?聞いてくれなくても話すけどね。」


返事をする前に縛さんの話がどんどん進んで行く。意外と強引だぁ。


「14年前に日本を震撼させた人身売買事件があったのは知ってる?」


「知らない、だって9歳だし。興味もないです。縛さんは逆になんで知ってるのですか?」

と少し無愛想に返事をする。


「僕はまぁ〜そんなに詳しい訳じゃないだけど。その時、逮捕されたのは、絶大なカリスマ性を誇った政治家久遠くおん おさむと、世界各国の富豪たち。被害者は約200人の子どもたち。」


「2…200人ですか?」

思わず聞き返してしまった。


「そうだよ、一番下は1歳で一番上が15歳だった。全員未成年だった事で尚更事件は注目を浴びた。しかし保護された彼らには一つ共通している事がある。それは誰も覚えていないと言う事。200人、誰も覚えてないんだよ。連日ニュースや新聞で取り上げられ、子どもや村に関する情報もない。その中で主犯だった久遠は突然の病死。そして、関わった関係者も次々と不審死して行った。」


静かに語る縛さんの声にゾクッとする


逃げ出したい


なのに耳を塞げない


なぜか最後まで聞かなければいけない気がした。


そして…


「その被害者の1人が……」


縛さんの目が、真っ直ぐ俺を見る。


「佐伯正樹。君だよ。」

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