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人類の罪  作者:
5/23

三鈴公園

カチャン


手に持っていた箸が滑って、床に落ち音を立てる。

はぁ…はぁ…

気付けば、お兄さんを追いかけて玄関に出る。もうとっくに姿はどこにもない。


「くそっ、なんなんだぁ」


急に押し寄せる不安に苛立ちを覚える。

「あぁー!もうっ。」

と自分の頭を掻き回しながら、玄関に戻る。恐怖で手が震える。キッチンからコップを出し、冷たい水を入れる。


ドゥンクン ドゥンクン


心臓の音に苛立ちを覚え、目を瞑って、深呼吸をする。意味が分からない、なんで自分に手紙を出すのか。なんで三鈴公園で会うのか。なんで同じ名前の人に会うのか。分からない…分からない……


ピロン


iPhoneの音に思わず現実に引き戻される。正樹は、コップを持ってソファにあるiPhoneを手に取ると、メッセージを確認した。


『先輩、返信くださいよー構ってくれないと、惚気ますからね〜』


桜木のメッセージに毒が抜かれる。


「たくっ、構ってちゃんかよ」

肩の力が緩み、思わず笑みが溢れる。


『やめろ〜砂糖が口から出てしまうだろ。』

と返信する。


桜木のおかげで冷静さを取り戻す事ができた。悩んでもしょうがない、お兄さん悪そうな奴じゃなかったし、まぁ、話だけ聞くかぁ〜


不思議だ。


さっきまであんなに怖かったのに、あの人の事を思い出すと警戒心が湧かない。


まぁ、考えても分からんかぁ。


正樹は机にあるラーメンを目にすると


「あっ!俺の味噌ラーメンかぁ!!伸びてるー!!」


慌ててまたラーメンを啜り、今日は早く寝る事にした。


-----------------------------------------------------------------------


カンカンカン

(踏切の音)


踏切の音に目が覚める。慣れた動きでベットを探ると、枕元にあるiPhoneを手に取り、目を細める。

「まだ、5時じゃん〜」

パタン

布団を持ち上げ、目を閉じると静かな暗闇が広がる。


寝返りをすると、ギシッと軋むベット…

目を閉じて

右、左、右、左

なんと寝返りしても、目が冴える


「あーー!寝れん!」

寝癖の付いた髪を髪上げ、布団から出ると、じわっ来る熱気に思わずため息が出る。


手紙の時間までまだ早い……落ち着かない心を落ち着かせようと洗面台に行く。


結局、家にいても落ち着かない。正樹は予定よりもかなり早く身支度を整え、家を出て三鈴公園に行く事にした。


外に出ると、まだ少し肌寒い風が吹く時間だったが、散歩には丁度いい。


三鈴公園は珍しく、湖、博物館や植物園、総合病院様々な施設がある家族向けの公園である。施設にいた頃は、よく皆でピクニックに行った。あの頃は、皆まだ幼かったからかぁ、よくおやつの取り合いで喧嘩したなぁ〜


思い出に浸しながら、ランニングをする人達を横に、歩みを進めて行く。三鈴公園のシンボルである大樹が少し見えて来た。

すれ違う人もサラーニーマンや学生と変わって来る。


周りはスーツ姿や制服ばかりだ。


私服の自分だけ場違いな気がする。


公園の入り口に着くと、無意識にiPhoneを持ち上げ、時間を確認する。

「今は8時かぁ」

目的地に着いた安心からかぁ、小刻みに揺れるふくらはぎに気付いた。

「やっぱ年だなぁ〜運動しないと」

そう言いながら、公園の噴水を通り過ぎ、カフェに着き、慣れた足取りで注文しに行く。


「いらしゃいませ。ご注文お決まりですか?」

「テクアウトでカフェラテ1つください。」

「かしこまりました。お会計478円になります。」

「電子決済で。」

「できましたら、またお呼びしますのでお待ちください。」


注文を終え、iPhoneを触りながら、窓の近くで待っていると、突然眩しい光が目に入った。


……まぶしっ、なんだぁ


と顔を上げて、窓の外を見ると、木の近くに車イスに群がる鳥が見えた。


車イスが光を反射したのか、それにしても鳥はやっぱり光る物が好きだなぁ


「カフェラテでお待ちのお客様。」

店員に呼ばれ、カウンターでカフェラテを受け取る。


「ありがとうございました。」

という店員の声を背に店を出ると、パサッという聞き慣れた音と見慣れた影通って行く。

見上げると、白いカラスが「かぁー」と鳴きながら、車イスに向かって行く。


「ふっ、やっぱ光る物が好きなんだなぁ。」


車イスに止まった白いカラスを見て感心していると、カラスは再び「かぁー」と鳴く。視線に気付いたのか、カラスはこっちに顔を向け、「かぁー」とまた鳴く。


「おっ、なんだぁ。今日は公園に遊びに来たのか?」



カラスに声を掛けると、返事をするように「かぁー」と鳴いた。

まるで、こっちに来いと言われているような不貞腐れた態度だぁ。


「しょうがないなぁ。」


カフェラテを片手に、カラスに近付くと、先までの鳴きはなんだったのかぁ、バサっと目の前から通り過ぎて、飛び立って行った。


「うぉ、たくっ呼ばれたから来たのに…」


思わずカラスに対して文句が出る。瞑った目を擦り、目を開くと、木の下に置かれた車イスのそばで、小柄な女性が木に寄り掛かっていた。


茶色の髪が風に揺れている。


人形みたいに整った顔立ち。


けれど、その目だけはどこを見ているのか分からなかった。


「うぁ!…すみません!」


人がいる事に気付いたら顔に熱が集まって来る。


うぅー恥ずかしい!穴に入りたい気分だぁ

…カラスのやつめぇ、今度会ったら文句言ってやる


女性の言葉を待っていても、返事が返って来ない。

…?


女性はピクッとも動かず、ただ座っていた。


「あ、あの、大丈夫ですか?」

口からは思わず心配の言葉が出る。


反応のない女性に焦る気持ちが出て来る

女性が着ていた服は総合病院の患者服、養護施設にいた頃、ドジな施設長が骨折して入院した病院だぁ。

そこの病院では、患者の症状や管理区分ごとに色の違うリストバンドを付けている。ドジな施設長は緑だった。


反応のない女性のバントを見ようと、手を伸ばす


コツン 


コツン


背後から近付く足音


その足音が、自分へ向かっている事に正樹は気付いていなかった。

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