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人類の罪  作者:
動き出した繋がり
69/89

触れる心

…………。


俺は自分の胸の高鳴りを抑えようとするが、隣で圭介が何度も肩をパンパン叩く。


「ちょ。おい。稔!」


「なに!?」


肩を叩く手を振り解く。なんだ!? 今見るのに忙しい!! そう思いながら、俺は圭介の指差す方を見る。


…………。


おー、ボス女達が倒れてる。


「何?」


刺々しい口調で話す鈴木さん。


「あー、校門で鈴木さんに似てた子が『呼んで』って言ってたから。呼びに来た。」


俺がそう言うと、鈴木さんは少し考え込んでから窓の外を見る。


「はぁー、あの子はもう。」


そう言いながら、自分のカバンを持って行こうとする。


「あ、鈴木さん。これ。」


俺はおにぎりを渡す。


「…………。あんた、やたらとおにぎりくれるね。」


鈴木さんはそう言うと、おにぎりを受け取り、走って行った。


……………初めておにぎりを受け取ってくれた。


俺が感動している横で、圭介が何かを話す。


「おい? おーい? だめだこりゃ。テクノボウが恋するとこうなるのか?」


すると、圭介が突然大声を出す。


「先生ー!!! ここに人が倒れてます!!!!」


ん!? え?! ちょっ!!?


「え? 誰が倒れているの?」


優しいと評判な保健医。圭介のお気に入りです。


「あの子達です。」


圭介がボス女を指差す。


「じゃ、先生。後はお願いします!!」


え!? 手伝わないの!? と俺が思っていると、体育の男性の先生もこちらへ歩いて来る。


………………。


「圭介、手伝わないの?」


「大丈夫。後から来た岡田いるだろ? あいつ、なみちゃんと今月ゴールインするんだってよ。だから、手伝っても徳はない。」


そう言って、圭介は顔を上に向ける。その目からは涙がポロリと流れる。


てっきり授業をサボるために保健室にいると思ってたけど、奈美先生に本気だったのだなぁ。


俺らは学校を出て家へ向かった。


家に帰ると、机にはいつもの煎餅が置いてあった。


ん? 今日なんか数少なくない?


「母ちゃん、煎餅少なくない?」


「ん? あっ! さっき、お煎餅屋さんでアルバイトしてる子が鍵を取りに来たから、あげちゃった。」


あー、最近雇ったって言ってたな。


俺は特に気にせず、圭介とゲームをしながら煎餅を食べ、夕ご飯を終えると寝転がった。


ピーポーン


ん? この時間に珍しい。


「母さーん?」


「今手が離せないから開けて。多分、お煎餅屋さんの子だから。」


「はーい。」


俺は起き上がって玄関へ向かい、扉を開ける。


そこに立っていたのは鈴木さん。


「ん? 鈴木さん?」


「…………。涼子さんいますか?」


「あー、母ちゃん手が離せないんだ。上がって。」


俺が促すと、鈴木さんは戸惑う。


「ほらっ。」


俺はその手を引っ張る。そして奥へ声を掛ける。


「母さん、ご飯とおかず作って。」


「え? さっき食べたでしょ!?」


フルーツの皿を持った母さんが、父さんと一緒にキッチンから出て来る。


桃だ。


母さんは鈴木さんと俺を交互に見る。


「あらあら〜。父さん、栄養あるものお願い。」


そう言いながら、母さんはフルーツの皿をテーブルへ置き、鈴木さんをリビングへ促す。


「なになに? 双葉ちゃんと知り合いなの? 稔。」


母さんが聞くと、圭介が皿から桃を取って言う。


「クラスメイト〜。おばさん、桃おいしい。」


「あら〜、クラスメイトだったの? 知らなかったわぁ! 双葉ちゃん、いつも真面目にお煎餅屋さんを手伝ってくれるから助かるわぁ。」


母さんがニコニコしている。


鈴木さんを座らせると、俺はその隣に座る。


母さんが少し驚いた顔をした。


「ん? なに?」


「なんでもないわぁ〜。」


そう言って、小声で圭介に話しかける。


「あれ、どうしたのよ。」


「初めての恋ってやつですよ。」


「え? 私、てっきり圭介ちゃんと一緒になるものかと思ってたわ。」


圭介が突然大声を出す。


「ないですよ!! おばちゃん! 俺、彼女いますから!」


突然の彼女宣言です。


なんだ? 自慢かぁ?


母さんも「おほほほほ」と初めて聞く笑い方をしているし、なんだ?


「はい、お待たせ。」


父さんがお盆に乗せたおかずとご飯を鈴木さんの前へ置く。


「…………。いえ、鍵を返しに来ただけで……。」


「ん? 夜まで働く子には賄い付きよ。」


「でも……。」


「ほらっ、座りなぁ。」


父さんがそう言うと、渋々座る鈴木さん。


一口。


また一口。


静かにご飯を口へ運んでいた彼女の頬を、一筋の涙が伝った。


学校での彼女からは想像もできない姿だった。


「…………。」


俺は静かに彼女を見る。


その隣で、父さんが俺の脇を肘で突く。


やめろ! 俺には何にもできない!


そっと彼女にタオルを渡すと、


「……臭い。」


彼女の一言に、俺は「え?」と思った。


「あっ、間違えて雑巾渡してしまった。」


俺がワタワタする。


それを見た彼女は、少しだけ笑顔を見せた。


かわいい。


パシッ


「人に雑巾渡して喜んでるんじゃないわよ!!! 早く新しい濡れたタオル持ってきなさい!!」


母さんに怒られ、圭介に笑われ、父には爆笑される。


たくっ、もう。

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