表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類の罪  作者:
動き出した繋がり
58/91

お口ミッフ◯ーちゃん

『次のニュースです。先週三鈴総合病院で起きた殺傷事件についてです。病院側から記者会見が昨日行われました。殺傷された被害者は目を覚まし、現在は回復中との事。………』


「ちょっと!正樹くん聞いてる?」


呼ばれた方向を見ると真美ちゃんが怒っていた。お腹の痛みを感じながら、俺は頷く。


「本当に心配したんだからね!これからは1人でどこかに行く時は、東雲くんか私達に連絡しなさい!」


…………俺は中学生だろうか………。


返事をしないでいると、横から縛が睨んでくる。俺は見てない。見てないけど、目線がすごいジリジリと刺さってる。


でも………俺悪くないもん。


ズルルル


香り豊かな鰹節の匂い、そして聴き慣れた音。俺はさっきから見ないようにしていた前を見る。


ズルルル


…………柊木さんがラーメン食べてる。これで2日連続だぁ。


どうやら一昨日まで山場だったのか、相当俺は危なかったらしい。


意識が薄れて行く中で、俺が微かに聞こえていたのは、『味噌ラーメン』『塩ラーメン』『塩レモンネギラーメン』。


その途端、ラーメンがフラッシュバックして来る。俺は食欲に負けたらしい。素直な体だぁ。


まぁ、ここ最近会った人達も出て来ていたのは秘密だけど。


で、なんで柊木さんがラーメン食べているのか俺には不明だったが、さっき結愛ちゃんが教えてくれた。


俺は昨日の事を思い出す。


「………ん…。」


「正樹さん!!!!目覚めたのですか!!?痛くないですか!?」


縛は涙を流しながら、俺の肩を掴む。


「大丈夫かぁ!佐伯?!」


「よかった!」


「正樹くん、痛い所はない?」


「先輩!!」


俺の周りには最近では見慣れた人達。


皆目にくまがあったり、目が赤かったりと、よっぽど心配させたらしい。


申し訳ない気持ちで俺は、すみません、ご心配をおかけしてと言おうとした。


でも……でも……俺の口は素直だった。


「塩レモンネギラーメン食べたい。」


その瞬間、辺りが静まった。


そりゃそうだ。俺だったら、俺も静まるさぁ。


でも、俺の口は俺の意思では動いてないらしい。


「塩レモンネギラーメン、期間限定……食べたい。」


……………………まぁ、うん。これが原因です。


夕方、柊木さんが病院側から許可をもぎ取って来て、俺の食べられないラーメンを目の前で食べる酷刑が始まった。


ちなみにこれを提案したのは、道徳である。


昏睡している俺を一緒に待ってくれていたらしい。


ズルルル


さぁ、現実逃避はここまでにしよう。うん。


気付いたでしょ?俺が一言も発してないの。


なんでかって?


結愛ちゃんにテープで口を塞がれているから。


怒った結愛ちゃんにこの刑を提案したのは、縛です。


やっと目を覚ました俺に皆ひどくない?


でも、一番ひどいと思ったのは、今朝届いた箱。もう派手派手な箱じゃなくて、上品な箱ね。


小鳥遊さんからだと分かった時は、三度見したよね。


ちゃんとしたセンスはお持ちだったようです。


震えた手で箱を開けると、中に入っていたのは……


防犯ブザーだった。


しかもピンク。


もう、本当信じられないと思う。


箱を持って固まる俺の横から、縛が無言で箱と中身を取って捨てたのも忘れない。


本当なんの恨みあるの?


『………一度逮捕された犯人ですが、警察車両で護送されていた間に逃走したと思われ、現在行方不明となっています。』


ん?逃走?


そう思って、テレビの画面を見る。


そして映されたのはあのダンディーな男性。


「んー!!!ん!!んー!!」


俺がテレビを指差して、危険だと話すが、周囲は一斉に動きを止めた。


「……大丈夫よ。」


真美ちゃんが俺の背中を撫でる。


「あー、もう怖くないぞ。」


柊木さんが俺の頭を撫でる。


「んんー!!!!」


違うとジェスチャーをするが、通じない。


ガラガラ


そこに田中先生が入って来た。


「体調はどうですか?」


田中先生の声に、縛と柊木さんが俺の前に立つ。


「大丈夫です。」


縛の声が冷たい。


なんだ?タダならぬ雰囲気に俺はソワソワする。


「んー?」


俺が真美ちゃんの方を向いて、田中先生を指差しする。


「心配しなくていいわよ。」


それだけ言うと、俺に布団を掛ける。


いやっ、眠くないのですが??


「今回は本当に当院の伝達ミスによって、このような事件が発生してしまった事、申し訳なく思います。」


田中先生が頭を下げる。


俺はなんの事か分からず、頭にハテナを浮かべる。


「後で説明してあげるから。」


真美ちゃんがそう言うと、俺の肩まで布団を掛ける。


…………だから、俺眠くない。


「謝罪で済む事じゃないぞ?命に関わっているんだぞ?!」


柊木さんが怒る。怒る所なんて初めて見た。


俺は口出ししてはいけないと思い、自分から布団に頭を入れる。


きっと口出ししたら、ラーメンの刑罰が長くなる。


そう思い、そっと目を閉じる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ