過保護?いえ、ベビー正樹です。
ふ、ふふふ。
人形に囲まれた部屋の中で、男はただただ目の前の人形に触れて笑う。
「あー、愛しい私のマリオネット。もう怖くないよ。あと少しで一緒になれるね。」
男はそっと目の前の人形に口付けをする。
あー、早く。戻っておいで。
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楽しい時間はいつもあっという間に終わる。
食事を終えた俺らは、店から出る。
「先輩!今日はありがとうございました!」
「おー。こっちこそありがとう。俺はまた半月お休みがあるから、半月後にまた祝わせてくれよ。」
「え?いいですか?じゃあその時はいつもの居酒屋さんで!」
道徳がそう言うと、穂乃果さんが「私も!私も!」と手を挙げる。
「じゃ、その時は俺が奢りますね。」
俺が言うと、2人でやったーと大喜びする。
後ろから縛が前に来て、穂乃果さんに話しかける。
「ほらっ、穂乃果さん。お父さん心配するでしょうから、桜庭さんと車に乗って早く帰ってあげなさい。」
そう言うと、道徳達を車のドアの所まで送る。
俺は幸せそうな2人に、そっと心の中で大きな祝福を再度送る。
……結婚かぁ。
いいなぁ。
俺もいつか好きな人に会えるのかなぁ。
車から手を振ってくれる2人に手を振り返しながら、俺はそっと思うのであった。
「正樹さん?」
縛に呼ばれて振り向くといない。
……声がする方を見ると、もう運転席に座っていた。
「今行く。」
俺はそう言って、車に乗った。
「ねぇ?縛。あのさ……いや、なんでもない。」
俺が言葉を飲み込むと、縛は不思議そうな顔をする。
縛はこれ以上何も聞かず、ただ運転に集中した。
俺は今この関係が心地よい。
家に着くと、柊木さんが待っていた。
「あれ?柊木さん、今日約束してましたっけ?」
「ん?してないぞ〜。真美ちゃんが、これ持って行きなさいって渡してきてな。今ちょうど着いた所だぁ。」
柊木さんが手に持っている物を見ると、縛はご機嫌になった。
「ありがとうございます。よかったらお茶でもどうですか?」
「いや、俺これから店に戻らないとなんだわぁ。気持ちだけ貰うわ。」
柊木さんが持っていた箱を縛に渡す。
そして、俺の方を見る。
「おっ?佐伯だったのか?おしゃれしてどこに行って来たんだ?」
とニヤニヤする柊木さん。
「後輩とご飯会でした。コウキュウレストランデ……。柊木さん、カネモチコワイ。」
俺がそう言うと、ポンポンと俺の肩を叩いて「ドンマイ」と言った。
そしてiPhoneを取り出すと、2人並べと言う。
「なんでですか?」
思わず聞くと、
「ちゃんと渡したか確認されるから、写真撮ってこいと言われたんだよ。ほらっ、こっち見る。撮るぞ〜、ハイチーズ。」
そう言って写真を撮ると、うんうんと満足そうにし、「じゃな。」と言って、颯爽と車に乗って帰って行った。
なんだ?
と不思議に思いながら玄関に向かうと、見えたのは今朝も見たあの箱。
でも、この箱はなんか嫌な予感がする。
俺が警戒していると、縛は手に持った箱を俺に渡し、箱に近付く。
そして箱を開けると止まってしまった。
「縛?」
不思議に思った俺が近付こうとすると、縛が俺を止める。
「縛?」
「正樹さん、ちょっと柊木さんのお店行きましょうか?」
そう言って、俺の背中を押しながら車に乗せて、柊木さんの店に向かった。
ガランガラン。
「いらっしゃいませ〜。……なんだ、兄ちゃん達かー。寂しくなったのか?」
柊木さんが少し気怠そうに言うと、結愛ちゃんが駆け寄って来た。
「なんかめっちゃ久しぶりな気がする!どうしたの?」
「縛が珍しく行こうって言ってさぁ。」
俺が言うと、結愛ちゃんも「珍しいね〜」と共感する。
結愛ちゃんと雑談をするその横で、縛が柊木さんの耳元に何か話していた。
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「おっさん。しばらく正樹さんを預けてください。」
「なんだ?どうした?」
「多分、正樹さんを狙っている人がいます。悪い意味で。」
「はぁ?なんで?あいつを狙うってなかなか変わってるぞ。」
「理由は分からないです。でも、正樹さんの生活を多分調べられていると思います。」
「なんでそんな事言える?」
「正樹さんの毎週届く荷物を模倣して、さっきその荷物の中に動物の死骸が入ってました。」
「はぁ?それやばいだろ。案件だぞ?」
「多分それだけじゃないです。昨日キッチンで青ざめていた事もあったでしょう?中身は正樹さんが多分嫌だった物だと思います。隠したそうにしていたので、あえて言わなかったです。」
そう言って東雲は唇を少し噛んだ。
「分かった。預かる。とりあえず何かあったら言えよ。」
「大丈夫です。この手の物は慣れてます。処理して来るので、このままここでしばらく一緒に居てください。」
「おう、任せとけ。」
言い終わると、東雲は店を出て行った。
相変わらず過保護な事で。
まぁ、心配する理由は分かる。
佐伯は変に箱入りな所がある。
それは北海道旅行を通して実感した。
14年前の事件に対する反応からも分かるように、あいつは人から悪意を向けられた事がまだない。
だからこそ、このまま悪意を向けられる事なく、そのまま過ごして欲しいと思ってはいる。
だが、きっとこれから事件に関する事を調べていくのに、悪意は避けられない道だ。
人は優しいだけじゃない。
理不尽な悪意を向ける人間もいる。
それでも――
それでも佐伯なら、きっと変わらない気がする。
俺はそう思いながら、結愛と楽しそうに話す佐伯の姿を見た。




